One OK Rockの新譜『Luxury Disease』の国内盤と国際盤を聴き比べると、なるほど贅沢病とは言い得て妙だなと腑に落ちる

One OK Rockの新譜『Luxury Disease』の国内盤と国際盤を聴き比べると、なるほど贅沢病とは言い得て妙だなと腑に落ちる

自覚はなかったのですが、どうやら知らず知らずのうちに病にかかっていたようです。

贅沢病という病に。

先日、One OK Rockの新譜『Luxury Disease』の国内盤と国際盤が発売されたので両方ともCDを買いました。

町のCD屋さんの売り場面積がガンガン縮小し、名古屋の有名中古CD屋さんが閉店を発表し、CDの買取停止を宣言する有名チェーン店が出てきたこのご時世に、同じアルバムのちょい仕様違いを両方とも買いました。

薄々、両方ともほとんど同じ内容なんだろうな、と想像しながらも。

ええ、想像ついてましたよ。もちろん、想像ついてましたとも。

前作も前々作もその前のアルバムも国内盤も国際盤も買ったので、リリースを重ねるにつれて加速していくとある傾向から、今回もその方向だろうなと予想していながらも、いい意味で裏切ってくれていたら嬉しいなと一縷の望みを抱きながら買いました。

残念ながら予想通りだったわけですけども。世界一かっこいいロックバンドを自称するならば、いちファンの予想なんて軽くぶっ千切ってほしいところなんですけども。

ワンオクが国内盤と国際盤の両方を発売するようになったのは、2015年のアルバム『35xxxv』からです。海外での活動にも力を入れはじめた時期ですね。

その頃はまだ良かったんですよ。国際盤が後発だったこともあってか、国内盤では日本語の歌詞が多かったり、新曲が追加されていたりと、はっきりと区別化がされていたので。

海外での活動に際しメロディック・パンクやエモに強いFueled By Ramenと契約し、より海外指向が強まっていくのですが、皮肉なことにその結果として国内盤と国際盤の差異も小さくなっていってしまいました。

すぐに分かる差異といえば、日本語詩があるかどうか、ゲストが参加しているかいないか、収録曲が数曲異なる、ジャケットのデザイン違い、これくらいでしょうか。

もっと細かくチェックしていけば、もしかしたら参加ミュージシャンが違うかもしれませんし、アレンジも若干違うかもしれませんし、関わっている編曲者やプロデューサーも違うのかもしれませんが、目を皿のようにして探さないとわからないレベルの違いとなると、もはや意地悪な間違い探しみたいですよね。

ついつい(これ、国内盤と国際盤、二枚出す意味ある?)と不満をこぼしたくなってしまうのも無理からぬ話でしょう。

それなら、どっちか一方だけ買うか、もう買うのやめれば?と思う人もいるかも知れませんけど、違うんですよね。そういうことじゃないんですよ。

好きなんですよ。彼らの音楽が大好きだから、ほとんど同じ内容のアルバムを二枚も買ってるんですよ。ほとんど同じだろうけど予想と違ってたら嬉しいなと思いながら。

わかりませんかね。この複雑な胸の内。

しかし、このことについて不満げな人が、他に全然見当たらないんですよね。

もしかして、両方とも買うのって圧倒的少数派?みんなどっちかしか買わないとか?

そんなことないと思うんだけど。ワンオク目当てにサマソニ行った同僚の奥さんも両方買ったって聞いたし。

っかしいな〜。私だけなのか?みんな本当になんとも思ってないの?心広すぎじゃない?

私が贅沢すぎるんだろうか。せっかく国内盤と国際盤とリリースするなら、もっと差別化してほしいと願うだなんて。

感謝の心が足りないんでしょうか。欠けてるんでしょうか。

そうか。感謝を忘れて、贅沢に溺れてしまっていたのか。

まるで自覚はなかったけど、知らず知らず贅沢病にかかってしまい、彼らへの要求水準が跳ね上がっていたのか…。

H.E.R.O.のChrisとPretty MaidsのKen Hammerが組んだTabooの1stアルバムがまるでH.E.R.O.の4thアルバムみたいになっていて驚いた

H.E.R.O.のChrisとPretty MaidsのKen Hammerが組んだTabooの1stアルバムがまるでH.E.R.O.の4thアルバムみたいになっていて驚いた

