BAND-MAIDの1stフルアルバム『Just Bring It』が素晴らしい

BAND-MAIDの1stフルアルバム『Just Bring It』が素晴らしい

あれは冬の日曜の昼下がりのことでした。

ソロキャンプ後に家の自室でゴロゴロしていたら、友人が先日RTしていたバンド、BAND-MAIDの記事が目に止まりYouTubeでチェックしてみたところ、すっかり気に入ってしまった私は、そろそろ暮れなずみそうな時刻に部屋を飛び出して愛車に乗り込み、最寄りのツタヤでBAND-MAIDのアルバムをありったけ借り占めてきました。

その中の一枚が、彼女たちの1stフルアルバム『Just Bring It』でした。

友人からまずはこのアルバムから聴いてみるのをおすすめされた私は、素直にこのアルバムから聴き始めて、すんなりと彼女たちのハードロックの魅力に取り憑かれることになったのでした。

ところで、BAND-MAIDとは全然関係ない思い出話ひとつ、いいですか。

『Just Bring It』は日本語に訳すと「かかってこい」という意味になるそうですが、この言葉を聞くとワンオク初の大阪城ホール公演を観に行ったときのことを思い出します。バンドのMC中に、「もっと来んかい!」と叫んだお客さんがいたことを。大阪らしいなあと笑っちゃったんですけど、それに対するワンオクからの反応がまた面白かったんですよね。

「はああ???めちゃくちゃ行ってるし!!!」

かかってこい、などと煽ると、当然ですけど強い反発が返ってきます。それに負けずに応えてみせる、という気骨や気概が込められたタイトルなのでしょう。

https://gekirock.com/interview/2017/01/band-maid.php

BAND-MAIDは、このアルバム以前にインディーズでEPを二枚、メジャーでEPを一枚発表しているのですが、主に編曲のみで、自身による作詞や作曲はごく一部でした。インタビュー記事を読んだところによると、以前から作詞作曲はしていたのだが提出した曲がことごとくボツだったそうで、自分たちの曲をもっとたくさん世に出したいと密かに創作意欲を燃やしていたようです。

作詞作曲にボツを喰らいまくった悔しさをバネに飛躍したのか、この『Just Bring It』では収録曲全13曲中9曲がバンドにより作曲され、11曲が作詞されています。押さえつけられていた反動の爆発か、バンドによる楽曲の出来が目を瞠るほど素晴らしい。

序盤からアグレッシブで掴みの強い曲が続き、中盤でややポップかつセンチな曲が並んだかと思えば、終盤でまたギアを上げて強烈な曲をガツンとかましてくる。痺れる構成です。収録曲数は多いんですけど、再生時間が短いので冗長さがなく濃密で、一枚があっという間です。

外部ライターから提供を受けている楽曲も劣らず素晴らしいんですけど、バンドによる楽曲が強力すぎて生半可な曲では選曲の段階で淘汰されて生き残れないので、それも当然の帰結。相乗効果。

前EPに収録されていた唯一のバンドによる作曲”alone”でその才能の片鱗をのぞかせていましたけど、ここに来て一気に開花させてきました。

やっぱり、バンドたるもの自分たちが歌いたい曲を自分たちで書いて自分たちで演奏すべし、という思いを新たにしましたね。

決して外部ライターがだめというわけではありません。最終的にはある一定以上の水準が保たれた高品質な楽曲に仕上がってくるでしょう。しかし、自分たちならではの個性はどうしても薄れてしまいますし、自分たちで書き上げたものではない以上どれだけ気合を入れても自作の熱量と思い入れには敵いません。ソツはないかもしれませんが、没個性で面白味に欠けてしまうんですよね。

多少荒削りでも、個性丸出しの面白い音楽を聴きたい。

そんなささやかな願いを、BAND-MAIDは1stフルアルバムでいきなり叶えてくれました。

荒削りどころか、豪快にぶっ飛んだキャッチーなハードロックで。

かかってこい。ファンからの要求がエスカレートするのも、望むところなのでしょう。真正面から応えてみせる。自分たちで書いた曲で。

そして、続く2ndアルバム『WORLD DOMINATION』、3rdアルバム『CONQUEROR』で、ファンの期待を上回る断固たる決意のほどを見せつけてくれるのでした。

Creyeの2ndアルバム『Ⅱ』が素晴らしい

Creyeの2ndアルバム『Ⅱ』が名盤だった

2021年1月22日。

この日、三枚同時に、メロディアス・ハードロック・ファンならば無視できないバンドの新譜がリリースされました。

ノルウェーのWig Wamの復活作、夢の豪華プロジェクトW.E.T.の新作、そして、ここに紹介するスウェーデンのCreyeの新作です。

三枚同時に買ったんですけど、事前の期待度は先に書いた順番通りでした。私は食事では好物を最後に回すタチなので、音楽も同じように、Wig Wamを最後に回して、Creyeから聴き始めました。

