ギャンブルに向かない男の賭けごと

ギャンブルに向かない男の賭けごと

私はギャンブルに向いていません。

全くやらないわけではないです。宝くじを買ったこともありますし、サッカーくじを買ったこともありますし、パチスロや競馬をやってみたこともあります。

しかし、くじはいつの間にか買わなくなってしまいましたし、パチスロは5千円があっという間に台に吸い込まれて消えてこんな遊び無理無理となった一回きり、競馬は馬の名前に惹かれて単勝一点買いしてみたら60倍当たったものの100円しか賭けてなかったのでその日の収支とんとんで終了の一回だけ。

まあ、競馬は下手に1万円とか突っ込んで60万円を手にしてたらギャンブル狂いの依存症になっちゃってたかもしれないので、結果オーライだったとも思っていますが。

大勝負に出れないんですよね。ここぞってところに大枚を突っ込んでの大勝負に。

肉を切らせて骨を断つに出れないというか。慎重というか臆病というか。

ローリスクローリターンを選びがちで、ハイリスクハイリターンに出られないんですよねぇ。

こんな自分にも、これもある意味ギャンブルのようなものなのかもしれないな、と思っている趣味があります。

音楽CDアルバムを買って聴いてみたり、新作映画を映画館で観てみたり、気になった小説を読んでみたり、といったことなどです。

ただ娯楽を楽しんでるだけじゃん。それのどこがギャンブルに似てるの?と疑問を抱く人もいるかもしれませんが、音楽CDアルバムだったら一枚3000円、新作映画だったら一本1900円、小説だったら文庫新刊800円とかするわけじゃないですか。

これって要するに、そういったお金を払って来て欲しいと願っている投票券を買うのと似たようなものですよね。ひと口3000円、1900円、800円で。

果たしてこの作品は自分にとって当たりかハズレか。

自分の直感を頼りにお金と時間を使って、自分の目と耳を使って実際に聴いたり読んだり観たりして確かめて。

結果、その作品に対する好きの度合いが、払戻金であり配当となります。

この面白いところが、初めて聴いたり観たり読んだりした時にはイマイチでハズレだったと思った作品も、何年か経つと好みが変わったのか感じ方が変わったのか知らず知らず立場が変わったからなのか、評価がひっくり返ることがあるんですよね。

敗者復活のチャンスがあるんですよ。

その逆に、稀に思い出補正が暴かれてしまう時もあるのが悲しくもありますが。

競馬では、騎手や競走馬の血統や脚質やレースの距離や足場との相性や当日の調子や過去のレースの戦績や完全なヤマ勘などから、どの馬が来るか予想して投票券を買います。

それはどの映画や音楽や小説を選び手に取るかの判断材料にも通じるところがあって、監督やプロデューサーや作曲家や編曲家は誰なのか、出身地や過去作の傾向から自分の好みに近いか予想したり、試聴サンプルや予告編を参考にすることもあれば、時には事前情報ゼロでもポスターやジャケットアートなどを見た直感に従ってみることもあります。

ちょっとギャンブルに似てるでしょう?

当たると気持ちいいんだな、これが。

のるかそるか

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中山七里の御子柴弁護士シリーズ三作品を一気読みしたので、その感想

何事もそういうところがあると思うんですけど、気が乗らないとなかなか進まなくて、乗りに乗っていると一気に捗る、そんな側面があるじゃないですか。

それが、たとえ大好きなことであったとしても。

私は小説を読むのが好きで、中でもミステリー小説が特に好きなんですけど、ここ数年は読書熱が停滞気味で、好きな作家の作品が文庫化されるととりあえず買うものの、なかなか手を付けられずに積読化するという悪循環に陥っておりました。

その裏には、期待に達していないと作品の世界にのめり込めずに集中が続かず、期待以上に面白いとふと気がつくと数時間経過していて、いやこれどっちにしろ微妙じゃないか、そんな思いがあります。

せっかくお金を出して買った小説、面白ければそれに越したことはないのですが、それでもいつの間にか数時間ワープはちょっとキツイものがありますよ。

そんな折、お盆休みに、ここ数年では珍しく読書が捗って、一気に何冊も読み進めることができたので、そのときに一気読みしたシリーズ物の感想をまとめます。

画像はPixabayより

中山七里の御子柴弁護士シリーズ三作品を一気読み

その中の三冊が、講談社文庫から文庫化されている、中山七里の御子柴弁護士シリーズです。

この作家の作品は、この御子柴弁護士シリーズで初めて読みました。

以前から、目を付けてはいたんですよ。本の裏にある粗筋を読んで。めちゃくちゃ面白そうだな、と。

御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇!

