ラージャマウリ監督のインド映画『RRR』を観たら、高校の体育の授業で起きた事件を思い出した

ラージャマウリ監督のインド映画『RRR』を観たら、高校の体育の授業で起きた事件を思い出した

九年間の義務教育に三年間の高校生活を経験すると、誰しもひとつくらい、強烈な印象が残っている授業があるんじゃないでしょうか。

もちろん自分にもあります。

高校卒業から三十年近くが経過しようとしている今でも、同級生で集まってお酒の席になると、必ずといっていいほど話題にのぼる授業が。

私はその授業を、映画館でひとりきりで『RRR』というインド映画を観ていたときに思い出しました。お酒も飲んでいないのに。思い出を語らい合う級友もいないのに。

物語は終盤。囚われの身になった親友を主人公が救い出すのですが、足を痛めつけられていて歩けないのにどうやって逃げるんだろうと思っていたら、おもむろに肩車して迫りくる敵をこれまでに見たこともないような超絶アクションでバッタバッタとなぎ倒しながら脱出するシーンを観たときに。

あれは高校の体育の授業でした。季節は秋か冬だったはずです。グラウンドでサッカーだったので。

いつもの体育教師が部活の大会か私用かで不在で、代理として母校で最も怖いと恐れられていた野球部の監督がやってきました。

体操着に着替えながら、みんな口々に嫌だなぁと不安を吐露していたのですが、授業開始直後に早くもその不安は現実のものになりました。

ふたりひと組のペアを作れという野球部監督の号令に(サッカーでペア…?)と怪訝な表情を浮かべながらも、キビキビ動かないと怒鳴られるので速やかにペアを作ると続けられた言葉に耳を疑いました。

「よし、お前ら肩車しろ。肩車してサッカーだ。普通にサッカーやってもつまらんからな」

このとき、その場に居合わせていた全員の気持ちはひとつになっていたと確信しています。

はあ?お前は一体何を言っているんだ?

もちろん、そんな不満などおくびにも出さずに、粛々と肩車しながらサッカーしましたよ。当然ですとも。

だって、野球部の監督、チョー恐ろしいですから。竹刀持ってますから。タラタラしてたら竹刀で叩かれますから。

肩車となると映画の中のように超絶アクションなどできるはずもなく、動ける者でも速歩きがやっとでまともにボールも蹴れず、フラフラで右往左往するだけという悪夢のような一時間でした…。

しゃしゃり出てきた野球部の監督のせいで、経験者リードを活かして無双できる楽しいサッカーの時間が台無しに…。

葬り去りたい苦い記憶が一瞬蘇るも、映画はムチャクチャ面白かったです。初めてのインド映画でしたがあっという間の三時間でした。

乱暴に要約すると、『ランボー』×『コマンドー』×『300』×『男たちの挽歌』×『グレイテスト・ショーマン』×『大脱走』+今までに観たことも聴いたこともないようなアクションやダンスをバッチバチに決めた構図で上乗せしたジャッキー映画、そんな感じ。

音楽もすごかったですね。鼓舞されるというか、魂が震えるというか、血がたぎるというか、野性の本能が刺激されるというか。

CGがちょっと安っぽいなとか傷の治りが早すぎるだろとかなぜそうなるとか都合良すぎるでしょとかツッコミどころもありますけど、まあいいやそんなことどうでもと思わせちゃうくらい有無を言わせぬ推進力があります。

撮りたいこと観てほしいことをケチ臭く小分けせずにとりあえず全部ぶっ込んでテンション高くひたすら突っ走る、そんな超濃厚な映画です。

小学生の頃にジャッキー・チェンやブルース・リーの映画と出会ったときの気持ちを思い出させてくれるようなひとときでした。

エンドロールはキャスト全員による、思わず笑顔になってしまうような可愛らしい歌と踊りなのですが、クレジットは右端に追いやられていたのでひと文字たりとも追えませんでした。

ひと文字たりともです。

あの役を演じていた役者さんは誰か知りたくても、エンドロールでそれを確認するのは不可能です。キャストの歌と踊りから目が離せないので。覚えておいてあとで調べるしかありません。

こんなエンドロールも初めてでしたね。最後の一秒まで最高が続くだなんて。

投稿者: 弘志

洋楽ロックとミステリー小説と洋画をこよなく愛する、ソロキャンプにも夢中なスキーヤーのブログ。好きな音楽を聴きながら愛車で出かけて、デジタル一眼レフで写真撮影を楽しんでいます。商品リンクはAmazon/楽天アフィリエイトリンクを利用しています。