Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionの1stアルバム『X Marks The Spot』を聴いた感想

Art Of Illusionは、ともにスウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドであるGrand IllusionのAnders RydholmとWork Of ArtのLars Safsundが手を組んだプロジェクトで、『X Marks The Spot』はそのプロジェクトのデビュー・アルバムです。

日本盤の発売日が2021年の2月3日なので、すでに発売から約一年が経過しようとしています。

今更感半端ないですが、新年2022年が明けてから、部屋でゴロゴロと読書をしながら2021年の新譜を聴き直して振り返っていたら、Art Of Illusionのアルバムに(やっぱり良いなぁ)と聴き入ってしまいました。

数曲で外部ライターが作詞していたりAndersとLarsが共作していますが、ほとんどの楽曲はAndersがひとりで手掛けているので、音楽性は基本的にはGrand Illusionを踏襲した、計算し尽くされた構築美の枠組みの中でキーボードやギターが躍動するメロディアス・ハードロックです。

本作に収録されているリードギターは絶品ですね。曲によってプレイヤーは様々ですが、ときにサスティーンを魅惑的に響かせ、ときに挑発的な速弾きで刺激して。そのツボを知り尽くした音色に思わず(うおぉ、これこれ!)と顔をほころばせたファンも多いでしょう。

Larsの歌声は相変わらず素晴らしいですね。Work Of ArtやLionvilleですでに彼の歌声を聴いている人からしたら言わずもがなのことですが、軽やかで爽やかながらパンチもあるハイトーンは耽美的です。

コーラスワークも素晴らしいですね。Grand Illusionを彷彿とさせる、天高く舞い上がらんばかりのコーラス。最高に気持ちいいです。バック・ヴォーカルにはAndersと長年の付き合いのPer Svenssonが参加し、プロデュースとアレンジもAndersとLarsが共同で手掛けているので、当然といえば当然の帰結でもあります。

また、このプロジェクトの新要素として、歌劇のように振り幅が大きく劇的な展開を見せる曲が飛び出してきたりします。歌劇のような展開というと、多くの人の頭にパッと思い浮かぶのはQueenやRobby Valentineでしょう。

あまり大仰すぎず、あくまでも楽曲を彩るひとつの要素、というバランスの見事なさじ加減なので、あまり派手な演出はちょっと苦手だという人でも身構えずにすんなり聴けると思います。

ボーナストラックの”No Goodbyes”がめちゃくちゃいいので、もしこれから買うのであれば絶対に日本盤がおすすめ。「なぜこの名曲が日本盤のみのボーナストラックなのか意味不明ランキング」を作成したら、トップ10入りは堅いレベルの曲です。

最近は収録曲の別バージョンばっかりで、こういう美味しいボーナストラックがめっきり減ってしまいました。

このプロジェクトでGrand Illusionの存在を知って、遡る人もいるんでしょうね。

Grand Illusionの過去作を掘り下げるのは、未来からのタイムトラベラーにまだ誰の手もついていない鉱山を教えてもらうようなものです。

もう美味しいところはあらかた聴き尽くしたと思っていても、それはたんなる勘違いで、世の中にはまだまだたくさん素晴らしい音楽が眠っていて、掘り起こされるのを今か今かと待ちわびているのです。

Eclipseのデビュー20周年8thアルバム『Wired』は過去最高傑作クラスの名盤

Eclipseのデビュー20周年8thアルバム『Wired』は過去最高傑作クラスの名盤

スウェーデンのメロディアス・ハードロックの雄Eclipseの8thアルバム『Wired』がリリースされました。

アルバムリリースに先駆けて公開されていた三曲がどれも良かったので、相変わらず高品質なアルバムが楽しめそうだと期待していましたが、いざ発売されたアルバムを聴いてみたら、のっけから想像を上回る楽曲群のオンパレードで、度肝を抜かれました。

先行公開された三曲はどれも良かったんですけど、それでもレーベルやバンドに正直先行公開する曲の選択をミスったと思ってますよね、と聞いてみたくなるほど、その他の収録曲の出来が素晴らしかったのです。

デビュー20周年の最新作にして、過去最高傑作でしょう。

アルバム冒頭から中盤にかけても目を瞠るほどの楽曲の充実ぶりなんですけど、中盤でバラードを一曲挟んでからの終盤がさらなる一気呵成の攻勢なのです。自分のバンドだけでなく数多のプロジェクトのアルバム制作に関わっておきながら、衰え知らずどころかさらなる隆盛を迎えようとしているこのクオリティ、Erik Martenssonは化け物か…。

ライブ映えしそうなアグレッシブかつエネルギッシュなサウンド、しかし勢い一辺倒でなく民族音楽的な郷愁や哀切を誘う隠し味、かつてないほど鳴きまくっているように聞こえるギター、オマージュや遊び心を感じさせる仕掛け、どれもが最高です。

前作での来日公演が延期されたまま開催されていない現状ですが、この素晴らしい新作を引っさげての来日公演実現でもって打破してほしい、そう願います。

CDDBに過信は禁物

CDDBに過信は禁物

CDDBって知ってますか?

