Kee MarcelloとTommy Heartの新バンドOut Of This Worldの陰にチラつく大人の事情
2017年に元EuropeのギタリストであるKee MarcelloとFair WarningのヴォーカルであるTommy Heartが中心となったバンド、Kee Of HeartsがイタリアのFrontiersレーベルから立ち上がったときには、期待に沸き立ったロックファンも多かったことでしょう。
私もそのひとりです。
その音はパワフルかつ勇壮なメロディアス・ハードロックで、さすがこのふたりのタッグは強力だなと感心しましたけど、その一方でしこりもありました。
というのも、楽曲がすべて外部ライターからの提供だったからです。
この点が引っかかって(なんだ、Kee Marcelloの曲じゃないのか)とがっかりしたのは自分だけではないでしょう。
いや、決して、外部ライターがだめというわけではないですよ。実際、質の高い楽曲ばかりが収められていましたからね。改めて聴き直してみても、やっぱりいいなぁとしみじみ感じ入ってしまうほどの好盤です。
しかし、人間とは贅沢なもので、それでいいのか、と思っちゃうんですよね。モヤモヤしちゃうんです。
やっぱり、ロックバンドたるもの、自分たちが歌いたい曲を自分たちで書いて自分たちで演奏してこそでしょう、と。
Kee Marcelloもそこに不満を感じていたのは間違いないでしょう。
そうでなければ、Frontiersと袂を分かってまで、バンド名をOut Of This Worldと新たに、曲を自作し、Kee Marcello自ら支援を募って自主リリース、などという行動には移らないでしょう。
今のところ唯一CDがリリースされている日本盤にはライナーノーツ未掲載で、Kee MarcelloとTommy Heartによる楽曲紹介しか載っていなかったので、Kee Of HeartsからOut Of This Worldに至った経緯は想像するしかないのですが、よっぽどのことがあったに違いないですよ。レーベルから離れる決意を固めて、それを実行に移すほどの何かが。
自主制作の割には、ミックスをRon Nevisonが担当していたり、ゲスト・キーボードでDon Aireyが参加していたりと、やけに豪華な顔ぶれで、そのおかげかサウンドプロダクションも上質。クレジットや状況から鑑みるにレーベルから離脱しての自主制作としか思えないのにおれの穿ち過ぎだったんだろうか、と自説の自信も揺らぐほどの高品質です。
今作に収められた楽曲は、キーボードのアクセントがふんだんに効いたポップで親しみやすいメロディアス・ハードです。パワフルなドラムや満を持して繰り出されるKee Marcelloのギタープレイ、衰え知らずのTommy Heartの力強いヴォーカルが素晴らしい。
今後、このバンドの活動がどうなっていくのかは不透明な要素が多い(特に欧州市場で…)ですが、今はただKee MarcelloとTommy Heartのバンド続行を喜び、ライブなどの継続的な活動とさらなる発展を信じて、次作を待つこととします。