The Rasmusにハマったきっかけ

The Rasmusにハマったきっかけ

The Rasmusはフィンランド出身のロックバンドです。陰りのある憂いを帯びたハードなサウンドで、飛び切りキャッチーなロックを聴かせてくれるバンドです。

1996年にデビューアルバムをリリースしているのですが、私が彼らのことを知ったのは、5thアルバムの『Dead Letters』がリリースされた頃です。2003年頃ですね。

どこで知ったかというと、当時輸入盤の個人輸入でよく利用していた、ドイツのメロディック・ロック専門通販CDショップAOR Heaven(残念ながらレーベルと通販業務の終了が発表されています…)に入荷していたのです。

店主の激推しコメントに(ホントかぁ?)と眉唾ながらも、まとめ買いの中の一枚に含めました。

当時は今みたいに何でもかんでもYouTubeで試聴できなかったので、推しコメントやジャケットや誰のプロデュースなのかといった情報から、このバンドは自分の好みなのだろうかと推し量るしかありませんでした。

斜に構えていたのでそれほど期待は大きくなかったのですが、どれどれと聴いてみたら独特の世界観をとても聴きやすいキャッチーなハードロックに落とし込んでいて、一発で惚れました。

すぐさまAOR Heavenをチェックし直すと、その前の4thアルバム『Into』の在庫があったのでそれも取り寄せて聴いてみたら、『Dead Letters』と比べるとやや明るくポップな曲調ではあったものの、同一路線のキャッチーなロックに嬉しくなりました。

この『Into』と『Dead Letters』を聴いたことが、The Rasmusの音楽に惚れ込んだきっかけです。

惚れ込んだあまり、『Into』と『Dead Letters』と6thアルバム『Hide From The Sun』はそれぞれ3枚ずつ買うことになりました。輸入盤やらボーナストラック追加再発盤やら日本盤やら紙ジャケット再発盤やらで。

一番最初に買った輸入盤は妹にあげたので手元にはありませんが。

The Rasmusは音楽が魅力的なだけじゃなく商売も上手なので、ついつい財布の紐が緩んでしまいます。同じアルバムを二枚買うことはままあっても、三枚となるとなかなかないですからね。さすがに。これが惚れた弱みってやつですかね。

ただ、誤算もありました。初期の彼らの音楽性は、今とは全然別物だったのです。勝手に盛り上がって期待を押し付けて、そこから外れていたのでがっかりしてしまいました。

さらに彼らのバックカタログを欲した私は、1stから3rdアルバムも探して手に入れたのですが、ファンクっぽいというか、ガチャガチャとしたサウンドでやけに陽気なポップロックで、4th以降とは似ても似つかない音楽性だったのでずっこけました。

3rdと4thの間に一体何があったのかと、バンドに聞いてみたくなるほどの音楽性の変化です。

4th以降のアルバムを聴いてThe Rasmusにハマると、必然的に過去作にさかのぼっていくことになると思いますが、私のように似たような音楽性を期待しているとずっこけるので気をつけましょう。

つい先日には、ギタリストのメンバーチェンジという衝撃の一報がありましたが、ヒットソングライターのDesmond Childと組んだ新曲”Jezebel”でEurovision Song Contest 2022へのエントリーも発表されました。

新しいアルバムも近いうちに聴けるでしょう。彼らのますますの活躍が楽しみです。

スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドNestorの三十年越しのデビューアルバムには、タイムカプセルを開けたかのような驚きが詰まっていた

スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドNestorの三十年越しのデビューアルバムには、タイムカプセルを開けたかのような驚きが詰まっていた

いつからでしょう。

せっかく音楽CDを買っても、ろくにブックレットに目も通さずに、音を聴いただけでそのバンドを知ったような気分になって、あまつさえ満足するようになってしまったのは。

そんなことだから、私は明記されていた情報を見落とし、インタビューや解説を読むまでその事実を知る由もなく、今このときになって驚天動地の驚きを覚えることになりました。

まさか、1989年に結成するも当時はデビューに至らず、三十年以上が経った2021年についに念願のデビューアルバムをリリースしたNestorのヴォーカリストであるTobias Gustavssonが、かつて好きでよく聴いていたMizへの楽曲提供や、作曲兼ギタリスト担当として女性ヴォーカリストと組んだItchycooで活動していたとは。

