『シング:ネクストステージ』を観て、推しに専門外の仕事をして欲しくないと思うのはいちファンとして的外れな願いなのではないかと思った

『シング:ネクストステージ』を観て、推しに専門外の仕事をして欲しくないと思うのはいちファンとして的外れな願いなのではないかと思った

年末、洋楽を詰め込んだUSBメモリから音楽をランダム再生しながら白馬を目指していたら、流れてきた『シング:ネクストステージ』のサントラに収録されているTaron Egertonによる”A Sky Full Of Stars”を聴いた姪っ子が「この曲聞いたことある!英語の授業で先生が流した!」と反応したことで、妹(妹もB’zが好き)と『シング』の感想を語り合っていたらちょっと思い出したことがありました。

去年、2022年の大きなトピックのひとつに、大好きなB’zのシンガーである稲葉浩志さんの声優初挑戦がありました。

この報せを初めて知ったときは(絶対ウソだろう、おれは信じないぞ)と真っ向から疑ってかかり、予告編で実際にセリフを喋っている場面を見てなお(ほんとに喋ってるよ。マジかよ…)とその衝撃を受け止めきれずにいたのですが、こうなったらしかたない観てみるかと劇場に足を運んだ私を待っていたのは感動の嵐でした。

泣きました。ものの見事に。

普段「洋画を観るなら字幕に限る」などとイキっていたのに、そんな強がりを粉砕する感動に襲われました。

映画の中で、稲葉さんがB’zやソロ以外の曲をどんな感じで歌うのか?というところが一番の目当てというか楽しみであったのに、いざ歌い出したらその瞬間に感極まって泣いてしまい、どんな歌を聴かせてくれたんだったか記憶にないくらい感動していました。

『シング』の吹き替え、恐るべし。

あと、これは映画を観たあとになってから知ったことなんですけど、この『シング:ネクストステージ』で稲葉さんの歌声を初めて聴いて、そこからB’zの音楽にも興味を持って聴いてみたらファンになり、2022年の全国ツアー”Highway X”にも足を運んだ新規ファンが少なからずいた、ということにも驚かされました。

目から鱗が落ちましたね。目が覚めるというか。B’zクラスの大物バンドになってもなお、声優初挑戦という本業とはかけ離れた筋からの新規ファンの獲得という道もあるのか…と。

周りの声に惑わされずに、いろいろなことに挑戦することって大切なんだな、と。

私、否定的だったんですよ。売れっ子俳優や人気お笑い芸人がアニメ映画の吹き替えしたり、本を書いたり、楽曲を発表したりすることに。

それでパッと売れちゃったら本業の声優や小説家や音楽家がかわいそうじゃないですか。チョロすぎて面白くないですよ。真面目に本気でそれ一本で頑張っている人こそ報われてほしいじゃないですか。

なので、好きな人であれば好きな人であるほど、そういった知名度や地位を笠に着た仕事をしてほしくないな、と思っていました。

そしたら稲葉さんの声優挑戦で見事に泣かされたものですから、その思いに揺らぎが生じました。

もしかして、本業ではない仕事をすることをひとくくりに否定するのは間違っているのではないか?

本人も気がついていなかった才能が本業ではない仕事への挑戦で開花することもあるのではないか?

推しに本業以外のことをして欲しくないと願うのはファンの勝手な押しつけで、推しの可能性を狭めてしまっているのではないか?

応援しているはずが自分勝手な価値観の押しつけで逆に足を引っ張っているのではないか?

その是非には、どうしても個人的な好き嫌いも絡んできてしまうので線引きがややこしく、何でもかんでもやればいいというわけにもいきませんが、少なくとも頭ごなしに全否定することだけは間違っているでしょう。

本業以外への積極的な挑戦に寛容になろう。密かにそんなことを心に決めるきっかけとなった、稲葉さんの声優初挑戦でした。

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前々から隣町の駅前になにかあるなと思っていたら、まさかのディスコで予想の斜め上だった

前々から隣町の駅前になにかあるなと思っていたら、まさかのディスコで予想の斜め上だった

ある日、Twitterのタイムラインを眺めていたらJohnny Pandoraさんのライブ予定が流れてきまして、そこに浜松で演ると載っていたものですから、その日はあいにくの出勤日で仕事も繁忙期だけど定時で終われたら行きたい!となりまして、でもマルガリータなんて会場あったかな?初耳だけど…と調べてみたらまさかの隣町の駅前で驚きました。