どちらもデンマークのロックバンドである、H.E.R.O.のヴォーカリストであるChrisとPretty MaidsのギタリストであるKen Hammerが組んだプロジェクトTabooが発足したというニュースを初めて聞いた時、私はただ(へぇ)と思っただけで、あまりピンときていませんでした。

Pretty Maidsはベストアルバムを持っているだけで、H.E.R.O.はこれまでに出た3枚のアルバムを持っていて来日公演も東京まで観に行っている大好きなバンドですが、このふたりが組むという字面を見ただけでは実像が上手く浮かんでこなかったからかもしれません。

最初のその反応からも容易に推察できるように、こんなこと言ったらあれですけどあんまり興味なかったんですよ。CDを買うかどうかも迷っていましたし、スルーするかもしれないなと思っていました。

それがですよ。

アルバム発売に先駆けて公開された新曲を何曲かYouTubeでチェックしてみたら。

びっくり仰天というか目からウロコというか。

イントロを聴いてずっしりと重心の低い硬質なバンドサウンドの北欧メタルか、なんて思ってたら、Chrisが歌い出した途端まるでH.E.R.O.みたいなポップで親しみやすい鮮烈な歌メロをぶちかまされて、頬を叩かれたような衝撃を受けました。

なんじゃこれ??

Chrisが歌い出した途端、美味しいところを全部持っていっちゃってるじゃないか!

ふたりでスタジオで相談や提案し合いながら制作していたらしいですけど、これKen Hammerは頭を抱えてたんじゃないですかね。どう頑張って音を作っても歌に入ったらChrisに持っていかれちゃうので。

インタビューには”コーラス部分はH.E.R.O.の1stや2ndから出てきたような感じ”と載っていましたけど、それどころじゃないですよこれは。

Ken Hammerも随所で印象的なトーンを響かせたギターソロで意地を見せているんですけど、歌に戻ったらそのすぐそばからChrisが自分色に染め直してKen Hammerの渾身のプレイが無力化されているので、呆気にとられるほかありません…。

Chrisの歌力が凄すぎる。

H.E.R.O.が好きになったのもChrisの歌声に惚れ込んだからという側面があるので、私がChrisの歌声に弱いというのは前からですが、それにしてもこの存在感とパフォーマンスは圧巻です。

H.E.R.O.のChrisとPretty MaidsのKen Hammerが組んだスーパー・プロジェクト、という触れ込みだったのに、いざ聴いてみたら実質H.E.R.O.の4thアルバムみたいになってしまっていたとは…。

Taboo – Taboo

https://gekirock.com/interview/2022/09/taboo.php

全曲新曲のベストアルバムだなんてそんな無茶な、と思ってたけどひょっとするかもしれないのがMuseの新作『Will Of The People』

全曲新曲のベストアルバムだなんてそんな無茶な、と思ってたけどひょっとするかもしれないのがMuseの新作『Will Of The People』

レコード会社側のベストアルバムを出したいという思惑に反発する形で制作されたのが、Museの新作9thアルバム『Will Of The People』です。

なにかのインタビューでMuseのヴォーカル兼ギターのMatthew Bellamyが全曲新曲のベストアルバムを出してやろうという気概で制作に取り組んでいると語っていたのを知って、私の胸に去来したのは楽しみよりもそんな無茶なという心配でした。

名曲揃いの名盤に対してよく全曲シングルカットできそうとかいいますけど、ベストアルバムともなると全曲シングル級だとしてもちょっと弱いですからね。ベストアルバムというからには、新作に収録される新曲は全部過去の代表曲を葬り去るクラスの名曲じゃないと。

それくらいじゃないと弱いですからね。

考えてみてくださいよ。

てことはですよ?

今度の新作には、”Plug In Baby”や”Hysteria”や”Knights Of Cydonia”などの過去の名だたる名曲たちと肩を並べるどころか、もしいつかベストアルバムが発売されるとしたらそれらの楽曲を選外へと追いやるレベルの新曲ばっかりが収録されている、ということになってしまうんですよ?

