Harem Scaremの『Change The World』を聴いた感想

Harem Scaremの『Change The World』を聴いた感想

カナダ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Harem Scaremの最新作、『Change The World』を、Amazonで予約購入しました。

ダウンロード配信は予定通り開始されたのに対して、国内盤CDの発売は数週間遅れたので、サブスク派の視聴報告や感想を目にしては、「ぐぬぬ」と歯噛みしておりました。予約注文したCDキャンセルして、ダウンロード購入しちゃおうか。いやいや、ここはグッと我慢だ。

そんなこともあって、Frontiers Musicの公式YouTubeチャンネル上で先行公開されていた新曲三曲が素晴らしかったので、発売日を首を長くして待っていたわけなんですけど、プライム会員ではないので数日遅れで届くんだろうなと予想していたら、何故かフラゲ日に届いた謎。まあ一日でも早く聴けるのは嬉しいので、否やもないのですが。

新曲がYouTubeで先行公開される前に、まずタイトルが発表されたと記憶しているんですけど、そこで新作のタイトルが『Change The World』と知って、それだけで新作もまた名作に違いないと確信しました。

なんせ、”Change The World”という名を冠した曲の名曲率は異常ですからね。Eric Claptonに始まり、Anberlin、Michael Morales、Westlife、This Beautiful Republicなどによる、素晴らしい同名異曲の数々。今回、ここにHarem Scaremが新曲でもって名を連ねる運びとなるわけです。

さて、このタイトルトラック”Change The World”ですが、二番が終わってピートの流麗なギターソロを堪能し、さあこれからラストのサビで大円団、という段になって、急に優しげで美麗な歌声が割り込んできて、「何だ何だ、誰だ?」となるんですけど、これがまさかのTony Harnellで二度びっくりですよ。

Tony Harnellのバッキング・ヴォーカルが、めちゃくちゃいいアクセントになっていて、聴いていてめちゃくちゃ気持ちいいのです。私が大っ嫌いなFeaturing~がクレジットされちゃっても構わないから、一曲丸々Tony Harnellとツイン・リード・ヴォーカルを録ってほしかった、と所望したくなる、至福のラスト一分。

はぁ、幸せ。初っ端のこの一曲で早くも幸福を噛み締めているわけですけど、まだまだ早いよと言わんばかりに、このあとも名曲が続々と流れてくるんですよ。発売前からの期待と確信を裏切らない名盤です。

ひとつだけ、強いて、残念な点を挙げるとするならば、”Mandy”や”Baby With A Nail Gun”、”See Saw”のような、弾きまくりのピートが堪能できるギターインストがなかった、ということくらい。

それにしたって、各楽曲で、ピート節たっぷりの、同じフレーズを繰り返しながら階調を上げて駆け上ってゆく秀麗なギターソロが収められているので、減点とか不満ではなくて、それでもあえて挙げるとするならば、というレベルの無い物ねだりです。

再結成後、2014年の『Thirteen』に2017年の『United』と、立て続けに名盤を送り出してきたHarem Scaremですけど、三作続けての名盤リリースですよ。

この絶好調ぶり、一体バンドに何が起こったのでしょうか。一旦解散していた時期に、何かを掴んだのでしょうか。再結成後の曲のみの縛りで、来日公演を企画してもらいたいくらいの充実度です。

今は新型ウイルスの蔓延で先行きの見えない情勢ですけど、一刻も早くこの事態が終息へと向かって、バンドから嬉しいニュースが発表されますようにと、そう願うばかりです。

B’zのBlu-ray『LIVE-GYM 2019 Whole Lotta NEW LOVE』を観た感想

B’zのBlu-ray『LIVE-GYM 2019 Whole Lotta NEW LOVE』を観た感想

2020年2月26日、B’zの日に、2019年に開催されたアルバムツアー、『LIVE-GYM 2019 Whole Lotta NEW LOVE』のライブ映像ディスクが発売されたので、地元のCD屋さんで買ってきました。

このディスクには、2019年7月31日のさいたまスーパーアリーナでの公演の模様を完全収録に加え、ボーナスとして、その前日に披露された三曲の日替わり曲と、ツアーダイジェスト映像があてられた”兵、走る”の計四曲が追加収録されています。

今回のツアーでの最大のトピックは、なんといっても長年の付き合いの阿吽の呼吸のサポートメンバーの一新、これに尽きるでしょう。

まず最初にTwitterのタイムラインでその情報を見たんですけど、公式で確認するまで、絶対ガセネタだと思ってましたからね。信じられなかったですし、衝撃でした。

自分は『MAGIC』のツアーからLIVE-GYMに行くようになったんで、30周年ツアーのHINOTORIまでずっとあのサポートメンバーでしたから、もはやサポートというよりも準メンバーという感覚を抱いていましたし。

