Trev Lukather率いるロックトリオLevaraのデビューアルバム『Levara』を聴いた感想

Trev Lukather率いるロックトリオLevaraのデビューアルバム『Levara』を聴いた感想

まず最初に断っておきますと、このLevaraという三人組のバンドの前途は有望どころか多難もいいところで、次作があるかどうかも怪しいバンド存続の危機にあります。

というのも、この『Levara』というデビューアルバムをリリースしたのは2021年5月14日だったのですが、そのわずか四日後にバンドのギタリストであるTrev Lukatherが脱退してしまったからです。

は?マジで?一体何があったん?

私は2021年の末にこのバンドの存在を知り取り急ぎCDを注文して手に入れたのですが、その直後にこの事実を知って脱力感に襲われました。

せっかくこんな素晴らしいアルバムを作ってデビューしたのに、もったいなさすぎる…。

Levaraでやりたかったことはこの一枚でやり尽くしたのか、Trevはすでに次のプロジェクトに取り組んでいるそうです。

さて、気を取り直して、このLevaraの音楽性ですが、華やかでポップなロックです。AORやハードポップに近いテイストですね。

クセがなくセンスの良さを感じさせるおしゃれな音作りで、北欧ハードポップや欧州の透明感のあるポップコーラスが好きな人にはたまらなく魅力的に聴こえるんじゃないでしょうか。

Trevのギタープレイは強烈な存在感を放っているわけではなく、楽曲にさりげなく華を添えている程度で控えめなので、ひょっとしたら脱退の影響はそれほど深刻ではない可能性もあります。バンドの今後の活動の鍵は、メンバー三人で共作していた作曲へのTrevの関与がどのような割合であったのか、が握っていると言えそうです。

ヴォーカルのJules Galliの歌声は素晴らしいですね。パワフルさや迫力の声量で圧倒するタイプではありませんが、レンジの広い透き通るような美声はバンドの音楽性にもハマっていますし、耳あたりが優しいので聴いていて心地いいです。

たとえこのLevaraというバンドの存続が叶わず消滅することになったとしても、Jules Galliの歌声をソロや新たなバンドの立ち上げや既存の他のバンドへの加入など、どのような形でもいいので、聴き続けることができたら嬉しいですし、そうなることを願っています。

Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionは、ともにスウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドであるGrand IllusionのAnders RydholmとWork Of ArtのLars Safsundが手を組んだプロジェクトで、『X Marks The Spot』はそのプロジェクトのデビュー・アルバムです。

日本盤の発売日が2021年の2月3日なので、すでに発売から約一年が経過しようとしています。

今更感半端ないですが、新年2022年が明けてから、部屋でゴロゴロと読書をしながら2021年の新譜を聴き直して振り返っていたら、Art Of Illusionのアルバムに(やっぱり良いなぁ)と聴き入ってしまいました。

数曲で外部ライターが作詞していたりAndersとLarsが共作していますが、ほとんどの楽曲はAndersがひとりで手掛けているので、音楽性は基本的にはGrand Illusionを踏襲した、計算し尽くされた構築美の枠組みの中でキーボードやギターが躍動するメロディアス・ハードロックです。

本作に収録されているリードギターは絶品ですね。曲によってプレイヤーは様々ですが、ときにサスティーンを魅惑的に響かせ、ときに挑発的な速弾きで刺激して。そのツボを知り尽くした音色に思わず(うおぉ、これこれ!)と顔をほころばせたファンも多いでしょう。

Larsの歌声は相変わらず素晴らしいですね。Work Of ArtやLionvilleですでに彼の歌声を聴いている人からしたら言わずもがなのことですが、軽やかで爽やかながらパンチもあるハイトーンは耽美的です。

コーラスワークも素晴らしいですね。Grand Illusionを彷彿とさせる、天高く舞い上がらんばかりのコーラス。最高に気持ちいいです。バック・ヴォーカルにはAndersと長年の付き合いのPer Svenssonが参加し、プロデュースとアレンジもAndersとLarsが共同で手掛けているので、当然といえば当然の帰結でもあります。

また、このプロジェクトの新要素として、歌劇のように振り幅が大きく劇的な展開を見せる曲が飛び出してきたりします。歌劇のような展開というと、多くの人の頭にパッと思い浮かぶのはQueenやRobby Valentineでしょう。

あまり大仰すぎず、あくまでも楽曲を彩るひとつの要素、というバランスの見事なさじ加減なので、あまり派手な演出はちょっと苦手だという人でも身構えずにすんなり聴けると思います。

ボーナストラックの”No Goodbyes”がめちゃくちゃいいので、もしこれから買うのであれば絶対に日本盤がおすすめ。「なぜこの名曲が日本盤のみのボーナストラックなのか意味不明ランキング」を作成したら、トップ10入りは堅いレベルの曲です。

