東京は代官山のライブハウスSPACE ODDで、デンマーク出身のロックバンドH.E.R.O.の単独来日公演を観てきた

東京でH.E.R.O.のライブを観てきた

東京で、デンマーク出身のロックバンドH.E.R.O.のライブを観てきました。

ライブを観るのは、半ば諦めてたんですけどね。どうせ名古屋スルーで、下手すりゃ東京のみでしかも平日開催でしょ、と。

Harem ScaremやFair Warningクラスであれば、まだ大阪や東京や川崎での土曜日公演にも希望が持てるんですけどね。

それが蓋を開けてみれば、東京と大阪の二公演で、そのうち東京はまさかの土曜日開催と、嬉しい誤算でした。これは行くっきゃねぇ。

ライブ開催時期的に、大寒波とかち合って首都圏の交通網がマヒ、というのが想像しうる最悪のシナリオだったんですけど、スキー場が雪不足を嘆くほどの暖冬のおかげで、杞憂に終わりました。

それにしても、HOKUO LOUD NIGHT 2018に出演後のH.E.R.O.の勢いは、とんでもないですね。

Slashのサポートに抜擢、念願のアルバムデビュー、五大都市来日プロモーション敢行、シングルがラジオ各局でパワープレイ、まだアルバム一枚しか出していないのに単独来日公演決定、その公演日の直前に2ndアルバム『Bad Blood』のリリースも決定。

シンデレラかな。

会場は代官山のSPACE ODD

代官山というよりは渋谷駅にほど近い住宅街のど真ん中に、その会場SPACE ODDはありました。壁がレンガ造りだったり、ロゴに間接スポットが当たっていたりと、場所柄かおしゃれな会場でした。

ライブ前の寄り道が響いて、開演30分前に会場に着いたんですけど、まだ入場途中で、しかも外に並んでめちゃくちゃ待っていたので、驚きました。さすが、東京の土曜日公演。

私が入場したときで、200番まで案内していたので、観客は300人ほどでしょうか。

チケットを発券したときは、その整理番号の若さから大丈夫かなと心配していたのですが、余計なお世話だったようです。

ロッカーに上着を押し込んでTシャツを着てフロアに降りると、すでに結構いっぱいで面食らいました。まあそうですよね、すでに200人近く入ってるんですから。六本木の隠れ家カフェで微睡んでいる場合ではなかった…。

前の人の背が高くて思うようにステージが見えず、ちょっと場所取りミスったなぁと凹みながら、ビールを飲んで開演を待つのでした。

いざ開演、H.E.R.O.のライブ

18時過ぎ、予定時刻をやや過ぎたところでステージが暗転し、ついにH.E.R.O.のライブが幕を開けました。

まだアルバム一枚しか出していない段階での単独公演ということで、普通にやったら尺が足りないのは明らかなので、2ndからの新曲を数曲お披露目と、自身のルーツ的な楽曲を何曲かカバーして、それでなんとか15,6曲ほどのセットリストを組むのかな、と予想していたんですけど、そんな浅い予想は完全に裏切られました。

2ndからは、先行シングル”Avalanche”のみ。カバー曲も無し。すべて自分たちの楽曲。

それでいて、よくあるヴォーカルがアコースティック弾き語りの間にリズム隊は休憩とか、リズム隊のジャムセッションの間にヴォーカルは休憩とかも無し。メンバーみんな出ずっぱり。いいですね。みなぎるやる気、あふれる男気を感じます。

MCが長すぎたり、アコースティックセットを設けたりも無し。かといって喋らないというわけでもなく、淡々としすぎず中だるみもせず。声もよく出ていましたね。存在感のある美しいハイトーン。ライブの重低音にも埋もれずにストレートに飛んでくる。

アコースティックセットがなかったのは、寂しく感じた人もいたでしょうね。バンドのフレンドリーさを直に感じられるひと幕なので。声がいいので、アコースティックとの相性の良さはたやすく想像できますしね。

自分はできればオリジナルに近い、かといってアルバム音源そのままではないライブならではのアレンジが聴きたいので、アルバム音源の再現性は高めながらも、ライブならではの味付けも感じられた今回のステージ進行は、大歓迎の流れでした。歌詞をちょっといじって観衆を沸かせたりとかですね。

Slashのサポートの際のライブ動画が公式YouTubeに上がっているんですけど、そのときはステージ上のアクションはあまりなくて、音源に忠実な再現を目指している印象を受けたんですけど、近年まれに見る勢いでキャリアを駆け上がった中で変革があったのか、動きが出てきて聴衆を惹きつけるステージングに進化していました。

今後、ライブを重ねて、どんどんかっこいいバンドになっていくんでしょうね。

うまく行けば、年内の再来日も全然ありますよね。楽しみですよねぇ。まずは4月に発売される2ndアルバム『Bad Blood』を心待ちに、H.E.R.O.からのさらなる吉報を待ちます。