これはとても便利な機能というかサービスで、私は音楽が好きで今でもCDをよく買っていて、CDを手に入れたそばから音源を圧縮してPCに取り込んでいるんですけど、その際にCDDB上にCDと一致するデータが有れば、アーティスト名やアルバム名、曲名などを自動で入力してくれる、というものになります。

このCDDBにすっかり依存して過信したあまり、曲名の間違いを見逃していたので、ここに記しておきます。

休日の午後、最近手に入れたスウェーデンのAORバンドHoustonの新譜『Ⅳ』を聴き込みながら、ビビッときた曲をTwitterに投稿して共有していたときに、その間違いが発覚しました。

本編ラストを飾る”Into Thin War”という曲を聴いていたときのことです。

(おお、この曲もイントロからビシバシでめっちゃいいな、これも共有しよう)

そう考えて、YouTubeの検索窓に「Houston Into Thin War」と打ち込んでみたら、一曲も引っかからなかったんですよ。Whitney Houstonの曲は出てきたりしたんですけど。

そこで初めて(あれ?なんでだ?おかしいな)と疑問に思って調べてみたら、”Into Thin War”は間違いで、正しくは”Into Thin Air”であった、と判明したというわけです。

取り込むときに、”Into Thin War”ってなんだ?ヘンテコな英語だな、と若干引っかかったものの、それ以上深くは考えずにまあいいかとスルーしてしまいました。

昔は、CDをPCに取り込む前に、曲名などに間違いがないか確認してたんですけどね。その便利さに依存して過信していたあまり、チェックが甘くなっていました。

便利すぎるのも考えものですね。ついつい甘えて流されて、足元がおろそかになってしまいます。

気がついていないだけで、他にも誤入力があるかもしれないですね。なにかの拍子に気がついたら、その都度修正していきます。

しかしHoustonの新譜『Ⅳ』は素晴らしいですね。曲やメロディもいいんですけど、キーボードやギターのサウンド、音色がツボすぎて、サウンドから琴線に触れてきます。Frontiersと契約したことで予算も増えて、サウンドにこだわりを追求する余裕ができたのでしょうか。

今後のますますの活躍に期待ですね。

イタリア出身のロックバンドMåneskinにハマった

イタリア出身のロックバンドMåneskinにハマった

Måneskinのことを知ったのは、ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021で彼らが勝者となり、その喜びを捉えたひと幕がTwitterのタイムラインに流れてきたことがきっかけでした。

最終パフォーマンスが終わって完全燃焼、疲れてへたり込んだヴォーカルのダミアーノのパンツの股間が破れているのを他のメンバーが指摘する、短い動画が面白かったんですよね。

その時の率直な感想は、久しぶりにユーロヴィジョン・ソング・コンテストに関する話題を見た気がするなぁ、というものでした。

ノルウェーのハードロック・バンドWig Wamがノルウェー代表となり、欧州を席巻していた頃以来です。日本ではあまり話題にならないですよね。過去にはABBAやCeline Dionなども勝ち取っている、歴史あるコンテストです。

https://youtu.be/bC9sg6MpDc0

ユーロヴィジョン・ソング・コンテストのYouTube公式に、Måneskinの優勝決定からトロフィー授与、優勝決定に喜び昂ぶるメンバーがそのまま最終パフォーマンスに臨んでいる動画が上げられているんですけど、これがまあ普段どおりの好パフォーマンスで見事なんですよね。

指先が震えちゃってミス連発とか、気持ちが昂りすぎちゃって泣いてしまい歌えないとか、浮足立ってしまって普段どおりに振る舞えないとか、そんな様子はまったく伺えません。

これはつまり、彼らはまだハタチそこそこの若さにして、すでに少々のことでは動じない確かな実力を備えているバンドである、という証です。くぐり抜けてきた場数を感じます。

ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021優勝曲”Zitti E Buoni”がまた最高で、途中でラップっぽくなったりもしてけっこう独特でアクも強いのに、めっちゃキャッチーでパンチもきいていて、何故か聴きやすくて妙に心に残ってクセになるという、強烈な魅力をまとった楽曲だったのです。

