BAND-MAIDの3rdフルアルバム『CONQUEROR』は超名盤

BAND-MAIDの3rdフルアルバム『CONQUEROR』は超名盤

仮にですよ。仮定の話です。

友人や知人家族とBAND-MAIDについて熱く語り合っていたとして、そんなときにふと「どのアルバムが一番好きか?」という話題が持ち上がったとしたならば。

私は頭を痛めて唸るでしょう。うぅむ。

一番最初に聴いたアルバム『Just Bring It』には特別な思い入れがあるし、舞妓リメイクの世界観が強烈な『BAND-MAIKO』の中毒性も半端ないし、YouTubeで公式動画を見てハマるきっかけになった曲のひとつである”Daydreaming”が収録されている『WORLD DOMINATION』も素晴らしいからなぁ。

そんなふうにひとしきり考え込んだ末に導き出される結論は、「3rdアルバムの『CONQUEROR』かな」ということになるでしょう。

https://natalie.mu/music/pp/bandmaid06

BAND-MAID – CONQUEROR

このアルバムは、構成がドラマチックなんですよね。私はそこに惹かれています。

まず、幕開けを飾るのがたおやかな”PAGE”。意外性がありつつもここしかないという絶妙の位置にハマっていてる、清廉な曲。ここから、このアルバムは怒涛の展開を見せます。

アグレッシブな曲が続いたかと思えば壮大なスケールの曲が流れてきたり、ポップな曲やセンチな曲を受けてまた激しいロックナンバーが立ち上がってきたりと、山あり谷ありの起伏目まぐるしい展開。

まるで、沢から湧いた清流が小川になり滝となり河川になり、山や渓谷や野を越えてついには大海原へと至るようです。感動に打ち震えながら、この激流に身を委ねるのみ。素晴らしい。

特に、ラスト三曲が凄まじい。さんざんいい曲ばっかり聴かされてフラフラのところに、これでトドメだと言わんばかりの苛烈な曲三連発。容赦なし。

最後の”輪廻”がまた一段と激しいんですけど、この最後に来ての最高潮ともいえる激しさが、次作『Unseen World』の世界観に通じているようでもあります。アルバム一枚聴き終えて、繰り返しリピートする際にピッタリの最高の曲名というだけでなくて。

超名盤。うん、超名盤です。

BAND-MAIDの3rdアルバム『CONQUEROR』は、超名盤。

Pretty Maidsのシンガー、Ronnie Atkinsの初ソロアルバムが凄まじい

Pretty Maidsのシンガー、Ronnie Atkinsの初ソロアルバムが凄まじい

Pretty Maidsはデンマーク出身のヘヴィ・メタル・バンドです。

結成は1981年なので、Ronnie Atkinsのソロアルバムは40年に及ぶキャリアの中で初めて、ということになります。EclipseのErik Martenssonと組んだNordic Unionなどで歌ったことはありますが、純然たるソロアルバムは初めて。

ソロアルバム作成の動機のひとつには、2020年10月にステージ4の肺がんであることを告白したことが大きく関係しています。日本盤ライナーノーツにも、がんの転移の宣告はショックだったが、自分に何ができるだろう、曲を書いて歌うしかない、と切り替えたと語っていたと記されています。

この切り替えは凄いですよね。一度は完治したと思ったがんが、転移してステージ4で見つかったというのに、絶望に打ちひしがれずに創作活動に打ち込むと決心しただなんて。強いですよね。自分だったらこんなふうに切り替えられただろうか。きっと自暴自棄になっていたんじゃないかな。

曲を書いて歌うしかない。そんな精神状態で制作されたこのアルバムは、Ronnie Atkinsの魂が振り絞られています。

鬼気迫る歌声は、まるで魂の咆哮です。

肺がんとのことなので、呼吸に影響がないはずはなく、それはつまり歌唱にも多大な悪影響があるはずなのですが、そんな負の要素を微塵も感じさせない歌声です。

一体全体どうなっているんだと、あっけにとられて圧倒される勢いです。

このアルバムには、そんなRonnie Atkinsの歌唱が際立つような楽曲が多く収められています。コーラスが分厚かったり、アレンジが荘厳だったり、サウンドが豪快だったりと、手練手管でRonnieの独壇場を阻もうとしているのですが、そんなあの手この手をあっさり跳ね除けるRonnieの歌唱が素晴らしい。

曲がまたいいんですよねぇ。

今作はバンドのようなメタル性は皆無で、歌メロに重きを置いたメロディアス・ロックなので、(Pretty Maidsの攻撃性の強い曲は苦手だな、ポップな曲は最高なんだけど)と感じていた人にぜひ聴いてみて欲しいアルバムです。

本当に肺がんステージ4なんですか?嘘ですよね?じゃなきゃこんなに歌えるわけないですよね?