そしたら、たまげましたね。Creyeがめちゃくちゃ良かったので。

YouTubeの先行公開をチェックしていた段階で、いい曲多そうだな、期待できそうだな、とは思っていましたけど、その予想を軽く超えてきました。

まず、曲がいい。メロディ展開もモロ好み。存在感のある新ヴォーカルもハマってるし、ギターの音色もツボ。

特筆すべきは、音が素晴らしいんですよね。サウンドミックスが絶妙。

軽やかだが生々しい低音が土台としてしっかりしていて、その上にスウェーデンらしい透明感を漂わせつつ、力強いヴォーカル、華やかなギター、きらびやかなキーボードがふわっと乗っています。

そのおかげで、自宅のオーディオでこのアルバムを再生すると、低域の程よいアタック感を残しつつも、歌声やギターなどの中域がグイグイと眼前に迫りくる、超気持ちいい音が飛び出してきます。

ただでさえ曲やメロディが好みなのに音まで素晴らしいとか、最の高ですよ。

最高の素材を、手も気も抜かずに、最高の仕事で仕上げています。北欧メロディアス・ハードの真髄が味わえる極上の一枚!

第5期ってなんだよ、と眉をひそめた人にこそ聴いてほしい、Wands再始動を彩る傑作『Burn The Secret』

第5期ってなんだよ、と眉をひそめた人にこそ聴いてほしい、Wands再始動を彩る傑作『Burn The Secret』

上杉昇という強力なヴォーカリストを擁し、ダイナミックなハードロック・サウンドをキャッチーなJ-Popに落とし込むことに成功したことで、人気バンドとして一時代を築いたWandsでしたが、度重なるメンバーチェンジが響いてその勢いを持続できず、いつしかシーンから消えていってしまいました。

そんなWandsが、21年ぶりのシングルをリリースして第5期として再始動することが、昨年末に発表されました。

ここで、第5期ってなんだよ、と引っかかる人も多いと思うんですけど、1991年に結成されてから2000年に解散するまでの9年間で目まぐるしいメンバーチェンジを繰り返したことで、その時々の構成メンバーによって、第1期から第4期と整理されています。その流れで、再始動にあたって第5期とナンバリングされたのです。

メンバーが入れ替わろうが、Wandsとして活動している以上Wandsなわけで、第○期とか要らないと思いますけどね。逆に話をややこしくしているだけのような気がします。

最初は興味なかったんですよ。

ツイッターなどで、再始動シングルリリースなどのニュースは目にしていたのですが、青春時代によく聴いていた初期のWandsは大好きだったんですけど、どうしても斜に構えてしまって。

好きだったのは初期のWandsであって、まあ”錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう”とか、”明日もし君が壊れても”とかもめっちゃいい曲で好きでしたけど、それでもやっぱり心にあるのは”時の扉”や”もっと強く抱きしめたなら”や”世界が終わるまでは…”なわけで、どうしても(今さら第5期再始動とか言われてもな…)とこんな調子で、冷え切った心はまったくワクワクしていませんでした。

ところがですよ、妹宅で姪っ子たちが『名探偵コナン』のアニメを見ているところに居合わせるという、ひょんなことからWandsの再始動シングル”真っ赤なLip”を聴く機会を得まして、(あれ、なんかいいぞ…いや、めちゃくちゃいいじゃん!)とやっとテンションが上り、俄然興味が出てきたところに聴いた”抱き寄せ高まる君の体温とともに”や”David Bowieのように”などの新曲も素晴らしくて、これはもう買うっきゃないと相成りました。

全10曲、新曲6曲に過去曲のリメイク4曲という構成なんですけども、新曲はもうどれも素晴らしいです。ストレートなロックナンバーはもちろん、ファンキーなリズムが面白い曲、心温まるメロディがたまらないバラードなど、新ヴォーカリスト上原大史の超絶歌唱力のおかげもあって最高。

それだけに、全曲新曲で勝負してほしかったな、というのが正直なところですね。リメイク曲もどれも大好きな曲ですから、買ってよかったと大満足しているアルバムなんですけども、それでも心の片隅に(全曲新曲だったらなぁ)という引っかかりが残ってしまいます。

気になったのはそこだけですね。次作こそ、全曲新曲の傑作アルバム、楽しみに待っています。どうか、この第5期の活動が少しでも長く続きますように。

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後追いハードロック愛好家なので、イタリアのハードロック・バンドHell In The Clubを知ったのもつい最近

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いやぁ、うかつでした。まったくノーマークでした。

まさかイタリアに、Be The WolfやLionville以外にも、こんなにもかっこいい上にメロディアスなハードロック・バンドがいたとは、知りませんでした。

そのバンドの名は、Hell In The Club。ちょっとドスの効いたバンド名に気後れしてしまいそうになりますが、YouTubeの新着にFrontiers Recordsから新曲が挙がってきていて、サムネも洒落ていたのでクリックしてみました。