最近は収録曲の別バージョンばっかりで、こういう美味しいボーナストラックがめっきり減ってしまいました。

このプロジェクトでGrand Illusionの存在を知って、遡る人もいるんでしょうね。

Grand Illusionの過去作を掘り下げるのは、未来からのタイムトラベラーにまだ誰の手もついていない鉱山を教えてもらうようなものです。

もう美味しいところはあらかた聴き尽くしたと思っていても、それはたんなる勘違いで、世の中にはまだまだたくさん素晴らしい音楽が眠っていて、掘り起こされるのを今か今かと待ちわびているのです。

Eric MartinのMr. Vocalistツアー大阪公演を観に行ったときの思い出

Eric MartinのMr. Vocalistツアー大阪公演を観に行ったときの思い出

13年ほど前のことですが、転職がきっかけで、旅行が趣味の友人と出会いました。

出会ったばかりの頃は当然そんなことは知らずに、休憩時間に話すようになって少しずつ趣味や人となりを知っていくことになるんですが、中でも特に印象深かったのが、結婚していて子供もいるのに、奥さんや子供は家で留守番、ひとりで京都や奈良に観光旅行している、という話でした。

強えな、というのが率直な印象です。さすが九州男児。強い。

その頃の友人の旅行スタイルは、夜行バスで京都に向かい、自転車屋が開くまで暇をつぶし、自転車を借りたら前もって決めていたエリアを集中的に見て回る、というものでした。泊まる場合は、夜は漫画喫茶かゲストハウスで越していたそうです。

出会ってしばらくしてその友人がデジタル一眼レフを購入し、以前に行ったことがある名所にも再訪するようになったために、旅行趣味がさらに加速していくことになるのですが、そんな頃にその友人からお誘いがありました。

「Eric MartinのMr. Vocalistツアー、大阪に観に行かない?」

大阪公演が土曜日だったんですよ。さすがにチケット厳しいんじゃないか、と思いながらも、取れたらいいですよと了承したのですが、まさかすんなりチケット取れて0泊2日ドライブ旅行することになるとは、誘われた時点では夢にも思っていませんでした。

今なら、ついでにどこに寄っていこうか、と考えますけど、カメラを買う前は旅行に興味がなかったので、ついでにどこかに寄るという発想がなかったんですよね。

実際、それ以前はライブを観に大阪や東京に行っても、観光らしい観光はほとんどしたことがありませんでした。

Harem ScaremとSilent Forceを大阪に観に行ったときは、心斎橋のホテルに泊まったものの、晩飯は適当に済ませて朝飯も食べずに午前中には新幹線に乗り込んでとっとと帰ってしまいました。

The Rasmusを大阪で観たときも、どこにも寄らずにライブハウスに直行し、終演後は漫画喫茶で夜を越し、始発の新幹線で帰りました。飯は吉野家か松屋で適当に済ませたはずです。

Museを大阪城ホールで観たときは、次の日仕事だったので車で行って、終演後は一目散に車に戻って帰りました。飯はサービスエリアの食堂で済ませた覚えがあります。

ご当地グルメを食べようという考えもなかったので、クラブクアトロが心斎橋にあった頃に、アメリカ村の甲賀流に一度行ったかどうか…。ハードロックカフェに行こうという頭すらありませんでした。

色々と思い出してたら、ちょっと悲しくなってきました。自分はなんてもったいないことをしていたのだろう、と。

こんな調子だったので、最初、チケット取れてEric Martinを観に行くと決まったとき、自分は(昼前くらいに出て夕方までに会場の近くに着いてたらいいだろう)と考えていました。

だから、友人に「何時頃に出ますか?」と聞いたら「仕事終わったらすぐに出ようや」と返ってきたときには、目が点になりました。はい?マジですか?「ついでに京都を観光しようや」

仕事終わりに寝ずに出発して京都観光の合間にライブ観覧?正気ですか?「眠くなったら寝たらええやん」

今思うと、狂気でしたね。あれは狂気の沙汰でした。

夜中の2時に仕事を終えると一旦帰宅して、入浴と着替えを済ませたら友人と合流し即出発。仮眠しながら8時前に京都着。早朝でまだ人もまばらな南禅寺、永観堂と参拝し、さすがに眠くなって昼間は仮眠。夕方にライブ会場の大阪に移動して、ライブが終わると余韻に浸る間もなく京都に舞い戻り、日帰り温泉で入浴し道の駅で車中泊。二日目は大原三千院を観光。

このとき、友人がデジタル一眼レフで撮影しているのを手持ち無沙汰に横目に見ていてカメラへの興味が芽生え、カメラを買ったら撮影旅行に行くようになり、ライブのついでに観光も楽しむようになり、B’zのライブに誘われ”Ain’t No Magic”でLIVE-GYMを初めて観て、確実にチケット手に入れたさにファンクラブに入会し、となっていくのですから、この友人からの影響は甚大です。私の余暇の過ごし方を一変させた超重要人物といえるでしょう。

