映画『グレイテスト・ショーマン』を観たら、感動と煩悶で板挟みになってしまった

映画『グレイテスト・ショーマン』を観たら、感動と煩悶で板挟みになってしまった

YouTubeのおすすめに映画『グレイテスト・ショーマン』の撮影開始直前のワークショップの模様を収録した動画が上がってきて、そういえばこの映画話題になったけどまだ観てなかったなと興味半分でクリックしてみたら、めちゃくちゃソウルフルな熱い曲を絶叫するようにメインキャストたちが合唱してて(何だこれ、凄いな。『天使にラブ・ソングを』を観た時に似た感動がこみ上げてくるぞ…)と度肝を抜かれた私は最寄りのツタヤに走り、Blu-rayを借りてきました。

早速ソフトをプレイヤーに投入して視聴開始したのですが、のっけから掴みが凄まじく、圧倒されました。

このオープニングはすごいな…。『ボヘミアン・ラプソディ』の”Somebody To Love”に匹敵するかもしれない…。

早くも興奮を覚えながらもそんなことを考えてるそばから物語はテンポよくずんずん進み、次から次へと感動的な神曲が流れてきます。既発のヒット曲に頼らずに、映画のためのオリジナル曲ばっかりでこのクオリティはとんでもないな…。

少々(んん?)と疑問に感じるところもあったのですが、曲の素晴らしさにとりあえず些事は流して感動に打ち震えていました。

ここまでは良かったんですよ。問題はここからです。

胸一杯の感動に大満足の私は続けて二回目を視聴したのですが、そこで初回時にとりあえずスルーして打ち捨てていた些事が妙に気になり引っかかり、胸に残るしこりがどんどん大きくなっていったのです。

(これは…いいのか…?いや、いかんでしょ。でも曲は本当に圧倒的に素晴らしいんだよなぁ。でもなぁ。この展開はどうなんだろう…?しかしこの楽曲群はほんと凄まじいな…)

交互に押し寄せる感動と煩悶に、板挟み状態になってしまいました。

なぜこんなにも悩み悶えるのか。

似てるんですよね。

この前年に公開されたアニメーション音楽映画『シング』に。

『グレイテスト・ショーマン』の主人公P.T.バーナムは実在の人物で、『シング』の主人公バスター・ムーンのモデルもそのP.T.バーナムらしいので、ある程度似かよるのは当然かも知れませんが、それにしてもというくらい似てるのです。

初めて観たときは(なんか似てるなぁ…)程度だったんですけど、二回目はストーリーの流れから場面場面から(やけに似てるなぁ…)と事あるごとに引っかかりました。

それと同じくらい、(まあまあ、ストーリーが多少似てるとかそんな細かいことどうでもいいじゃない)といわんばかりに超名曲が続々と流れてきて一瞬忘れさせられては、曲が途切れるたびにいちいち引っかかり、曲が流れ出すとまた些事など忘れて。

振り幅がデカすぎて、整理がつかなくてわけがわからなくなっています…。

初めて観たときは『シング』が大好きな人にはたまらない映画だろうと思いましたが、二回目を観たら『シング』が大好きな人には逆に受け入れられないかもしれないと思い直したり。

劇中歌は最近のPanic! At The Discoに近い雰囲気があるので、Panic! At The Discoが好きなら間違いなく感動するでしょう。ひょっとしたらライブでもないのに泣くかもしれないくらい感動的な歌ばかりです。

未だ混乱が収まらず自分の中で上手く折り合いがついていませんが、このサントラに収められた名曲群と出会えたことには心から感謝しています。

『シング』を観る前に映画館の音響で観たかったなぁ…。

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映画『ブレット・トレイン』を観たらどこかがおかしい日本だらけだったんだけど、超面白かったので不問に付す

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去年の夏頃でしたかね。伊坂幸太郎の長編小説『マリアビートル』がハリウッドで実写映画化されるというニュースを知ったのは。

私は基本的に小説や漫画の実写映画化ドラマ化を嫌悪していて、それが好きな作家や好きな作品ともなればその傾向がより顕著になるというめんどくさい性格をしているんですけど、伊坂幸太郎はトップ5に入るくらい好きな作家なので、このニュースを初めて見たときは顔をしかめました。舌打ちもしていたかもしれません。

