Fair Warningの3rdアルバム『Go!』を聴いた感想

Fair Warningの3rdアルバム『Go!』(1997)を聴いた感想

予感めいたものは、何ひとつありませんでした。

このアルバムを聴く前は、これが人生で最も好きなアルバムのひとつになるとも、このアルバムとの出会いがきっかけでますますメロディアス・ハードロックにのめり込んでいくことになるとも、想像もしていませんでした。

私がこのアルバムを買ったのは、良いバラードがひとつでも入っていれば儲けもの、そう思ってのことだったのです。

というのも、このアルバムを買う前に、Fair Warningの初期二枚からのベストアルバム『Early Warnings』を聴いていたのですが、あまりピンとこなかったのです。

“Long Gone”や”Take Me Up”など、バラード曲はめちゃくちゃ素晴らしいなと感激したんですけど、激しい曲については「なんかメタルみたいでヘヴィだな」と感じてしまい、自分にはちょっと激しすぎる、という結論になってしまいました。

だから、また素晴らしいバラードがいくつか聴けたら嬉しいな、くらいにしか期待していなかったのです。

これには、当時の私の嗜好も関係しています。この頃は、ロックバンドが歌うバラードが特に好きだったんですよね。B’zやBon JoviやAerosmithといった大好きなバンドの曲の中でも、アップテンポなロックナンバーよりも、美しいバラードが好きだったのです。

初めて一曲目の”Angels Of Heaven”を聴いたときも、(今では超大好きな曲ですけど)やっぱりちょっとヘヴィで激しすぎるな、と感じました。

なので、初めて”Save Me”のイントロを聴いたときの衝撃は、とてつもなかったですね。Bon Joviの”Livin’ On A Prayer”を初めて聴いたときの衝撃も凄まじかったですが、それに勝るとも劣らない、甲乙つけがたい衝撃でした。

撃ち抜かれましたね。不意打ちで。得も言われぬ高揚感を伴った、美しいキーボードのイントロに。

続く名バラード”All On Your Own”、ドラムの乱れ打ちからポジティヴなムードに移行する”I’ll Be There”といった曲も素晴らしく、繰り返し聴きこんでいるうちにすっかりFair Warningの魅力の虜になりました。

それから初期ベストを聴き返してみたら、驚いたことに、彼らに対してちょっと苦手だなと感じていたネガが、消えてなくなっていたんですよね。綺麗サッパリと。

当然ですけど、そのすぐ後に1st『Fair Warning』と2nd『Rainmaker』を入手し、こちらも繰り返し聴きこんでいくことで、さらにFair Warningにハマっていくことになるのでした。

H.E.R.O.の『Bad Blood』を聴いた感想

H.E.R.O.の2ndアルバム『Bad Blood』を聴いた感想

初の単独来日公演直前に発売予定が発表されて以来、手元に届くのを心待ちにしておりました。デンマーク出身のロックバンド、H.E.R.O.の2ndアルバム『Bad Blood』。

Amazonで予約注文したらフラゲ日に届いたので、プライム会員じゃないのにフラゲ日に届けてくれるなんて、やけに太っ腹じゃないかAmazon、などと戸惑いつつも、嬉しくて否やもないので、早速開封して聴き込みました。

デビューアルバム『Humanic』の国内盤リリースが2019年の4月24日なので、約一年のスパンでの新作です。洋楽ロックバンドでこの間隔は、異例中の異例、かなり早いタイミングでのリリースでしょう。

イベント出演や大物のサポートを勤め上げてからの満を持してアルバムデビュー、初単独来日公演も盛況で成功と、勢いに乗っているのをひしひしと感じますね。この勢いを逃したくない、立ち止まらずに攻勢に出るべきだ、そういった判断なのでしょう。

レーベルと契約を結んでから1stアルバムまでが長かったので、アイデアやストック、やってみたいことが豊富な状態だった、というのも、次の一手の早さに繋がったんでしょうね。アルバムデビューにこぎつけるまでは苦労したかもしれませんが、その後の怒涛の勢いを見るにつけ、積むべくして積んだ苦労、正解だった回り道でしょう。