そんな無茶な、と思うのは私だけじゃないでしょう。

そんなMuseのベストアルバムがあり得るはずがないじゃないか、と。

無謀にもほどがある挑戦だ、というのが多くの方の認識だと思います。そりゃ中には数曲過去の代表曲にも比肩する強力な曲はあるだろうけど、新曲全曲そのレベルっていうのはいかにMuseといえどさすがに難しいだろう、と。

楽しみ半分不安半分どころかほぼ不安で胸が埋め尽くされた状態で発売日にMuseの新作アルバム『Will Of The People』を聴いた私は、これはひょっとしたらひょっとするかもしれない…と思いました。

現時点では、発売から二週間ちょっと聴いたくらいでは、いくら曲の出来がよくてもさすがにMuseが好きになったきかけの曲とか、ライブで生で聴いて感動した思い出の曲とか、アルバムで聴いただけではピンときてなかったけどライブで聴いたら化けた曲とか、思い入れ補正で強化された曲を頭から追い出すほどの存在にはなっていませんが、これから聴き込んでこのアルバムがもっと好きになり、いずれライブで生で聴いてその好きがさらに強化されたりすれば、過去の名曲代表曲を食うほどに育つかもしれない…。

全10曲約38分。コンパクトながらその内容は80年代風ありメタル風ありQueen風あり、アグレッシブなロック曲もあれば美メロが鳴り響くバラードもありと多彩で充実しており、らしさもあれば新機軸も感じられるという聴き応えたっぷりの一枚。

前半も凄いですけど、怒涛の展開を見せる後半も凄まじいです。6曲目からスイッチ入って、ガラッと雰囲気が一変。

各曲の作曲や編曲はもちろん、アルバムの構成にまで細かく気を配って煮詰めたのは間違いないでしょうが、メンバーがノリノリで創作したかのようなサウンドが満載で、その産みの苦しみを感じさせない快作です。

ベストアルバムを望んだレコード会社への反骨心の強さが伺えるような充実ぶりですね。

まだ日本へのツアー決定の報はないですが、早くライブが観たいですね。

アルバム『Will Of The People』の完全再現ライブが観たいです。

Pale Wavesの3rdアルバム『Unwanted』を聴いたら俄然来日公演観に行きたくなったけど仕事が繁忙期という罠

Pale Wavesの3rdアルバム『Unwanted』を聴いたら俄然来日公演観に行きたくなったけど仕事が繁忙期という罠

イギリス出身のロックバンドPale Wavesは昨年2021年に2ndアルバム『Who Am I?』をリリースしたばかりなので、今年3rdアルバム『Unwanted』をリリースしたことで二年連続の新譜リリースとなりました。

ファンにとっては喜ばしいことですが、1stから2ndの間隔が三年であったことを考えると、異例のハイペースであると言えるでしょう。

もっとも、このハイペースの新譜リリースはPale Wavesに限った話ではなく、コロナ禍でライブやプロモーション活動を制限された多くのバンドに共通している話なのですが。

1stの頃は怪しげというか不思議というか、インパクトのあるビジュアルで、音に丸みのあるおっとりした歌メロの独特な雰囲気のポップロックを鳴らしていました。

2ndでは音像がスッキリして歌声の力強さが強調されて、ポップパンク風味を取り入れたロックサウンドにハマっていました。

1stの音が好きだった人には寂しい変化でしょうけど、ロックバンドがずっと同じ路線の音を鳴らし続けるっていうのも珍しいですからね。自分は2ndの音のほうが好きだったので、この変化は歓迎していました。

では続く今作『Unwanted』はどうだったかというと、そのポップパンク路線をさらに推し進めていました。(ここまでやる?)と思いましたけど、まあそれも一瞬ですね。超好き。超好きな音だったので。

昨今、80年代回顧や約二十年前の青春パンクリバイバルな流れがありますけど、単に流れに乗ったわけじゃなくて、インタビューで語っているように自分たちが好きな音、本当にやりたい音楽を鳴らすんだという信念の結晶なのでしょう。

単刀直入で展開が鬼早い曲ばっかりだな、というのが率直な感想です。

とにかく早い。極限まで無駄を削ぎ落としたメロディ展開。イントロはほとんどなし。曲が始まったと同時に歌い出す勢い。

たまに(お、この曲はイントロあるのか)と思っても、5秒とか7秒とかで歌い始める。まれに10秒以上イントロがあると(この曲はイントロ長いなぁ)と感覚がバグってしまうくらいイントロが鬼短い。

あまりにも歌い始めるのが早くて情緒もへったくれもないんですけど、ポップパンク全開のパワフルで勢いのあるサウンドには合っていますね。曲が始まった瞬間からガツンとかまされます。

音質もいいですね。鮮烈で圧も強いので、耳に刺さってくるような、休まずに周回を重ねてたら耳が疲れちゃいそうな音ではありますけど、立体感や空間を感じるスケールの広がりが素晴らしい。