おふたりも、そういったところに危機感を覚えたのかもしれません。

馴れ合いやなあなあのつもりはなくとも、気心の知れたいつものメンバーに、知らず知らず甘えてしまっている自分たちに気が付がついて、なんとかしなければならない、と思い至ったのでしょう。

マンネリを打破し、新しい刺激でもってB’zをアップデートする、そんな覚悟での、サポートメンバー一新だったに違いありません。

LIVE-GYM 2019は、6月8日からスタートして9月10日に終わっているので、今回収録されたさいたまスーパーアリーナ公演は、ツアーのちょうど中盤になります。

新メンバーの暗中模索の手探り状態から始まったツアーが、回数を重ねるたびにお互いの理解が深まり、バンドがどんどん出来上がっていっている様子が収められています。

恐るべき仕上がりの早さですよ。メンバー一新して一本目のツアーの中盤とは、にわかには信じがたいステージ進行です。ツアー開始前のリハーサルの段階から、相当追い込んでいたんでしょうね。

あと、メンバーの変化が音に現れているのを直に感じられて、奏者が変われば音も変わるって本当だったんだな、と興味深かったですね。

特に顕著だったのがベースですね。Mohini Dey。タッピングやスラップなどの派手な技巧もさることながら、5弦ベースだからなのか、階調と表情の多彩な、この目で見てもベースとは信じがたい音色には驚かされました。まるで、キーボードやオルガンのソロのような音色に聴こえる瞬間があるんですよね。

私は7月上旬に大阪城ホールで開催された1000回記念公演を観に行ったんですけど、その時と今回収録されたさいたま公演での大きな違いといえば、新曲”きみとなら”の追加でしょう。

これがまた、良い曲なんですよねぇ。ドラマ主題歌採用も納得の仕上がりです。心が温かくなるような、ピュアで前向きなメロディがたまりません。

次のアルバムの目玉曲でしょうかね。アルバム収録を見送るのであれば、配信限定でもいいのでリリースをお願いしたいところ。

今回のツアーは、B’zにしては比較的小さな会場での公演が多かったためか、代名詞ともいえるド派手なステージ演出は控え目だったんですけど、それがまた楽曲を全身で浴びることに集中できて、良かったです。

ドームや野外スタジアムの迫力もいいんですけど、アリーナ公演には、それとはまたひと味違った魅力があります。

それにつけても、近年のB’zの楽曲の充実は目を瞠るものがありますね。

個人的には、青春時代に聴きまくっていた、『RISKY』から『SURVIVE』の頃の、いわゆる黄金期のデビュー10周年までが、思い入れもあって一番好きな時代なんですけど、その頃の名曲、名作ともタメを張れる充実の楽曲群は圧巻です。

前作『DINOSAUR』も粒ぞろいでしたけど、今作『NEW LOVE』もそれに負けず劣らずの力作。

30周年を過ぎて、普通ならこれでひと区切りと落ち着くところを、周囲の予想を良い方向に裏切って前を向いて突き進む、その姿勢には頭が下がります。

正直なところ、ずっと聴き続けていたわけではなくて、一時心が離れていた時期もあったんですけど、B’zが好きで良かった、戻ってこれて良かった、心からそう思うばかりであります。

再結成後のHarem Scaremには、神が降りている

再結成後のHarem Scaremの楽曲の完成度の高さは異常

再結成後のHarem Scarem、楽曲完成度高すぎじゃないですか?

まあ、初っ端からこんなこと書いておきながら、再結成後のアルバムを買い集めだしたのは2014年の『Thirteen』からで、その前年の『Mood Swings Ⅱ』はスルーしちゃってたんですけども。

発売当時、試聴してみたらアレンジがほとんどオリジナルと同じだったんで、それなら買わないでいいか、という判断だったのです。まさか、追加収録の新曲三曲が全部いいとは、夢にも思わず。

ベストとか再発盤に追加収録されたりする新曲って、お察しな出来であることがほとんどじゃないですか。経験を積むと、行動に移す前にその結果を予測して、悪そうだったら回避を試みるんですけど、それが裏目に出ちゃいましたね。

そんな『Mood Swings Ⅱ』に続けてリリースされた、2014年の『Thirteen』、2017年の『United』、この二枚のアルバムの出来がまた出色だったんですよね。

再結成後のアルバムって、ネガな部分が悪目立ちしてしまうというか、聴く側も必要以上にシビアな見方をしてしまうところがありますよね。冷ややかというか。斜めに見てしまうというか。素直になれないというか。

三枚目以降から一旦解散まで、Harem Scaremは初期二枚の幻想に囚われて、良質な作品を発表し続けながらも試行錯誤や迷走を繰り返し、それでもなんとか着地点を見つけようともがき苦しんでいたんですけど、一旦解散したことでうまく区切りをつけることができたのか、再結成後の楽曲は、過去のあれやこれやを吹っ切ってのびのびしている感じでした。