このバンドの一番の魅力、武器は、Chrisの美しいハイトーンヴォーカルだと思うんですけど、その魅力の活かし方を充分に心得た、高低差のある作曲が心憎いですね。

マニピュレーターを駆使した、リッチで重厚で手の込んだロックサウンドを切り裂くようにして耳に飛び込んでくる、高域の美しい歌声がたまりません。

裏声を美しく伸ばしたかと思ったら、荒々しいシャウトが飛び出したりと、表現力にも幅があって、聴いていて惚れ惚れします。

考え方のひとつとして、サウンドをシンプルにして歌声の魅力を前面に押し出すのもありだと思うんですけど、音にも凝りたいし歌声の美しさも活かしたい、と欲張った結果、モダンでポップでありながら挑戦的でもある、豊潤なサウンドに仕上がっています。

一番長い曲でも3分56秒と、コンパクトにまとめられた楽曲ばっかりで、12曲入りで40分と一周があっという間なのが、凝縮されていて濃密で聴き応えがある反面、もっと聴いていたいと物足りなさも覚えてしまいます。贅沢な注文ですね。

ちょっと気が早いですけど、次作では大曲も聴いてみたいですね。スリリングなソロバトルを繰り広げるような、ライブでトリップできそうな楽曲を。

Harem Scaremの『Change The World』を聴いた感想

Harem Scaremの『Change The World』を聴いた感想

カナダ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Harem Scaremの最新作、『Change The World』を、Amazonで予約購入しました。

ダウンロード配信は予定通り開始されたのに対して、国内盤CDの発売は数週間遅れたので、サブスク派の視聴報告や感想を目にしては、「ぐぬぬ」と歯噛みしておりました。予約注文したCDキャンセルして、ダウンロード購入しちゃおうか。いやいや、ここはグッと我慢だ。

そんなこともあって、Frontiers Musicの公式YouTubeチャンネル上で先行公開されていた新曲三曲が素晴らしかったので、発売日を首を長くして待っていたわけなんですけど、プライム会員ではないので数日遅れで届くんだろうなと予想していたら、何故かフラゲ日に届いた謎。まあ一日でも早く聴けるのは嬉しいので、否やもないのですが。

新曲がYouTubeで先行公開される前に、まずタイトルが発表されたと記憶しているんですけど、そこで新作のタイトルが『Change The World』と知って、それだけで新作もまた名作に違いないと確信しました。

なんせ、”Change The World”という名を冠した曲の名曲率は異常ですからね。Eric Claptonに始まり、Anberlin、Michael Morales、Westlife、This Beautiful Republicなどによる、素晴らしい同名異曲の数々。今回、ここにHarem Scaremが新曲でもって名を連ねる運びとなるわけです。

さて、このタイトルトラック”Change The World”ですが、二番が終わってピートの流麗なギターソロを堪能し、さあこれからラストのサビで大円団、という段になって、急に優しげで美麗な歌声が割り込んできて、「何だ何だ、誰だ?」となるんですけど、これがまさかのTony Harnellで二度びっくりですよ。

Tony Harnellのバッキング・ヴォーカルが、めちゃくちゃいいアクセントになっていて、聴いていてめちゃくちゃ気持ちいいのです。私が大っ嫌いなFeaturing~がクレジットされちゃっても構わないから、一曲丸々Tony Harnellとツイン・リード・ヴォーカルを録ってほしかった、と所望したくなる、至福のラスト一分。

はぁ、幸せ。初っ端のこの一曲で早くも幸福を噛み締めているわけですけど、まだまだ早いよと言わんばかりに、このあとも名曲が続々と流れてくるんですよ。発売前からの期待と確信を裏切らない名盤です。

ひとつだけ、強いて、残念な点を挙げるとするならば、”Mandy”や”Baby With A Nail Gun”、”See Saw”のような、弾きまくりのピートが堪能できるギターインストがなかった、ということくらい。

それにしたって、各楽曲で、ピート節たっぷりの、同じフレーズを繰り返しながら階調を上げて駆け上ってゆく秀麗なギターソロが収められているので、減点とか不満ではなくて、それでもあえて挙げるとするならば、というレベルの無い物ねだりです。

再結成後、2014年の『Thirteen』に2017年の『United』と、立て続けに名盤を送り出してきたHarem Scaremですけど、三作続けての名盤リリースですよ。

この絶好調ぶり、一体バンドに何が起こったのでしょうか。一旦解散していた時期に、何かを掴んだのでしょうか。再結成後の曲のみの縛りで、来日公演を企画してもらいたいくらいの充実度です。

今は新型ウイルスの蔓延で先行きの見えない情勢ですけど、一刻も早くこの事態が終息へと向かって、バンドから嬉しいニュースが発表されますようにと、そう願うばかりです。

再結成後のHarem Scaremには、神が降りている

再結成後のHarem Scaremの楽曲の完成度の高さは異常

再結成後のHarem Scarem、楽曲完成度高すぎじゃないですか?