講談社文庫中山七里『贖罪の奏鳴曲』粗筋より

いやもう、強烈すぎじゃないですか? この粗筋。もう興味津々ですよ。

ただ、設定がトリッキーというか、ちょっと癖が強そうだなという直感も働きまして、実際に買うまでにはかなり逡巡しました。

ちょっと捻りを効かせすぎなんじゃないのかな。大丈夫かこれ?

この手のアオリは、あんまり素直に鵜呑みにしてしまうと、肩透かしを喰らいがちなので、慎重にもなります。

積読がやばい状態になっているのにも関わらず、好きな作家の文庫新刊がなかなか出てこなかったものですから、新規開拓するかと、思い切ってこの御子柴弁護士シリーズを購入したのでした。

講談社文庫 中山七里 作品リスト

2019年9月現在、講談社文庫からは、中山七里の御子柴弁護士シリーズは三作品刊行されています。

私は知らなかったのですが、2015年に『贖罪の奏鳴曲』はテレビドラマ化されていたそうです。

まあ、仮に知っていたとしても、見なかったですけどね。テレビドラマを見る習慣がないというのもありますが、私、大っ嫌いなんですよね、小説や漫画の安易な実写ドラマ化や映画化が。

好きな作品であればあるほど、この傾向は顕著でして。

まず映像作品を観てから原作小説を読むのであれば、原作小説を読むときにその場面を想像しやすくてまだ受け入れられるんですが、先に原作小説を読んじゃうと、もうだめですね。

私は小説を読む時、頭の中にその場面を想像しながら読んでいるんですけど、そのせいか、先に読んでしまうと、こうあるべきという固定観念が出来上がってしまうのです。

そこから外れていたり、好きなエピソードが改変やカットされていたりすると、それがもう許せないんですよね。絶許です。画面から溢れんばかりの原作愛が感じられない映像化は絶許です。

もっとも、これはただの私のこだわりで、作品の出来や良し悪しにはまったく関係ありません。

逆に、実写映像作品は好きだけど小説は嫌い、という人もいるでしょう。中には、小説と実写映像作品は別物と割り切って、どちらも楽しめる人もいるでしょう。

そういった意味では、私は損をしている残念な人間なのかもしれませんね。

『贖罪の奏鳴曲』を読んだ感想

御子柴弁護士シリーズ第一作。

粗筋を読んで面白そうだと期待していたものの、捻った設定に頼り切った物語進行だったらちょっとキツイなと危惧していたのですが、まったくの杞憂でした。

ただ単に設定を捻っているわけではなくて、それを最大限に活用しつつ重厚な物語のプロットに組み込んでいます。

中盤に御子柴の過去のエピソードが挿入されるんですけど、これがやけに長かったので、この残り枚数でどうやって畳むのか心配にもなったんですけど、終盤の怒涛の展開にはしびれました。

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で、数学の公式に当てはめるかのように、てことはAが怪しいと思わせといて実は真犯人はBでしたってオチかな、と予想しながら読んでたら、そんな浅はかな予想をあざ笑うように数段深く作り込まれてて、無防備なところに死角から強烈なワンツーをくらってしまいました。まともにアゴに。

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中山七里、一躍好きな作家のひとりに

いやぁ、中山七里の御子柴弁護士シリーズ、素晴らしかったです。一躍、好きな作家のひとりとなりました。

斜に構えて、トリッキーな設定に逡巡していたかつての自分の尻を蹴っ飛ばしたい気分です。それにしてもこの展開力と構成力は凄まじい。頭の中を覗いてみたいくらいです。

他の作品に、別のシリーズの登場人物が顔を出すこともあるみたいなので、伊坂幸太郎のように、世界の並列展開というか繋がりというか、そういった要素も楽しめそうです。