しかしその一方で、漫画ならまだしも日本の小説がハリウッドで実写映画化とはすげぇな、夢のあるスケールのでかい話だな、とも思っていました。

しかも監督がデヴィッド・リーチ、主演がブラッド・ピットですからね。こんな話もあるんだな、と。

デヴィッド・リーチ監督といえば『アトミック・ブロンド』や『ワイルド・スピード スーパーコンボ』、『ジョン・ウィック』などのアクション大作の監督として有名で自分もそれらの映画は好きですし、ブラッド・ピットといえばハリウッドを代表するスターでこちらも主演作はDVDを買っちゃうくらい好きな作品ばかりと、自分の中では外れる確率が極めて低い鉄板中の鉄板の組み合わせですからね。

基本的に実写化は好かん。好かんけども。この組み合わせなら、もしかしたら…。超大好きか、超大っ嫌いか、どっちかだろうな…。

大きな不安とかすかな期待を胸に映画館へと向かったのでした。

結果、映画『ブレット・トレイン』を観た私は、のっけから困惑するはめになりました。

というのも、事前情報を知らずにいきなり主要人物のひとりである木村を見たら、Nothing To DeclareというロックバンドのヴォーカリストであるMas Kimuraさんにしか見えずに(え?えぇ?ちょ、待って…)と整理が追いつかずに戸惑っている間にも物語が容赦なく走り出し、冒頭で乗り遅れてしまったからです。

過去記事

Nothing To Declareは超かっこいいオルタナティブ・ロックを鳴らしている超おすすめの邦ロックバンドです。AnberlinやQuietdriveやNational Productなどが好きな人に特におすすめ。

上の画像左が木村役のAndrew Kojiさん、右がMas Kimuraさんです。生き別れた双子の兄弟ですか?と聞きたくなるくらい似てるんですよ。戸惑って待ったをかけたくなるのも致し方ないでしょう。

そんなこんなで、これ以上置いていかれるわけにはいかないと、とりあえず理解を後回しにしてあるがままに映画を楽しもうと気を取り直したのが功を奏したのか、次から次へと振る舞われるどこかがおかしい日本の乱舞に心のなかで(いやいや、おかしいだろ!)と突っ込みながらも、大ウケしながら観れました。

一番面白かったのは、人外魔境のような朝霧が立ち込める米原駅ですね。今度大阪に行く用事があるんですけど、そのついでに朝イチの米原駅の様子を確認したくなっているくらい、異様にかっこいいです。

朝イチの米原駅を確認するためだけに早く家を出ると、大阪に着くのがいくらなんでも早すぎるのでちょっと迷っていますが…。あと近鉄の特急ひのとり号に乗ってみたいって気持ちもあるんですよね。B’zが好きなだけに。

事前に映画『ザ・ロストシティ』を観ておくとテンションがぶち上がったり笑えたりするシーンがあるのでおすすめです。後からだと先にネタが割れちゃうので、面白みが半減するかと。

新幹線の車内というシチェーションを活かしたすれ違いや格闘も面白ければ、登場人物のキャラが立ちまくってて愛おしくなっちゃうところやハチャメチャなラストにひと捻りがあるところにも伊坂幸太郎風味が感じられて、嬉しくなりましたし大満足でした。

ミカンとレモンを主役に前日譚、レディバグ対カーバーで続編を作って欲しいくらい大好きです。

あとネオンで縁取りしたようなフォントもカッコよかったですね。ディスプレイオーディオのフォントがダサいとケチをつけたくなっちゃうくらいフォントには目がないので。

エンドロール最高でした…。

エンドロールといえば、劇中の挿入歌としても使われた”Kill Me Pretty”というバチバチにカッコいいロックチューンが流れてくるんですけど、後から調べたら歌っていたのが奥田民生と知って想像の斜め上だったのでびっくりしました。

日本人ぽくも聞こえるけど海外のロックバンドの曲だろうなと思っていたので…。

二回目観にいったら、エンドロールが流れはじめた途端にほとんどの人がぞろぞろと退席していってしまったので、こんなカッコいい曲とともに余韻に浸れる楽しいエンドロールが流れても出ていく人は出ていくんだな、とちょっと切なくなりました。

予告で映画の代名詞的な曲として使われていた”Stayin’ Alive”も素晴らしかったですね。てっきりオリジナルかと思ってたらカバーと知ってこれにも驚きました。

世の中ではネタバレは悪とされているけど、一概にそうとは言い切れないところもある

世の中ではネタバレは悪とされているけど、一概にそうとは言い切れないところもある

ネタバレは悪。諸悪の根源。なにが何でも回避すべきこと。

それが、世間一般的な認識だと思います。

自分も基本的にはその立ち位置です。ネタバレは回避すべし。

これから読むミステリー小説の内容とか、これから観るライブのセットリストとか、もうじき公開される新作映画の内容とか、残業になって観れなかったサッカー日本代表の試合の結果とか。

