Night Travelerが紡ぐ穏やかで優しいメロディが素晴らしい
かつて、これほど夜に似合う音楽があっただろうか。
思わずそんな感傷的なことをひとりつぶやいて遠くを見てしまうほど、Night Travelerの音楽は夜にハマります。
これはもう、彼ら自身が確信的に狙っている戦略でしょう。そのことは、バンド名だけでなく、YouTubeでの彼らのアイコンが夜の街を背景にしていたり、EPのアートカバーが夜の路地裏っぽかったり、MVが夜や暗い落ち着いたトーンの中で撮られていることからも、明らかです。
心にそっと優しく寄り添ってくるような、見え透いていないさりげない気遣いに嬉しさを感じるというか、派手さはないんですけどただそこにあるだけでありがたさを覚えるような、生活に疲れた身体に染みてくる音楽です。
YouTubeの概要欄には歌詞が載っているだけで、奏者などのクレジットがないので詳細がわからないんですけど、MVの映像から判断するに、ヴォーカル兼ギターの二人組ユニットにリズム隊がサポートしているか、四人組のバンド形態かのどちらだと思われます。アイコンはふたりのシルエットになっているので、二人組の可能性のほうが高いでしょうね。
そんな彼らの音楽には、わかりやすい派手さこそありませんが、かといってメロディラインが平坦でつまらないなんてことは一切なく、あっさりしつつも芯のあるリズムが、穏やかに語りかけてくるような歌声と、粒立ちが美しいギターのトーンを引き立てています。絶妙。
ヴォーカルはふたりで交互に歌っているようで、どちらも声量や技巧で圧倒するタイプではないですが、音楽性とのマッチングにおいて唯一無二の歌声です。Night Travelerの音楽性が不変である限り、シンガーは彼らにしか務まらないでしょう。
ギターも、ふたりとも実は超絶テクニックを持ち合わせながら、あえて抑えて丁寧に美しいトーンを響かせているプレイなのかな、という印象ですが、極上の余韻に酔いしれます。徹した仕事が心憎すぎる。
彼らの音楽を聴いていると、無性に夜のドライブに繰り出したくなります。遅すぎず早すぎず、ちょうどいい速度で愛車を流しながら彼らの音楽を聴けば、ここではないどこかにワープできるんじゃないか、そんな期待すら抱いてしまいます。
郷愁を誘うリズムが切々と刻まれていて、心に訴えかけてくるんですよね。
人肌恋しくて寂しくて切なくてたまんない深夜にうっかり聴いちゃったら、涙が止まらなくなっちゃうんじゃないでしょうか。