まあ、初っ端からこんなこと書いておきながら、再結成後のアルバムを買い集めだしたのは2014年の『Thirteen』からで、その前年の『Mood Swings Ⅱ』はスルーしちゃってたんですけども。

発売当時、試聴してみたらアレンジがほとんどオリジナルと同じだったんで、それなら買わないでいいか、という判断だったのです。まさか、追加収録の新曲三曲が全部いいとは、夢にも思わず。

ベストとか再発盤に追加収録されたりする新曲って、お察しな出来であることがほとんどじゃないですか。経験を積むと、行動に移す前にその結果を予測して、悪そうだったら回避を試みるんですけど、それが裏目に出ちゃいましたね。

そんな『Mood Swings Ⅱ』に続けてリリースされた、2014年の『Thirteen』、2017年の『United』、この二枚のアルバムの出来がまた出色だったんですよね。

再結成後のアルバムって、ネガな部分が悪目立ちしてしまうというか、聴く側も必要以上にシビアな見方をしてしまうところがありますよね。冷ややかというか。斜めに見てしまうというか。素直になれないというか。

三枚目以降から一旦解散まで、Harem Scaremは初期二枚の幻想に囚われて、良質な作品を発表し続けながらも試行錯誤や迷走を繰り返し、それでもなんとか着地点を見つけようともがき苦しんでいたんですけど、一旦解散したことでうまく区切りをつけることができたのか、再結成後の楽曲は、過去のあれやこれやを吹っ切ってのびのびしている感じでした。

ポジティブというか前向きというか、曲がとにかく魅力的なんですよね。メロディがいいんですよ、わかりやすくて。かといって、シンプルになりすぎずに展開や構成にも凝っていて、聴き応えも十分なんですよね。

再結成後の曲のみの縛りで公演やってほしいくらい、再結成後の曲は素晴らしいです。

そんな彼らの最新作『Change The World』が、最近SpotifyやApple Musicなどで配信開始されました。

私は、発売延期となった国内盤をAmazonで予約注文しているので、視聴報告や感想を見ては「ぐぬぬ」と歯噛みしています。

というのも、YouTubeで先行公開されている公式動画を視聴する限り、新作もまた素晴らしい出来に違いないと確信できるからです。

誘惑が激しいですね。予約注文したCDをキャンセルして、ダウンロード購入しちゃいたい誘惑が。

Fair Warningの七作目『Sundancer』を聴いた感想

Fair Warningの『Sundancer』(2013)を聴いた感想

ドイツのメロディアス・ハードロック・バンド、Fair Warningの七作目のアルバム。このバンドの作品は、初期四作の出来が神がかっていたせいか、五作目以降が過小評価される傾向にあるんですけど、その傾向が特に顕著なのがこの七作目です。

かくいう私も、リリース当時聴いたときには、「うわ、何だこれ、終わった…」と失望し、悲嘆に暮れたものですが、何年後かに落ち着いて改めて聴いてみたら、「あれ? 意外といいぞ? …いや、いいなこれ。なんで当時あんなに落胆したんだろう…」と戸惑いを覚えるほど、評価が一変しました。

確かに、バンドの代表曲と並ぶほど強力なキラーチューンがあるわけではないのですが、ソツなくスキのない、いぶし銀な佳曲が並んでいます。

最初の酷評への罪滅ぼしもあって、再評価が甘くなってしまっている部分もあるかもしれません。それでもやっぱり、過去作と比べて物足りないからといって、駄作と切り捨てるにはあまりにももったいないアルバムですよ。

地元のCD屋さんに、初回限定盤がずっと鎮座しているんですけど、デカすぎて棚から飛び出しているので、売り場に行くたびに毎回目に入ってしまって、誰でもいいから早く買ってくれと訴えかけられているようで切なくなります。うう、なんと不憫な…。

不憫といえば、ライブでの取り扱いの酷さですよね。五作目以降の楽曲の。

バンドも五作目以降の評判の悪さを感じ取っているからなのか、プロモーター側から事前に初期四作を中心としたセットリストを要請されているからなのか、八割方が初期四作からの選曲じゃないでしょうか。いや、下手したら九割か。

ただでさえ寡作でライブ本数も少ないのに、そこで演奏する機会も限られているという苦境。

不遇としかいいようがないのアルバムですよ。結構いい曲揃っているのに…。