世の中ではネタバレは悪とされているけど、一概にそうとは言い切れないところもある
ネタバレは悪。諸悪の根源。なにが何でも回避すべきこと。
それが、世間一般的な認識だと思います。
自分も基本的にはその立ち位置です。ネタバレは回避すべし。
これから読むミステリー小説の内容とか、これから観るライブのセットリストとか、もうじき公開される新作映画の内容とか、残業になって観れなかったサッカー日本代表の試合の結果とか。
うっかり目にしてしまったらそのときはもうしょうがないと諦めてもいますが、できるだけ目にせずに済むように気を配っているのも事実です。
しかし昨夜、本当にネタバレはすべて悪だと言い切れるのだろうか、一概にそうだとは言い切れないのではないか、と自分の足場が崩壊しかねない疑念を抱いてしまいました。
映画『シング:ネクストステージ』のBlu-rayを観ていたときのことです。
「コアラ・ジ・エンド」
映画の中盤で、ポーシャを怒らせてしまったムーンが項垂れながらつぶやくセリフに、シャレが効いてて最高だなと私はニヤニヤしました。
では映画館で初鑑賞したときはどうだったかというと、ポーシャ役の日本語吹き替えを誰が担当しているのか知らずに観ていたので、そのセリフの面白さと意味がまったくわかっていませんでした。
ポーシャ役の日本語吹き替えを誰が演じているのか知っているのといないのとでは、そのたったひと言のセリフの面白さが全然違ってくるのです。
こういうこともあるのか…。目が覚めたというか、新たな世界があることを知ったような思いです。
知らずに観たほうが面白いこともあれば、知っていたほうがその真の意味がわかって面白いと感じられることもある。
どうやらそういうことのようです。
そして、この『シング:ネクストステージ』には、知っている人だけが楽しめる小ネタがまだまだ隠されていそうです。
というのも、ムーンたちが劇場に忍び込むときに清掃員に扮したり、ムーンに君たちは誰?と聞かれて「夜間清掃員です」と答えたり、これってもともとそういうふうに映画が作られていたということもありますけど、ポーシャ役にBiSH(ファンのことを清掃員と呼んでいるそうです)で活動しているアイナ・ジ・エンドを配したことで、遊び心と作り込みが生まれているんですよね。
自分が無知のため気がつけていないだけで、他にも遊び心や仕掛けが隠されているかもしれません。
知らないとただそれだけで何事もなく過ぎていきますが、知っていると気がつけて面白がれたりもっと探してみようと意欲的になったりと、その世界の深さを知ってさらにのめり込むきっかけになりえるんですよね。
自分で調べてそこに辿り着けるのであれば余計なお世話ですけど、そういう人ばかりではないですからね。細やかな解説やネタバレに助かる人もいるでしょう。
決してネタバレの肩を持つわけじゃありませんけど、ネタバレも一概に悪とは言い切れないのではないか、そんなことを考えてしまった真夏の夜の出来事でした。