このアルバムを聴いていると、そんなふうに現実逃避的な懇願を重ねたくなってしまいます。

Kee MarcelloとTommy Heartの新バンドOut Of This Worldの陰にチラつく大人の事情

Kee MarcelloとTommy Heartの新バンドOut Of This Worldの陰にチラつく大人の事情

2017年に元EuropeのギタリストであるKee MarcelloとFair WarningのヴォーカルであるTommy Heartが中心となったバンド、Kee Of HeartsがイタリアのFrontiersレーベルから立ち上がったときには、期待に沸き立ったロックファンも多かったことでしょう。

私もそのひとりです。

その音はパワフルかつ勇壮なメロディアス・ハードロックで、さすがこのふたりのタッグは強力だなと感心しましたけど、その一方でしこりもありました。

というのも、楽曲がすべて外部ライターからの提供だったからです。

この点が引っかかって(なんだ、Kee Marcelloの曲じゃないのか)とがっかりしたのは自分だけではないでしょう。

いや、決して、外部ライターがだめというわけではないですよ。実際、質の高い楽曲ばかりが収められていましたからね。改めて聴き直してみても、やっぱりいいなぁとしみじみ感じ入ってしまうほどの好盤です。

しかし、人間とは贅沢なもので、それでいいのか、と思っちゃうんですよね。モヤモヤしちゃうんです。

やっぱり、ロックバンドたるもの、自分たちが歌いたい曲を自分たちで書いて自分たちで演奏してこそでしょう、と。

Kee Marcelloもそこに不満を感じていたのは間違いないでしょう。

そうでなければ、Frontiersと袂を分かってまで、バンド名をOut Of This Worldと新たに、曲を自作し、Kee Marcello自ら支援を募って自主リリース、などという行動には移らないでしょう。

今のところ唯一CDがリリースされている日本盤にはライナーノーツ未掲載で、Kee MarcelloとTommy Heartによる楽曲紹介しか載っていなかったので、Kee Of HeartsからOut Of This Worldに至った経緯は想像するしかないのですが、よっぽどのことがあったに違いないですよ。レーベルから離れる決意を固めて、それを実行に移すほどの何かが。

自主制作の割には、ミックスをRon Nevisonが担当していたり、ゲスト・キーボードでDon Aireyが参加していたりと、やけに豪華な顔ぶれで、そのおかげかサウンドプロダクションも上質。クレジットや状況から鑑みるにレーベルから離脱しての自主制作としか思えないのにおれの穿ち過ぎだったんだろうか、と自説の自信も揺らぐほどの高品質です。

今作に収められた楽曲は、キーボードのアクセントがふんだんに効いたポップで親しみやすいメロディアス・ハードです。パワフルなドラムや満を持して繰り出されるKee Marcelloのギタープレイ、衰え知らずのTommy Heartの力強いヴォーカルが素晴らしい。

今後、このバンドの活動がどうなっていくのかは不透明な要素が多い(特に欧州市場で…)ですが、今はただKee MarcelloとTommy Heartのバンド続行を喜び、ライブなどの継続的な活動とさらなる発展を信じて、次作を待つこととします。

Out Of This World – Out Of This World

https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A026881.html

ヤング・ギター5月号のインタビューにて、今回の一件について少しだけ触れられています。要チェック!

イギリスの女性シンガー、Chez Kaneのデビューアルバム『Chez Kane』が素晴らしい

イギリスの女性シンガー、Chez Kaneのデビューアルバム『Chez Kane』が素晴らしい

YouTubeに動画を投稿していたことで夢を掴んだ人は、たくさんいます。

デジタルカメラやレンズのレビューを投稿していたらアンバサダー的な仕事を得た人もいますし、ゲーム実況で稼ぐ人も珍しくないですし、ベースを演奏している動画を投稿していたらB’zのサポートメンバーに抜擢された人もいます。

Chez Kaneは、自宅のスタジオでMetallicaやVan Halen、『トップガン』の”Mighty Wings”のカバーなどを歌ってYouTubeに投稿していたら、ソロデビューのチャンスを得ました。