あれ、ディスコだったのか。

いや、前々から、隣町の駅前になにかお店があるな、とは思ってたんですよ。何度となくその前を通ってますしね。飲み屋さんっぽい感じかな?でもお店の前にはお好み焼きや鉄板焼ののぼりが踊っていて、いまいち正体が掴みづらい…。

気になっていたバンドのライブが開催されたことで、ついにその正体が判明しました。

観に行きたくなったものの、今までディスコには行ったことがないので勝手がわからずに尻込みしている自分もいました。

入り口でスタッフさんにチケット代を払うシステムなのかな?飛び込みでも行けるんだろうか。隣町だから仮に満席で当日券がなくて入れなくてもダメージはほぼないけど、事前に予約しておいたほうが固いか…。

念のためバンドの公式サイトからメールで予約して、当日に会場に向かいました。

Johnny Pandoraとは?

Johnny Pandoraさんについて軽く説明しておくと、真夏の炎天下の横浜山下公園で革ジャンを着てツイストを踊っている、漢の中の漢たちです。ロング・リブ・ロックンロール!

今回は三組のバンドの競演だったのですが、出番ではないバンドのメンバーが交代で入り口で受付をしていたようです。ドリンクチケット込みのライブ代金を支払って入店しました。

すでに最初のバンドの演奏が始まっていたのですが、フロア前方に広いスペースが作られていてそこで踊る人がいたり、壁際のソファに座ってまったり観ている人もいれば、後方に押し寄せられたスツールに窮屈そうに座って観ている人もいたりと、早い者勝ちの自由席で思い思いに楽しんでいました。

あんまりライブに行かないなりに、これまで大小様々なライブ会場に足を踏み入れてきましたけど、さすがにステージの脇に鉄板焼のライブキッチンがある会場は初めてでしたね。

バンドのメンバーのご友人かご家族なのか、ステージに上ってドラムセットの後方から写真を撮っているお客さんもいたりして、フリーダムすぎるだろうと舌を巻きました。

フロア前方で踊っている方々は気合が入っていましたね。オールディーズファッションで決めた老若男女約10名によるツイストは、ミュージカル映画のワンシーンでも観ているかのような衝撃的な光景でした。

隣町の静かな夜に、まさかこんな一面があったとは。これぞ”Rock This Town”だなと感動を覚えました。

18時半開演で三組だったので(30分30分60分で計二時間かな?終わったらレイトショーで映画観に行こうかな)と考えていたら、まさかの60分60分90分で終わったら22時で目論見は潰えました。

ならばと終演後にマックのドライブスルーで持ち帰りしてビール飲みながら食べてたらいつの間にか寝てて、ワールドカップの三位決定戦クロアチア対モロッコも見逃すという。

なかなか思い通りにはいかないものです。

Whitney Houstonの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観てきたら、まんまとライブ・アルバムが欲しくなって注文してしまった

Whitney Houstonの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を観てきたら、まんまとライブ・アルバムが欲しくなって注文してしまった

観てきました。アメリカの超絶女性シンガーWhitney Houstonの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を。

『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒット感謝企画で入場者プレゼントに書き下ろしポスターが追加されるとのことで、ポスター欲しさにスラムダンクをおかわりしようかと考えていたのですが、大ヒットでロングラン間違いなさそうなスラムダンクと違ってホイットニーの伝記映画はすぐに公開が終わってしまいそうな状況だったので、ホイットニーを優先しました。

土曜日の夜の繁華街近くの映画館だというのに、ほとんど貸切状態でしたからね…。

内容については、まあ大方事前に予想していたとおりでした。アーティストの伝記映画はあるあるテンプレートの宝庫なのかよ!?という。

だいぶ端折って軽くしてくれてあったであろうに、それでもエグくてきつかった家族との確執、マネージャーや夫や親との間でのパワーバランスの綱引き、お酒やドラッグに溺れて荒んでゆく私生活、騙し騙しも限界を迎えついに支障をきたしはじめる歌手活動。