一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるロックの名盤

先日刊行されました、大好きな漫画である『BLUE GIANT SUPREME』9巻の中に、こんなセリフが出てきます。

「NUMBER FIVE」は、曲を追うごとに熱量が上がります。そこには一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるんです。

『BLUE GIANT SUPREME』9巻より

主人公・宮本大がヨーロッパで初めて組んだバンド、NUMBER FIVE。そのバンドのデビュー・アルバムの録音に携わったレコーディング・エンジニアから、バンドに対してのある無茶とも言える提案を通すにあたっての、説得材料です。

このセリフは、すっと違和感なく胸に染み込んできました。確かに。

音楽アルバムの中には、聴く人それぞれの好みに左右されて、好きな曲に嫌いな曲、イマイチな曲、なんにも引っかからない曲、大好きな曲と、たとえ大好きなバンドの曲でも色々と出て来ちゃうんですけど、ランダムで聴いてるとスキップしちゃう曲でも、アルバムの曲順通りだと不思議と飛ばす気にならずに聴けちゃったりもするわけで。

アルバムを通してのストーリー性というかドラマ性というか、無視できないそういった流れは確かにあるよなぁ、と腑に落ちました。

いくら好きな曲でも、ランダムで聴いていると、なんとなく気分じゃなかったり、雰囲気にそぐわないなと感じたら、飛ばしちゃうこともありますからね。

ヒット・シングルを網羅したベスト・アルバムは、収録曲ひとつひとつをとってみればとても魅力的なんですけど、野球で例えると四番打者ばっかり並べているナインみたいなもので、繋がりとか流れは希薄ですよね。

ベスト・アルバムにはベスト・アルバムで魅力もありますけど、オリジナル・アルバムにはそこでしか聴けない、なにか特別な魅力があります。

画像はPixabayより

一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるロック・アルバム

私は普段、洋楽ロックが好きで愛聴しているんですけど、好きなアルバムのことを考えてみると、やっぱりあるんですよね。曲順通りの流れが生み出している起伏が、しっくりと耳に馴染んでくる感覚が。

これが、ストーリー性やドラマってことなんだろうな、と解釈しています。

好きな曲って、ただその一曲を聴くだけでもいいんですけど、アルバムの流れを通して聴くとまたひと味違う感銘があるんですよねぇ。

そんなわけで、私が大好きな洋楽ロックの名盤の中でも、特にストーリー性やドラマを感じるアルバムを挙げていきます。

Fair Warning 『Go!』

ドイツ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Fair Warningの三枚目のアルバム。デビューから二枚立て続けに傑作をリリースしていたんですけど、この三枚目で大化けを果たしました。

アルバムの序盤が特に強烈で、カタパルトに射出されたジェットコースターのようなめくるめくメロディが堪能できます。

再発盤にはボーナス・トラックが山盛り追加されていて、お得っちゃお得なんですけど、思いっきり蛇足になってしまっているので、オリジナル盤で聴きたい。

Harem Scarem 『Mood Swings』

カナダ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Harem Scaremの二枚目のアルバム。デビュー作も原石のような魅力が散りばめられた傑作でしたが、この二枚目で緻密な音作りと彩り豊かな編曲を披露して、度肝を抜きました。

きらびやかでありながら重厚なサウンドは見事ですし、捻りの効いたメロディを畳み掛けてくる展開も強烈ですし、個性豊かな楽曲たちが一枚のアルバムとしてまとまっている構成も素晴らしい。

My Chemical Romance 『The Black Parade』

先日再結成を発表したアメリカ出身のロック・バンド、My Chemical Romanceのメジャー二作目にして、全世界で大ブレイクを果たした傑作。

前作で披露した、狂気と紙一重の激情を残しつつも、より洗練されたサウンドとメロディが素晴らしい。考え抜かれたアルバム構成により、アルバム全13曲で一曲となっているような、絶妙の流れが秀逸。

Elliot Minor 『Elliot Minor』

アメリカ出身のロック・バンド、Elliot Minorのデビュー・アルバム。ゴージャスなサウンドといい分厚いハーモニーといい、これがデビュー作とは信じがたい完成度。

おしゃれな音なのに小綺麗にまとまってなくて、ファンクっぽさを感じさせるテンションの高いロックを披露しています。このバランス感覚は凄まじいですね。

激流下りで転覆寸前のスリルに翻弄された、そんな気分が味わえる一枚。

Mae 『The Everglow』

CCMロック・バンド、Maeの二作目。前作とこの次のアルバムからしたら、突然変異としか思えない傑作。バンドに一体何が起こったのでしょうか。

コンセプト・アルバムのようで、プロローグから始まりエピローグで終わる、という構成になっています。美しくもダイナミックなメロディの連続が生み出す豊かな起伏は、山奥の神秘的な渓流のようです。