ポジティブというか前向きというか、曲がとにかく魅力的なんですよね。メロディがいいんですよ、わかりやすくて。かといって、シンプルになりすぎずに展開や構成にも凝っていて、聴き応えも十分なんですよね。

再結成後の曲のみの縛りで公演やってほしいくらい、再結成後の曲は素晴らしいです。

そんな彼らの最新作『Change The World』が、最近SpotifyやApple Musicなどで配信開始されました。

私は、発売延期となった国内盤をAmazonで予約注文しているので、視聴報告や感想を見ては「ぐぬぬ」と歯噛みしています。

というのも、YouTubeで先行公開されている公式動画を視聴する限り、新作もまた素晴らしい出来に違いないと確信できるからです。

誘惑が激しいですね。予約注文したCDをキャンセルして、ダウンロード購入しちゃいたい誘惑が。

“High Hopes”がホンダの新型アコードのCM曲に採用されて、Panic! At The Disco熱が再燃した

その曲は、Panic! At The Discoの”High Hopes”

ある日、テレビをつけっぱなしで、テレビから流れてくる音声を聞きながら本を読んでいたら、不意にめちゃくちゃいい曲が耳に飛び込んできて、読書を中断させられました。

え、何この曲、めっちゃいい!

それは、ホンダの新型アコードのCMでした。

https://youtu.be/wLlXRNbW70A

この素敵な曲は何なのか調べてみたところ、Panic! At The Discoの2018年のアルバム『Pray For The Wicked』に収録されている、“High Hopes”という曲だということが判明しました。

誰かと思ったら、Panic! At The Discoだったのか! 

いやぁ、意外でしたね。昔好きだったんですよ。デビューアルバムをタワレコかイケヤ高林店の試聴機でチェックして、気に入って買って帰ったんですけど、二枚目のときになんか違うなと感じて、そこで追いかけるのをやめちゃってたんですよね。

こんな素敵な曲を作って、活動を続けていただなんて、私の目は節穴だったようです。

たまにあるんですよね。買った当初は「あれ、なんか違う、イマイチかも」と感じた曲やアルバムに、何年か経って久しぶりに聴いてみたら「あれ、こんなに良かったっけ?」と驚かされることが。

案外、直感や第一印象にも、当てにならないところがあるんですよねぇ。

自分が感じたことなので、それを鵜呑みにして試しもせずに取捨選択してしまい、宝物に気が付かずにスルーしてしまうことがままあるんですけど、今回は新型アコードのCM曲に採用されたおかげでスルー防止機構が働き、取りこぼさずに済みました。

三枚目と四枚目を最寄りのTSUTAYAで借りてきて、五枚目と六枚目はAmazonに注文かけました。到着が楽しみです。

Fair Warningの七作目『Sundancer』を聴いた感想

Fair Warningの『Sundancer』(2013)を聴いた感想

ドイツのメロディアス・ハードロック・バンド、Fair Warningの七作目のアルバム。このバンドの作品は、初期四作の出来が神がかっていたせいか、五作目以降が過小評価される傾向にあるんですけど、その傾向が特に顕著なのがこの七作目です。

かくいう私も、リリース当時聴いたときには、「うわ、何だこれ、終わった…」と失望し、悲嘆に暮れたものですが、何年後かに落ち着いて改めて聴いてみたら、「あれ? 意外といいぞ? …いや、いいなこれ。なんで当時あんなに落胆したんだろう…」と戸惑いを覚えるほど、評価が一変しました。

確かに、バンドの代表曲と並ぶほど強力なキラーチューンがあるわけではないのですが、ソツなくスキのない、いぶし銀な佳曲が並んでいます。

最初の酷評への罪滅ぼしもあって、再評価が甘くなってしまっている部分もあるかもしれません。それでもやっぱり、過去作と比べて物足りないからといって、駄作と切り捨てるにはあまりにももったいないアルバムですよ。

地元のCD屋さんに、初回限定盤がずっと鎮座しているんですけど、デカすぎて棚から飛び出しているので、売り場に行くたびに毎回目に入ってしまって、誰でもいいから早く買ってくれと訴えかけられているようで切なくなります。うう、なんと不憫な…。

不憫といえば、ライブでの取り扱いの酷さですよね。五作目以降の楽曲の。

バンドも五作目以降の評判の悪さを感じ取っているからなのか、プロモーター側から事前に初期四作を中心としたセットリストを要請されているからなのか、八割方が初期四作からの選曲じゃないでしょうか。いや、下手したら九割か。

ただでさえ寡作でライブ本数も少ないのに、そこで演奏する機会も限られているという苦境。

不遇としかいいようがないのアルバムですよ。結構いい曲揃っているのに…。