素晴らしい楽曲や圧倒的な歌唱の裏での現実生活での苦悩が、ぐさりぐさりと胸を刺す。

最高の歌だけを堪能させてくれたらどれだけ幸せだろう…。

そう考えると、ライブビューイングはやっぱり至高なのだろうか…。

スーパーボウルでのアメリカ国家独唱はカットせずにフルで聴かせてほしかったなとか、大好きな曲が途中で切られてるとハシゴ外された感半端ないなとか、約2時間半の長尺の割に展開が駆け足だなとか、もっとこうだったらよかったのになと感じたところもありましたが、ホイットニーが憑依したかのようなナオミ・アッキーの熱演は圧巻でしたし、ライブ演奏にのせた歌唱パフォーマンスは素晴らしかったです。

結果、まんまとライブ・アルバムが欲しくなってしまいました。

QueenのライブBlu-ray『Rock Montreal』を買ってしまった、映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観たあととまったく同じ流れですね。

帰宅した直後に速攻で通販でライブ・アルバムを注文しました。

映画でも取り上げられたライブ・パフォーマンスを収録していると思われるライブCD+DVDがあったので…。

今回、久しぶりにTOHOシネマズに行ったのですが、久しぶりだとやっぱりTOHOシネマズの音響の素晴らしさが際立ちますね。音の立体感や左右のサウンドバランス、強弱のメリハリや静寂から大音量への振り幅がダイナミックで圧倒的です。

Whitney Houstonの代表的名曲”I Will Always Love You”の歌い出しで、息継ぎが引き波のように静寂に溶け込んでゆく様なんて鳥肌モノでした。

素でこれだけ素晴らしいのなら、高音質を売りにしているTOHOシネマズの音響はどれほどの高みにあるのだろう…。

B’zのHighway XのライブビューイングはTOHOシネマズに行くべきだったかな。でもギュウギュウ詰めは逼迫感が息苦しいしな…。ひと席空けてくれてたイオンシネマにしたのも、決して間違いではありませんでした。

もし映画『トゥルー・ロマンス』みたいに、見知らぬ誰かが映画館で隣りに座って上映中にいきなり話しかけてきたら、裏拳でちゃうかもしれない

もし映画『トゥルー・ロマンス』みたいに、見知らぬ誰かが映画館で隣りに座って上映中にいきなり話しかけてきたら、裏拳でちゃうかもしれない

仕事の休憩時間中に、テレビである女性タレントが「映画館で映画を観る際のマイルールは何でしょう?」とクイズを出してまして、目ではTwitterのタイムラインを追いかけながら耳ではテレビから流れてくる声を聴いていたんですけど、私はその答えを聞いてげんなりしました。

勘弁してくれよ、と。

ひとりで来ている人の隣りにわざと座って声も出しちゃうだと?

映画『トゥルー・ロマンス』かよ…。

あれは映画の中のお話でアラバマ嬢も超キュートだったから奇跡的に上手くいってロマンスが始まったわけで、現実でも同じように上手くいくとか絶対に勘違いしちゃダメなやつだぞ…。

他の人はどうだか知らないですけど、少なくとも私はひとりでじっくりと集中して観たくてひとりで映画館に観に行ってるので、いきなり隣に座られてしかも声出されたり話しかけられたりしたら迷惑ですね。はっきりいって。

空いてるスペースがあったらそこに逃げると思います。邪魔すぎるので。

百歩譲って、何度も観ている大好きな映画のリバイバル上映中だったならまあ良しとしましょう。こっちも得意になって語りたくなっちゃうかもしれませんし。

でもやっぱり勘弁してほしいですね。じっくり観たくて映画館に足を運んでいるに違いありませんし。それを邪魔されるようなことは歓迎できないでしょう。

何度も観ている大好きな映画でもそれなので、初見の新作映画を観ているときはなおさら勘弁ですね。こっちも必死で把握と理解に努めてるので。そこに話しかけられたら鬱陶しいにも程があります。

誰かわからなかったのなら上映終了後に自分で調べてほしいし、物語が複雑でわけがわからなかったのなら考察サイトでも読み込んでからもう一回観に行ってほしい。その場でいちいち人に聞いてたら、そのそばからまた判断材料見落としてどんどんわけがわからなくなっていくでしょうが。

家で家族や友人と映画を観てるのなら、ワイワイ話しながらでも全然いいんですけどね。ビデオとかなら、ちょっと気になるところとか話してて見逃した瞬間とか、気軽に巻き戻して見直せるので。