いやぁ、びっくりしました。青天の霹靂でしたね。

うそ?マジ!?と思わずMizやItchycooのアルバムのブックレットを引っくり返して、クレジットを確認しちゃいましたからね。ここに来て、こんなふうに、好きなアルバムに繋がりが生まれるとは。感無量というか、さわやかな感心や感動の趣がありました。

小学生の頃に埋めたタイムカプセルを掘り返したら、これに近い気分に浸れるんでしょうかね。もしかしたらおイタしていて覚えもない古傷を抉られるのかもしれませんが、幸いTobias Gustavssonは名作に関わっていたので、美しい思い出が呼び起こされました。

Nestorのデビューアルバムである『Kids In A Ghost Town』がまた、80sリバイバルというか、レトロで懐かしい感じのエレクトロニカなサウンドを取り入れた、北欧っぽくもアメリカンぽさもあるキャッチーなメロディアス・ハードロックに仕上がっているものですから、喜びもひとしおです。

この三十年、ソングライターとして様々なプロジェクトに関わってきたTobias Gustavssonが中心となって曲を書いていることもあって、本作に収録されている曲はどれも素晴らしいです。構成も凝っていて、ただ良い曲が並んでいるだけでなくて、ここぞというポイントに差し込まれたイントロやFMラジオ風のSEなど、雰囲気を盛り上げる演出もニクいです。

特に、Samantha Foxをゲストに迎えたデュエット曲”Tomorrow”は出色ですね。当然そんなわけはないんですけど、知っていても(あれ?この曲、映画『ギルド・オブ・エイジズ』で使われてたっけ?)と確認したくなるほど、80年代アメリカン・ハードロックへの憧憬をモノにしています。

三十年以上溜め込んだ想いがついに結実した、その喜びがあふれる強力なアルバムです。

https://note.com/avalon_label/n/n9bcbef899031

Trev Lukather率いるロックトリオLevaraのデビューアルバム『Levara』を聴いた感想

Trev Lukather率いるロックトリオLevaraのデビューアルバム『Levara』を聴いた感想

まず最初に断っておきますと、このLevaraという三人組のバンドの前途は有望どころか多難もいいところで、次作があるかどうかも怪しいバンド存続の危機にあります。

というのも、この『Levara』というデビューアルバムをリリースしたのは2021年5月14日だったのですが、そのわずか四日後にバンドのギタリストであるTrev Lukatherが脱退してしまったからです。

は?マジで?一体何があったん?

私は2021年の末にこのバンドの存在を知り取り急ぎCDを注文して手に入れたのですが、その直後にこの事実を知って脱力感に襲われました。

せっかくこんな素晴らしいアルバムを作ってデビューしたのに、もったいなさすぎる…。

Levaraでやりたかったことはこの一枚でやり尽くしたのか、Trevはすでに次のプロジェクトに取り組んでいるそうです。

さて、気を取り直して、このLevaraの音楽性ですが、華やかでポップなロックです。AORやハードポップに近いテイストですね。

クセがなくセンスの良さを感じさせるおしゃれな音作りで、北欧ハードポップや欧州の透明感のあるポップコーラスが好きな人にはたまらなく魅力的に聴こえるんじゃないでしょうか。

Trevのギタープレイは強烈な存在感を放っているわけではなく、楽曲にさりげなく華を添えている程度で控えめなので、ひょっとしたら脱退の影響はそれほど深刻ではない可能性もあります。バンドの今後の活動の鍵は、メンバー三人で共作していた作曲へのTrevの関与がどのような割合であったのか、が握っていると言えそうです。

ヴォーカルのJules Galliの歌声は素晴らしいですね。パワフルさや迫力の声量で圧倒するタイプではありませんが、レンジの広い透き通るような美声はバンドの音楽性にもハマっていますし、耳あたりが優しいので聴いていて心地いいです。

たとえこのLevaraというバンドの存続が叶わず消滅することになったとしても、Jules Galliの歌声をソロや新たなバンドの立ち上げや既存の他のバンドへの加入など、どのような形でもいいので、聴き続けることができたら嬉しいですし、そうなることを願っています。

Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionは、ともにスウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドであるGrand IllusionのAnders RydholmとWork Of ArtのLars Safsundが手を組んだプロジェクトで、『X Marks The Spot』はそのプロジェクトのデビュー・アルバムです。

日本盤の発売日が2021年の2月3日なので、すでに発売から約一年が経過しようとしています。

今更感半端ないですが、新年2022年が明けてから、部屋でゴロゴロと読書をしながら2021年の新譜を聴き直して振り返っていたら、Art Of Illusionのアルバムに(やっぱり良いなぁ)と聴き入ってしまいました。