アルバム発売前に小出しにされた新曲をYouTubeで聴いていた段階で(ひょっとして今回のアルバム凄いのでは?)と予感していましたけど、その予想を上回ってきましたね。

アルバムを聴いたら、秋の来日公演、めっちゃ行きたくなってきました。名古屋火曜日。

ただ、仕事が繁忙期なんですよね…。すんなり定時ダッシュできるかどうか。1stや2ndの曲もライブで化ける可能性があるから観たいなぁ…。

https://news.goo.ne.jp/article/rollingstonejapan/entertainment/rollingstonejapan-38216.html

アルバムツアー終了間際に発売されて、その初回限定盤にまだ開催中のそのツアーから6曲が抜粋されたライブDVDが付属する異例ずくめのアルバム、それがB’zの『Highway X』

アルバムツアー終了間際に発売されて、その初回限定盤にまだ開催中のそのツアーから6曲が抜粋されたライブDVDが付属する異例ずくめのアルバム、それがB’zの『Highway X』

B’zの新作『Highway X』は、異例中の異例、そんな言葉がぴったりと当てはまる一枚です。

2022年5月14日からアルバム『Highway X』の全国ツアーが開始されているのにそのアルバムの発売日が約三ヶ月後の8月10日で、そのアルバムツアーがアルバム発売後まもなくの8月14日で終了するとか。

しかもアルバムの初回限定盤には今まさに最終日が間近となったそのツアーの模様が収められた6曲入りライブDVDが付属するとか。

今まで何枚も音楽CDを買ってきて、このパターンはさすがに初めてですね。前代未聞、前人未到、空前絶後。そんな言葉で語られるレベルの、世にも珍しい販売パターンです。

今度のアルバムに収録されるのはどんな曲なのかな?とドキドキワクワクを胸にライブを観に出かけ、そのライブの感動も薄れ忘却しつつある約三ヶ月後にCDに収められたいつになくライブ感あふれるサウンドに感激し、まだ終わってないツアーの映像をDVDで観てCDもよかったけどやっぱりライブもいいなぁと感動を揺さぶられる。

こんなふうに様々な楽しみ方ができたアルバムがかつてあっただろうか、という話ですよ。

まあ、なかったんですけどね。

特別な野外ライブイベントでこれから発売されるアルバムに収録される新曲を一曲だけ聴いた、とかならありますけど、さすがにアルバムツアーでCD発売前のアルバムから全曲先駆けて聴いたのは初めてです。

ツアーの日程を消化しながら、ライブ中に気がついたことを試したりしてギリギリまで音源に手を加えていたからなのか、新作のサウンドはいつになくライブっぽいサウンドに仕上がっているように感じました。

ギターの骨太なトーンはもちろん、豪勢できらびやかなブラスとか、重厚でありながら跳ねているリズムとか、要所要所で効果的なアクセントをつけてくるキーボードとか、それら主張の強いサウンドの束にも埋もれずに突き抜けてくる唯一無二の歌声とか。

それらが代わる代わるその存在を主張してくるんですけど、その主張が強すぎずかといって物足りなくもないという絶妙のバランスでまとめられていて、賑やかで迫力がありつつも、聴きやすくてわかりやすいサウンドが最高です。

中でも特に印象深いのが、アルバムの最後を飾るバラード”You Are My Best”ですかね。

ライブで初めて聴いたときも(曲名から予想していた通りの感動的なバラードだ〜)と感激したんですけど、CDで聴いたら(うお〜ライブのときの好印象を上回る完成度だ!)と驚かされて、ライブDVDを観てみたら(いやいや、ライブバージョンもやっぱり素晴らしいぞ?)と振り回された挙げ句、何を信じたらいいのかわからなくなって心の整理がつかなくて。

何だこれ?一体どうなってる?ちょっとわけがわからないな…。

まあ、何にしろ素晴らしいことに変わりはないのだから、別にいっか。

私は考えることをやめました。

『DINOSAUR』や『NEW LOVE』ほどの即効性のあるインパクトには欠けるような気もしますが、これは聴き込むほどにしっくりハマってくる、もしくはライブで聴くとまた印象が変わって化ける、そのどちらかでしょう。

延期になりましたけど、それまではCDを聴き込んで、ライブツアー千秋楽のライブビューイングで答え合わせします。