映画館での新作初見時はマジで勘弁です。

思わず裏拳でちゃうかもしれないけど、それでも話しかけるならそれくらい仕方のないことをしているんだという覚悟と自覚を持ってほしいですね。

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ラージャマウリ監督のインド映画『RRR』を観たら、高校の体育の授業で起きた事件を思い出した

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九年間の義務教育に三年間の高校生活を経験すると、誰しもひとつくらい、強烈な印象が残っている授業があるんじゃないでしょうか。

もちろん自分にもあります。

高校卒業から三十年近くが経過しようとしている今でも、同級生で集まってお酒の席になると、必ずといっていいほど話題にのぼる授業が。

私はその授業を、映画館でひとりきりで『RRR』というインド映画を観ていたときに思い出しました。お酒も飲んでいないのに。思い出を語らい合う級友もいないのに。

物語は終盤。囚われの身になった親友を主人公が救い出すのですが、足を痛めつけられていて歩けないのにどうやって逃げるんだろうと思っていたら、おもむろに肩車して迫りくる敵をこれまでに見たこともないような超絶アクションでバッタバッタとなぎ倒しながら脱出するシーンを観たときに。

あれは高校の体育の授業でした。季節は秋か冬だったはずです。グラウンドでサッカーだったので。

いつもの体育教師が部活の大会か私用かで不在で、代理として母校で最も怖いと恐れられていた野球部の監督がやってきました。

体操着に着替えながら、みんな口々に嫌だなぁと不安を吐露していたのですが、授業開始直後に早くもその不安は現実のものになりました。

ふたりひと組のペアを作れという野球部監督の号令に(サッカーでペア…?)と怪訝な表情を浮かべながらも、キビキビ動かないと怒鳴られるので速やかにペアを作ると続けられた言葉に耳を疑いました。

「よし、お前ら肩車しろ。肩車してサッカーだ。普通にサッカーやってもつまらんからな」

このとき、その場に居合わせていた全員の気持ちはひとつになっていたと確信しています。

はあ?お前は一体何を言っているんだ?

もちろん、そんな不満などおくびにも出さずに、粛々と肩車しながらサッカーしましたよ。当然ですとも。

だって、野球部の監督、チョー恐ろしいですから。竹刀持ってますから。タラタラしてたら竹刀で叩かれますから。

肩車となると映画の中のように超絶アクションなどできるはずもなく、動ける者でも速歩きがやっとでまともにボールも蹴れず、フラフラで右往左往するだけという悪夢のような一時間でした…。

しゃしゃり出てきた野球部の監督のせいで、経験者リードを活かして無双できる楽しいサッカーの時間が台無しに…。

葬り去りたい苦い記憶が一瞬蘇るも、映画はムチャクチャ面白かったです。初めてのインド映画でしたがあっという間の三時間でした。

乱暴に要約すると、『ランボー』×『コマンドー』×『300』×『男たちの挽歌』×『グレイテスト・ショーマン』×『大脱走』+今までに観たことも聴いたこともないようなアクションやダンスをバッチバチに決めた構図で上乗せしたジャッキー映画、そんな感じ。

音楽もすごかったですね。鼓舞されるというか、魂が震えるというか、血がたぎるというか、野性の本能が刺激されるというか。

CGがちょっと安っぽいなとか傷の治りが早すぎるだろとかなぜそうなるとか都合良すぎるでしょとかツッコミどころもありますけど、まあいいやそんなことどうでもと思わせちゃうくらい有無を言わせぬ推進力があります。

撮りたいこと観てほしいことをケチ臭く小分けせずにとりあえず全部ぶっ込んでテンション高くひたすら突っ走る、そんな超濃厚な映画です。

小学生の頃にジャッキー・チェンやブルース・リーの映画と出会ったときの気持ちを思い出させてくれるようなひとときでした。

エンドロールはキャスト全員による、思わず笑顔になってしまうような可愛らしい歌と踊りなのですが、クレジットは右端に追いやられていたのでひと文字たりとも追えませんでした。

ひと文字たりともです。

あの役を演じていた役者さんは誰か知りたくても、エンドロールでそれを確認するのは不可能です。キャストの歌と踊りから目が離せないので。覚えておいてあとで調べるしかありません。

こんなエンドロールも初めてでしたね。最後の一秒まで最高が続くだなんて。

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