全曲新曲のベストアルバムだなんてそんな無茶な、と思ってたけどひょっとするかもしれないのがMuseの新作『Will Of The People』
レコード会社側のベストアルバムを出したいという思惑に反発する形で制作されたのが、Museの新作9thアルバム『Will Of The People』です。
なにかのインタビューでMuseのヴォーカル兼ギターのMatthew Bellamyが全曲新曲のベストアルバムを出してやろうという気概で制作に取り組んでいると語っていたのを知って、私の胸に去来したのは楽しみよりもそんな無茶なという心配でした。
名曲揃いの名盤に対してよく全曲シングルカットできそうとかいいますけど、ベストアルバムともなると全曲シングル級だとしてもちょっと弱いですからね。ベストアルバムというからには、新作に収録される新曲は全部過去の代表曲を葬り去るクラスの名曲じゃないと。
それくらいじゃないと弱いですからね。
考えてみてくださいよ。
てことはですよ?
今度の新作には、”Plug In Baby”や”Hysteria”や”Knights Of Cydonia”などの過去の名だたる名曲たちと肩を並べるどころか、もしいつかベストアルバムが発売されるとしたらそれらの楽曲を選外へと追いやるレベルの新曲ばっかりが収録されている、ということになってしまうんですよ?
そんな無茶な、と思うのは私だけじゃないでしょう。
そんなMuseのベストアルバムがあり得るはずがないじゃないか、と。
無謀にもほどがある挑戦だ、というのが多くの方の認識だと思います。そりゃ中には数曲過去の代表曲にも比肩する強力な曲はあるだろうけど、新曲全曲そのレベルっていうのはいかにMuseといえどさすがに難しいだろう、と。
楽しみ半分不安半分どころかほぼ不安で胸が埋め尽くされた状態で発売日にMuseの新作アルバム『Will Of The People』を聴いた私は、これはひょっとしたらひょっとするかもしれない…と思いました。
現時点では、発売から二週間ちょっと聴いたくらいでは、いくら曲の出来がよくてもさすがにMuseが好きになったきかけの曲とか、ライブで生で聴いて感動した思い出の曲とか、アルバムで聴いただけではピンときてなかったけどライブで聴いたら化けた曲とか、思い入れ補正で強化された曲を頭から追い出すほどの存在にはなっていませんが、これから聴き込んでこのアルバムがもっと好きになり、いずれライブで生で聴いてその好きがさらに強化されたりすれば、過去の名曲代表曲を食うほどに育つかもしれない…。
全10曲約38分。コンパクトながらその内容は80年代風ありメタル風ありQueen風あり、アグレッシブなロック曲もあれば美メロが鳴り響くバラードもありと多彩で充実しており、らしさもあれば新機軸も感じられるという聴き応えたっぷりの一枚。
前半も凄いですけど、怒涛の展開を見せる後半も凄まじいです。6曲目からスイッチ入って、ガラッと雰囲気が一変。
各曲の作曲や編曲はもちろん、アルバムの構成にまで細かく気を配って煮詰めたのは間違いないでしょうが、メンバーがノリノリで創作したかのようなサウンドが満載で、その産みの苦しみを感じさせない快作です。
ベストアルバムを望んだレコード会社への反骨心の強さが伺えるような充実ぶりですね。
まだ日本へのツアー決定の報はないですが、早くライブが観たいですね。
アルバム『Will Of The People』の完全再現ライブが観たいです。