見たことのないバンド名だけど、Frontiersからの期待の新人かな、と想像しながら。

その曲がこの”We’ll Never Leave The Castel”で、めちゃくちゃ良かったので一発で気に入りました。

爽やかにアコギが鳴り響くイントロから一転、キャッチーでにぎやかなバンドサウンドが繰り広げられ、起伏の激しい歌メロのパンチ力も抜群。素晴らしい。

新作の情報が気になって調べてみたら、新人ではなくてすでに四枚もアルバムを出していて、この曲は5作目に当たる『Hell Of Fame』からの先行公開曲のひとつであったことが判明し、驚きました。

アルバムのジャケットを見てみて、まったく知らなかったのも無理はないかな、と合点しました。先述した新曲にしても、もし動画のサムネがアルバムジャケットだったら、クリックせずにスルーしていた可能性が大きいです。あまり褒められた行為ではないと承知してはいるんですが、ジャケット画像だけで自分の好みとはズレた音楽性のアルバムだろう、と判断してしまって。

おそらく、今までもバンド名を目にする機会はあっても、知らず知らずのうちに画像判断フィルターによってシャットアウトされていたのでしょう。危うく、こんなかっこいいバンドを知らぬまま余生を送るところでした。

その約ひと月後に、新譜からの先行公開第二弾が発表されたんですけど、それがまたデジタルなダンスビートを大々的に取り入れたEDM風の音作りで、面食らいました。

見間違えたか、別の動画を誤ってタップしちゃったかと、タイトルを二度見したほどの異色曲。音は一風変わってますけど、歌メロが相変わらず強力なんですよね。

そんな流れで、昔の曲もYouTubeで聞いてみるようになってゆくんですけど、以前の曲もいい曲ばっかりで、なんでこんな素晴らしいバンドを見落としていたのかと、自分の不甲斐なさが情けなくなるばかりでした。

荒々しく猛るハードロック・サウンドと、超キャッチーな歌メロの相乗効果がたまりません。イタリアのバンドなのにラテンっぽいノリがなくて、アメリカンに通じる豪快さが押し出されているのがいいですね。好きです。

まずは昔のアルバムから買い揃えました。欲しくなっちゃったら最後、我慢できない性分故に、一気に四枚。

最新作は、日本盤を待とうかと思っていたんですけど、どうやら見送られそうな情勢なので、輸入盤を注文しました。

改めて並べてみると、アルバムジャケットのパンチは強烈ですね。CD屋の店頭で、超おすすめ!と試聴機にセットされていたとしても、ちょっと聴いてみようかな、という気にはならないかもしれません。

The Strutsの3rdアルバム『Strange Days』が素晴らしい

The Strutsの3rdアルバム『Strange Days』が素晴らしい

イギリス出身のロック・バンドThe Strutsの3rdアルバム『Strange Days』が発売されました。

本来であれば、聴けたのはあと数年先だったのかもしれない新作です。

というのも、コロナ禍でのロックダウン中の10日間で10曲を録って仕上げた新作だそうで、この状況になっていなかったら、本来ならツアーで世界中を飛び回っていたはずで、アルバム制作には取りかかれていなかったと考えられるからです。

この10日間での10曲のレコーディングにバンドはゾーンに入っていたのか、Def LeppardのPhil CollenとJoe Elliottをゲストに迎えた”I Hate How Much I Want You”の冒頭では、電話でのやり取りにこのレコーディングに興奮している様子が語られています。

そんな興奮がまた、音に現れているんですよね。

ライブエナジーが迸るエネルギッシュなサウンドで、その音がまた自宅のJBLスピーカー4305Hとの相性抜群で、水を得た魚のごとく悦びに満ち溢れた音が流れてきます。

最高ですよ、これは。

まあ、もともとThe Strutsはデビュー当時から生々しく力強くも鮮烈な音を鳴らしていて、並々ならぬ音質へのこだわりを感じさせる音作りをしていましたが、そんな音質への追求はとどまるところを知らないようです。

コンパクトに凝縮された曲がほとんどで勢いがすごいです。抑圧された想いが弾け飛んでいるかのような、爆発的な躍動感。

中には長い曲もあるんですけど、まったくダレない展開でテンションが一向に落ちません。

ヴォーカルのLuke Spillerの歌声がまた素晴らしいですね。Queenの名ヴォーカリスト故Freddie Mercuryから薫陶を受けた全力投球の情熱的な歌唱が、力強いバンドサウンドに負けじと張り合っています。

日本盤ボーナスの、Summer Sonic 2019からのライブ音源もいいですね。バンドのアツいパフォーマンスはもちろんのこと、ライブならではの鮮度や圧は保ちつつ、それでいてクリーンな音にまとめているミックスのさじ加減が絶妙です。

もの凄いことになりそうな予感を、この新作を聴きながらヒシヒシと感じています。

2020年4月に予定されていた単独来日公演の振り替えとなる2021年4月の来日公演は、きっと伝説的な公演となるでしょう。

私は梅田クラブクアトロで開催される大阪公演を観に行きます。今から来春が楽しみで仕方ありません。

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