様々なジャンルの音楽からの影響を感じる、エネルギッシュでハイテンションなロックです。

一発で虜になってしまいました。

その頃はまだAmazonでは輸入CDもなく配信のみだったので、”Zitti E Buoni”が収録された『Teatro d’IRa – Vol. Ⅰ』をダウンロード購入しました。

早まったかな、という思いもありました。

というのも、欧州だけでなく日本も含むアジアはもちろん、北米や南米でも売上チャートで急上昇し、彼らを特集したネット記事が次々に上がり、大手洋楽レーベルがTwitterで取り上げたり、大手CD販売チェーン店が店頭に特設コーナーを設けたり、日本語字幕Ver.の公式MVがアップされたりと、日本盤が出るのも時間の問題だろうなと思わせる、異例の盛り上がりを見せていたからです。

そのムーブメントの盛り上がりからすると、予想以上に時間がかかったような気もしますが、無事に日本盤のリリースも決定しました。ソニー・ミュージックより、2021年10月13日発売です。

その後、1stアルバムやEPのCDを取り寄せました。もしかしたら日本盤のボーナストラックに(特にEPは)収録される可能性もあるなと様子を見ていたのですが、ボーナストラックは一曲のみとの記載があったので安心して踏み切りました。

クレジットを見て意外だったのが、まだ若いのにとんがった独自性とクセになる聴きやすさを最初の頃から自分たちのプロデュースで両立していて、恐るべきバランス感覚に舌を巻きました。

コロナ禍さえなければと、惜しまれますね。今頃、日本盤リリースにとどまらず、フェスへの出演や単独来日公演、プロモーション来日など、様々な話が決まっていたでしょうに。

生でライブを観てみたいですよ。

動き回りながら複雑な歌メロを平然と歌いこなすヴォーカル、奔放に跳ねるリズム、骨太なサウンド、ユーロヴィジョンで優勝するほどのステージングと、話が決まった時点で最高が約束されている要素満点ですからね。

いつの日か彼らのステージを生で観られることを願いつつ、とりあえず日本盤が手元に届く日を心待ちにします。

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Perfect Planのヴォーカリスト、Kent Hilliのソロデビューアルバムが素晴らしい

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Perfect PlanのヴォーカリストであるKent Hilliがソロアルバムをリリースする、という報せを聞いたとき、まず私の頭をよぎったのは(ペース早くね?)という疑問でした。

というのも、去年、2020年にPerfect Planの2ndアルバムをリリースしたばっかりだったからです。Kent Hilliはバンドでもほとんどの作詞作曲に関与しています。今回のソロアルバムも共作も何曲かあるとはいえほぼ自分で書いているので、作品発表の間隔が短いことが気になりました。

創作意欲の表れか、ちょうど今なにかがキていて勢いが留まるところを知らない状態なのか。

ライナーノーツによると、来年にはバンドの3rdアルバムをリリースしたいというのだから、驚きのハイペースです。コロナ禍のせいで満足なライブ活動ができない結果、スタジオでの新曲制作が捗っているという、皮肉な背景もあるのでしょうが。

Kent Hilliのソロアルバムと記述しましたが、より正確性を期すならば、本作のプロデュースとすべての楽器パートを担当したMichael Palaceとのコラボ作品である、ともいえるでしょう。

Kent Hilliがアコースティックギター弾き語りの楽曲データをMichael Palaceへと送り、それをもとにMichael Palaceが楽器隊の音を肉付けし、曲に仕上げたのですから。

すべてのサウンドをMichael Palaceが手掛けた、というのがミソですよね。本作の強みはここにあります。Michael Palaceのサウンドが好きなんですよね。特にギターの音色が。きらびやかで華のある音色の響きがたまらないんですよ。

Kent Hilliが書いた強力な楽曲が、Michael Palaceの音色で彩られる。想像しただけで垂涎モノですし、実際に手元に届けられたアルバムの出来は期待以上でした。キーボードやギターが華々しく活躍する、ポップかつキャッチーなハードロック。

マルチプレイヤーがひとりで音作りすると、無駄が削ぎ落とされすぎて淡白な音になったり、得意な楽器と必要最低限はこなせる楽器で差が大きくて音が詰めきれなかったり、プロダクションが拙かったりして、甘いところが悪目立ちしがちなんですけど、それも皆無。

これが発端となってこのふたりが中心の新プロジェクト立ち上がったりしないかな、と夢想したくなるほどの快作です。