数曲で外部ライターが作詞していたりAndersとLarsが共作していますが、ほとんどの楽曲はAndersがひとりで手掛けているので、音楽性は基本的にはGrand Illusionを踏襲した、計算し尽くされた構築美の枠組みの中でキーボードやギターが躍動するメロディアス・ハードロックです。

本作に収録されているリードギターは絶品ですね。曲によってプレイヤーは様々ですが、ときにサスティーンを魅惑的に響かせ、ときに挑発的な速弾きで刺激して。そのツボを知り尽くした音色に思わず(うおぉ、これこれ!)と顔をほころばせたファンも多いでしょう。

Larsの歌声は相変わらず素晴らしいですね。Work Of ArtやLionvilleですでに彼の歌声を聴いている人からしたら言わずもがなのことですが、軽やかで爽やかながらパンチもあるハイトーンは耽美的です。

コーラスワークも素晴らしいですね。Grand Illusionを彷彿とさせる、天高く舞い上がらんばかりのコーラス。最高に気持ちいいです。バック・ヴォーカルにはAndersと長年の付き合いのPer Svenssonが参加し、プロデュースとアレンジもAndersとLarsが共同で手掛けているので、当然といえば当然の帰結でもあります。

また、このプロジェクトの新要素として、歌劇のように振り幅が大きく劇的な展開を見せる曲が飛び出してきたりします。歌劇のような展開というと、多くの人の頭にパッと思い浮かぶのはQueenやRobby Valentineでしょう。

あまり大仰すぎず、あくまでも楽曲を彩るひとつの要素、というバランスの見事なさじ加減なので、あまり派手な演出はちょっと苦手だという人でも身構えずにすんなり聴けると思います。

ボーナストラックの”No Goodbyes”がめちゃくちゃいいので、もしこれから買うのであれば絶対に日本盤がおすすめ。「なぜこの名曲が日本盤のみのボーナストラックなのか意味不明ランキング」を作成したら、トップ10入りは堅いレベルの曲です。

最近は収録曲の別バージョンばっかりで、こういう美味しいボーナストラックがめっきり減ってしまいました。

このプロジェクトでGrand Illusionの存在を知って、遡る人もいるんでしょうね。

Grand Illusionの過去作を掘り下げるのは、未来からのタイムトラベラーにまだ誰の手もついていない鉱山を教えてもらうようなものです。

もう美味しいところはあらかた聴き尽くしたと思っていても、それはたんなる勘違いで、世の中にはまだまだたくさん素晴らしい音楽が眠っていて、掘り起こされるのを今か今かと待ちわびているのです。

Eclipseのデビュー20周年8thアルバム『Wired』は過去最高傑作クラスの名盤

Eclipseのデビュー20周年8thアルバム『Wired』は過去最高傑作クラスの名盤

スウェーデンのメロディアス・ハードロックの雄Eclipseの8thアルバム『Wired』がリリースされました。

アルバムリリースに先駆けて公開されていた三曲がどれも良かったので、相変わらず高品質なアルバムが楽しめそうだと期待していましたが、いざ発売されたアルバムを聴いてみたら、のっけから想像を上回る楽曲群のオンパレードで、度肝を抜かれました。

先行公開された三曲はどれも良かったんですけど、それでもレーベルやバンドに正直先行公開する曲の選択をミスったと思ってますよね、と聞いてみたくなるほど、その他の収録曲の出来が素晴らしかったのです。

デビュー20周年の最新作にして、過去最高傑作でしょう。

アルバム冒頭から中盤にかけても目を瞠るほどの楽曲の充実ぶりなんですけど、中盤でバラードを一曲挟んでからの終盤がさらなる一気呵成の攻勢なのです。自分のバンドだけでなく数多のプロジェクトのアルバム制作に関わっておきながら、衰え知らずどころかさらなる隆盛を迎えようとしているこのクオリティ、Erik Martenssonは化け物か…。

ライブ映えしそうなアグレッシブかつエネルギッシュなサウンド、しかし勢い一辺倒でなく民族音楽的な郷愁や哀切を誘う隠し味、かつてないほど鳴きまくっているように聞こえるギター、オマージュや遊び心を感じさせる仕掛け、どれもが最高です。

前作での来日公演が延期されたまま開催されていない現状ですが、この素晴らしい新作を引っさげての来日公演実現でもって打破してほしい、そう願います。