うっかり目にしてしまったらそのときはもうしょうがないと諦めてもいますが、できるだけ目にせずに済むように気を配っているのも事実です。

しかし昨夜、本当にネタバレはすべて悪だと言い切れるのだろうか、一概にそうだとは言い切れないのではないか、と自分の足場が崩壊しかねない疑念を抱いてしまいました。

映画『シング:ネクストステージ』のBlu-rayを観ていたときのことです。

「コアラ・ジ・エンド」

映画の中盤で、ポーシャを怒らせてしまったムーンが項垂れながらつぶやくセリフに、シャレが効いてて最高だなと私はニヤニヤしました。

では映画館で初鑑賞したときはどうだったかというと、ポーシャ役の日本語吹き替えを誰が担当しているのか知らずに観ていたので、そのセリフの面白さと意味がまったくわかっていませんでした。

ポーシャ役の日本語吹き替えを誰が演じているのか知っているのといないのとでは、そのたったひと言のセリフの面白さが全然違ってくるのです。

こういうこともあるのか…。目が覚めたというか、新たな世界があることを知ったような思いです。

知らずに観たほうが面白いこともあれば、知っていたほうがその真の意味がわかって面白いと感じられることもある。

どうやらそういうことのようです。

そして、この『シング:ネクストステージ』には、知っている人だけが楽しめる小ネタがまだまだ隠されていそうです。

というのも、ムーンたちが劇場に忍び込むときに清掃員に扮したり、ムーンに君たちは誰?と聞かれて「夜間清掃員です」と答えたり、これってもともとそういうふうに映画が作られていたということもありますけど、ポーシャ役にBiSH(ファンのことを清掃員と呼んでいるそうです)で活動しているアイナ・ジ・エンドを配したことで、遊び心と作り込みが生まれているんですよね。

自分が無知のため気がつけていないだけで、他にも遊び心や仕掛けが隠されているかもしれません。

知らないとただそれだけで何事もなく過ぎていきますが、知っていると気がつけて面白がれたりもっと探してみようと意欲的になったりと、その世界の深さを知ってさらにのめり込むきっかけになりえるんですよね。

自分で調べてそこに辿り着けるのであれば余計なお世話ですけど、そういう人ばかりではないですからね。細やかな解説やネタバレに助かる人もいるでしょう。

決してネタバレの肩を持つわけじゃありませんけど、ネタバレも一概に悪とは言い切れないのではないか、そんなことを考えてしまった真夏の夜の出来事でした。

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バンドやアーティストの伝記映画の良し悪し

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イギリスのロックバンドQueenの結成からLive Aid出演までを振り返った伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットでその流れにあやかろうという風潮が生まれたのか、その後何本かの伝記映画やミュージカル映画が制作、公開されて私も実際に劇場に観に行きました。

a-haの『a-ha THE MOVIE』やAretha Franklinの『リスペクト』、Elvis Presleyの『エルヴィス』に、Elton Johnの『ロケットマン』など。

他にも、Netflix限定配信なども含めると、未加入のため自分は観れていませんがMotley Crueの『The Dirt』やTaylor Swiftのドキュメンタリーなども話題になりましたね。

そんな伝記映画のひとつに、この冬『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』が仲間入りします。

https://amass.jp/159880/

Whitney Houstonというと、ケビン・コスナーと共演した映画『ボディガード』とその主題歌”I Will Always Love You”のメガヒットが代表曲、代表作としてイメージが確立されていると思いますが、今度の伝記映画のタイトルにも採用されているような80年代ダンスポップスも歌っています。

バラードばっかりじゃなくてこういうタイプのポップスも歌っているのかと、新鮮な驚きを感じる人もいるんじゃないでしょうか。

映画の内容は”Whitneyの名曲誕生の裏に隠された、Whitneyと彼女を支えた音楽プロデューサーClive Davisの知られざる物語を描きます”と紹介されていますが、たったこの一文だけで曲がりなりにも何本か伝記映画を観てきた自分には察しがついてしまいます。

ああ、なるほど、家族や制作陣との間に生まれる苦悩や成功への喜びに満ちた道のり、栄光とそこからの転落やいざこざ、苦渋の決断などが描かれているのですね、わかります、と。