しかも、Clazy LixxのDanny Rexonの全面バックアップ、EclipseのErik Martenssonによるマスタリングという、夢のような待遇で。

Danny Rexonによる全面バックアップの内訳ですが、プロデュースだけでなくサックス以外の楽器すべての演奏、さらには作詞作曲と、リードヴォーカル以外ほぼ全てといっていいほどの仕事ぶりで、文字通りの全面バックアップです。

自分だったら、ここまで心血注いだら歌も自分で歌いたくなっちゃいますけどね。Satinみたいに。

インタビューに書かれていた通り、前から女性ロックシンガーを発掘してプロデュースしたいと考えていた、その熱意が本物であったという証でしょう。そうでもなければ、なかなかここまでできないですよ。

そのDanny Rexonが提供した楽曲ですが、全編キーボードが活躍するポップかつキャッチーなハードロックです。Crazy Lixxほどハードというわけでもなく、かといって物足りなさを覚えるほど軽くもなく。程よいバランスのサウンドで、カラッと明朗なメロディアス・ハードに仕上がっています。

Chez Kaneのハスキーで力強い歌声を存分に活かした快作。Danny Rexonがずっと温めていたアイデアにぴたりと合致する理想の歌声だったことが伺えます。

Danny RexonはChez Kaneの次のアルバムのために既に何曲か書き始めているだけでなく、年内にはCrazy Lixxの新作もリリースされるかもしれないとのことで、今後の活躍も楽しみですね。

https://note.com/avalon_label/n/n844b2a19f18f
https://note.com/avalon_label/n/n168a11e0be0b

もしかしてだけど、BAND-MAIDってこれまで一枚たりとも収録曲名をアルバムタイトルにしてないんじゃないの?

もしかしてだけど、BAND-MAIDってこれまで一枚たりとも収録曲名をアルバムタイトルにしてないんじゃないの?

BAND-MAIDにハマって約ひと月。今さらかもしれませんが、凄いことに気がついてしまいました。

もしかしてだけど、BAND-MAIDってこれまで一枚たりとも収録曲名をアルバムタイトルにしてないんじゃないの?ということに。

BAND-MAIDはこれまで、ミニアルバムとフルアルバムをそれぞれ四枚ずつリリースしているんですけど、そのいずれも、収録曲名を単純にアルバムタイトルにしてないんですよ。

  • ミニアルバム
    • 『MAID IN JAPAN』(2014)
    • 『New Biginning』(2015)
    • 『Brand New MAID』(2016)
    • 『BAND-MAIKO』(2019)
  • フルアルバム
    • 『Just Bring It』(2017)
    • 『WORLD DOMINATION』(2018)
    • 『CONQUEROR』(2019)
    • 『Unseen World』(2021)

一枚目のタイトルをバンド名にして、以降2,3,とナンバリングしていく方もいますけど、そのパターンとも違う。

『Brand New MAID』の中に”Brand-New Road”という曲があったり、『WORLD DOMINATION』の中に”DOMINATION”という曲があったりと、収録曲名の途中までやその一部が一致しているアルバムタイトルはあるのですが、完全一致はなし。

匂いますね、これは。絶対に何かありますよ。秘められた密やかなこだわりが。

https://www.barks.jp/news/?id=1000136521
https://gekirock.com/interview/2017/01/band-maid.php
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/27320?page=2

いくつかインタビュー記事には目を通したのですが、単一作品に対するタイトルへの言及はあったのですが、歴代作品すべてについては、タイトルの決め方は載っていませんでした。

公式Twitterに、1stミニアルバムに込めた意味は残っていたのですが。

ひょっとすると、ラジオやファンクラブ会員向けの動画の中では語られているのかもしれません。

現状としてはこれ以上知りようがないので、なんとかして知り得た断片的な情報を元に推察して楽しむほかありません。まあ、そんな好き勝手な考察がまた楽しかったりするのですけど。

アルバムタイトルには、彼女たちの目標である世界征服へときっと繋がるはずだと、彼女たちなりの根拠や希望が込められているのでしょう。

もしかしたらそんな大それた意味は隠されていないのかもしれません。私はそんなはずはないだろうと睨んでいますけど、本当のところは彼女たち本人にしかわからないことでもあります。

ささやかな予想が的中していたら嬉しいな。そんな想いを胸の片隅に、今後の彼女たちの活躍を楽しみにしていきます。