もしも、全クラブの全ホームスタジアムで実際に試合観戦してからどのクラブのサポーターになるか決めるから手伝って、と頼まれたなら
サッカーやバスケットボールや野球などのプロスポーツ観戦で、どこのファンになるかは大体いくつかのパターンが当てはまります。
気がついたら生まれ育った街のクラブを応援していた。親や友人が応援しているチームを一緒に応援するようになった。気がついたらなんとなくテレビでよく見る一番人気のビッグクラブのファンになっていた。ある選手が大好きになって、その所属チームを応援するようになった。興味なかったけど誘われて渋々スタジアム観戦についていったら生観戦の魅力を知ってハマった。
まあこんなところでしょう。
中には例外もあって、私みたいに、ある特定のクラブを応援しているわけではないけどサッカーが好きで気になった対戦カードをふらっとスタジアムに観に行く人もいるでしょうし、スタジアムに足を運ぶほどでもないけど結果だけは妙に気になって自分が住んでいる県のクラブが勝っていたら嬉しい、そんな人もいるでしょう。
映画『ぼくとパパ、約束の週末』の主人公である少年、ジェイソンもそんな数少ない例のひとりです。
サッカーの話で、級友たちから「お前どこファンだよ?」と詰められて答えに窮したジェイソン。そんな彼の心のどこかに火がついたのか、自分もどこかのクラブを応援したくなり、父親に懇願します。
自分の目で全クラブの全ホームスタジアムで試合を観てから応援するクラブを決めたいから手伝って欲しい、と。
全国の1部リーグから3部リーグまでの全プロクラブの全ホームスタジアムで実際に試合観戦してからどこを応援するか決めるだって??
あ、ちなみに物語の舞台はドイツです。
突拍子もなく放たれた途方もない宣言に父親は面食らったものの、交換条件としていくつかの約束を取り付けることで合意に達し、ジェイソンが応援するクラブを見つけるための親子ふたり旅が始まります。
日本代表サッカー選手も多く在籍していて、日本人にとっても馴染み深いブンデスリーガ行脚です。
言葉にするとさらっと書いてますけど、これはとんでもないことですよ。
これがもし日本での話だったとして、J1〜J3までの全60クラブの全ホームスタジアムでひととおり試合観戦する、なんてことになったら、移動や宿泊や食事など旅費だけで一体いくら消し飛ぶことになるやら…。
決まればいいですよ。応援したいクラブが見つかれば。
しかし自閉症のジェイソンには譲れないことや許せないことがいくつもあって、彼がこだわって定めた数々の条件は厳しく、そのすべてはそう簡単に達成されることではありません。
スパイクの色が派手すぎる、選手たちが円陣を組むのが気にくわない、このクラブには変なマスコットがいる、スタジアムの設計が環境に優しくない、などなど、ジェイソンからダメ出しをくらって次々に撃沈していくクラブたち…。
…ねぇ、これ、終わるの?
応援したいクラブ見つかる??
1部から3部までで見つからなかったらどうなるんだろう。4部以下地域リーグまで掘り下げていくのか?それとも国外にまで目を向けていくのだろうか?
父親が、ありとあらゆるクラブのホームスタジアムで試合を観戦するのが好きなタイプのサッカーファンであったなら、最高の週末サッカー観戦ふたり旅になるんでしょうけどね。
父親はどうやら出身地のクラブのファンのようですし。
ふたりの終わりなき旅の行く末やいかに…。