だってそうでしたもん。全部そうでしたもん。細かなところは全然違えど、大まかな流れは全部一緒でしたもん。

苦労が報われて成功へと上り詰めていく過程は良いんですよ。こっちも幸せな気分になりますし。でも、生活が荒んで身を持ち崩したり家庭での問題や制作陣との軋轢がじわじわキツイんですよね。胃がキリキリ痛んでしんどいというか。

上手く行かなくなって酒に溺れたり、クスリに逃げたり、浮気に走ったり、そんな自分が嫌になってさめざめ泣いたり、歌から距離を置くも結局戻ってきてしがみついたりもがき苦しんだり、再出発がなかなか軌道に乗らなくて荒れたり、そうなるってだいたい相場は決まってるんですよ。

いや〜重い、この流れは重すぎますって。後生ですから…と手を合わせたくなってしまいます。

映画館の素晴らしい音響で大好きな名曲が聴けるのはアツいんですけどね。

その代償が一見華やかに見えるエンターテイメント世界の裏側での孤独な苦悩というのが、なんかいたたまれなく感じちゃうんですよね…。

ダメ?そこに触れなきゃダメ?スルー無理?ダメか…と全身がどっと重くなってしまうのです…。

まあ、なんだかんだいいながら観に行くんですけどね。映画館の音響で名曲を聴きたくて。

音楽系の映画は空いてることが多くて贅沢感が増し増しになるのがまたいいんですよね。特別感に浸れて。

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映画『X エックス』のレイトショーでTOHOシネマズのプレミアスクリーンの実力を見せてもらってきた

映画『X エックス』のレイトショーでTOHOシネマズのプレミアスクリーンの実力を見せてもらってきた

最初は、観るつもりありませんでした。タイトルだけ見て、まったく引っかからずにスルーする気満々でした。

だって意味分かんないじゃないですか。『X エックス』て。

それが予告を見てみたらタランティーノの『デス・プルーフ』風のエロチック・サスペンス・ホラー仕立てに仕上がっていそうで面白そうだなと感じたので、観てみることにしました。

公開している近隣の劇場の上映スケジュールを見ていたらTOHOシネマズのプレミアスクリーンでの上映があったので、プレミアスクリーンはまだ一度も入ったことないんだよな、こりゃちょうどいい、見せてもらおうかプレミアスクリーンの実力とやらを、と突撃してきました。

予告編を見て抱いた印象のとおり、『デス・プルーフ』に通じる仕立てのホラー・サスペンスでした。前半で丁寧に若者たちの専横と欲望が積み重ねられ。後半でタガが外れたように虐殺ショーが始まって。

身の毛もよだつほどおぞましい映像を見ましたが、それと同じくらい目の保養になる映像も見ました。

特に裸オーバーオールはヤバかったですね。裸エプロンと同じくらいの市民権を得るのも時間の問題なのではないか、と愚考するほどの抜群の破壊力でした。

TOHOシネマズの音響はやっぱり素晴らしかったですね。

指が肌を滑る音とか、ささやき声が空間を漂う様子とか。アコースティックギターを爪弾く音がポップコーンのように小気味よく弾けたかと思えば、横のおっさんケータイの音切り忘れてんのかと思うくらいすぐ真横から効果音が聞こえてきたり。

音の質感がとにかくリアルで、ホラーやサスペンスとの相性が抜群の音響です。

今まで基本的に新作映画は特に何も考えずに会員カードを作ったユナイテッド・シネマ(IMAXや4DXもありますし…)に行ってましたけど、考え直さないといけませんね。ホラーやサスペンスを観るならまずTOHOシネマズを候補に考えるべきですし、少しでも良い音で観たいミュージカル系なども当然そうするべきでしょう。

TOHOシネマズの会員カードも作るか…。

ところで、肝心のプレミアスクリーンの実力ですが、映画を観終わって24時間以上も経ってようやく、その半分も把握できていなかったと知りました。

全席リクライニングシートってマジですか…。サイドテーブル付きのリッチで幅広のシートで前後のスペースもちょっと広くて良いねとか思ってたら、リクライニングのために広かったんですね…。

いやでも、周りの人も誰もシート倒してなかったんですよね。そもそもリクライニングシートだということが知られていないのか、周りの全員がシートは別に倒さなくてもそれがベストポジションだったのか。

リクライニングシートだったら、最前列で最大に倒して寝そべりながら映画を観るのもいいですよねぇ。後ろに誰もいなければですけど。

リベンジ案件にひとつ追加されました。