それにしても、ハチャメチャなドライブ旅でした。今みたいにスマホもグーグルマップもなかったので、赤信号で止まったスキにジェイソン・ボーンみたいに地図帳をパパッと見て、瞬時に道を確認しながら移動して。

行き当りばったりで限界まで詰め込むドライブ旅は、今思うと無茶苦茶でしたけど、あれはあれでいい思い出というか、楽しかったですよね。渇いていたというか、飽くなき探究心がありましたよ。

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休日。土曜日の朝。

特になにも予定もないことですし、ゆっくり寝るつもりが、何故か6時前に目が覚めてしまい二度寝を試みるも無理だったため、諦めた私は起きることにして、何気なくTwitterを開いてタイムラインを眺めていました。

そしたら、友人があるバンドの公式アカウントのつぶやきをRTしていたので、そこに貼り付けられていた一分弱ほどの音源を聴いてみました。

それが上のNothing To Declareというバンドの”Get Up”という曲の一部だったのですけど、モロ好みだったので即YouTubeに飛んで、片っ端から公式MVを視聴していきました。

そのことごとくが素晴らしかったので、一瞬で彼らのサウンドの虜になりました。iTunesストアにて彼らの音源を購入し、ダウンロードしまくりました。

Nothing To Declareの音を聴いた感想をひと言で言い表すならば、衝撃ですね。素晴らしいバンドの存在を知った喜びよりもまず先に、こんなバンドが日本にもいたのか、という衝撃。

ハードロックやパンク、スクリーモなどからの影響を感じさせるキャッチーで骨太なロックがその根幹なんですけど、音色や音の雰囲気にイギリスっぽさやアメリカっぽさ、ほんのり北欧っぽさまでが混在していて、かといってごった煮感は皆無でとても洗練されていて聴きやすいんですよ。

まるで奇跡のようなサウンドです。作曲はもちろん、編曲にプロデュース、サウンドミックスも素晴らしい。なにをどうすれば、凄みを出しつつここまできれいにまとまるのか。センス抜群ですね。

彼らの音をノーヒントで初視聴で、イギリスのバンドがアメリカっぽい音を出しているか、もしくはその逆か、はたまたオーストラリアかカナダあたりからの突然変異バンドか、と予想する人はいても、日本のバンドだと直感できる人はまずいないでしょう。

よくよく聴き込めば、尋常じゃないキャッチーさの裏に、音の端々に様々なジャンルからの影響、吸収、昇華、体現が感じられて、この音を作り出せるのは日本のバンドだけかも、という可能性に思い至るかもしれませんが。

普段洋楽ロックしか聴かない、という人にもぜひ聴いてみてほしいバンドです。

ヴォーカルの声質が似ていることもあってか、強いて近しいバンドを上げるとしたらQuietdriveでしょうか。AnberlinやNational Productなど、パンクとハードロックを融合させたような洋楽が好きな人に、特におすすめ。

時折、上記のバンドが好きな人が聴いたら、膝をついて祈りながら落涙しちゃいそうな聖痕が垣間見えます。

いやぁ、久しぶりに興奮しました。こんな興奮は、Band−Maidに目覚めたとき以来でしょうか。

ここ数年は配信でシングルをリリースしているのみなので、そろそろ新アルバムや新EPの発表も楽しみですね。

Eclipseのデビュー20周年8thアルバム『Wired』は過去最高傑作クラスの名盤

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スウェーデンのメロディアス・ハードロックの雄Eclipseの8thアルバム『Wired』がリリースされました。

アルバムリリースに先駆けて公開されていた三曲がどれも良かったので、相変わらず高品質なアルバムが楽しめそうだと期待していましたが、いざ発売されたアルバムを聴いてみたら、のっけから想像を上回る楽曲群のオンパレードで、度肝を抜かれました。

先行公開された三曲はどれも良かったんですけど、それでもレーベルやバンドに正直先行公開する曲の選択をミスったと思ってますよね、と聞いてみたくなるほど、その他の収録曲の出来が素晴らしかったのです。

デビュー20周年の最新作にして、過去最高傑作でしょう。

アルバム冒頭から中盤にかけても目を瞠るほどの楽曲の充実ぶりなんですけど、中盤でバラードを一曲挟んでからの終盤がさらなる一気呵成の攻勢なのです。自分のバンドだけでなく数多のプロジェクトのアルバム制作に関わっておきながら、衰え知らずどころかさらなる隆盛を迎えようとしているこのクオリティ、Erik Martenssonは化け物か…。

ライブ映えしそうなアグレッシブかつエネルギッシュなサウンド、しかし勢い一辺倒でなく民族音楽的な郷愁や哀切を誘う隠し味、かつてないほど鳴きまくっているように聞こえるギター、オマージュや遊び心を感じさせる仕掛け、どれもが最高です。

前作での来日公演が延期されたまま開催されていない現状ですが、この素晴らしい新作を引っさげての来日公演実現でもって打破してほしい、そう願います。