スウェーデンのメロディアス・ハード・ロック・バンド、H.e.a.tの『H.e.a.t Ⅱ』を聴いた感想

H.e.a.tの最新作『H.e.a.t Ⅱ』(2020)を聴いた感想

スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンド、H.e.a.tの六作目、『H.e.a.t Ⅱ』。

発売前から、このアルバムにはめちゃくちゃ期待していました。

というのも、YouTubeのレーベル公式チャンネル上で、四曲ほどアルバム発売に先駆けて公開されていたんですけど、四曲ともめちゃくちゃ良かったんですよ。

これは凄まじくいいアルバムに仕上がってるに違いない。

期待値うなぎ上りですよ。

事前情報としては、今バンドがデビューしたとしたら、というのが制作コンセプトで、原点回帰の意欲作という触れ込みだったんですけど、自分はヴォーカルがErikに変わってからのファンだったので、原点回帰といって初期のような作風になってしまったらちょっと嫌だな、と心配していました。

それが、順次YouTubeで発表される公式MVを見ていると、「あれ、どうも様子が違うぞ」となりました。原点回帰の要素を感じなかったからです。

原点というより、これはむしろ新機軸、もしくは新境地、あるいは新次元でしょう。バンドとしてのさらなる高みへの到達、覚醒ですよ。

これは結果でしょうね。再デビューのつもりで、初心を取り戻そうとしていたのか、がむしゃらに創作に打ち込んだ結果。

溢れんばかりの情熱と疾走感が、勇壮でカッコいい上に恐ろしく耳に馴染む北欧ハードロック・サウンドに彩られています。このアルバムを聴きながら夜の高速道路をドライブしたら、アクセル踏み込みすぎて危険でしょうね。

全曲素晴らしい。傑作です。ライブで聴きたかったですね、ライブで映えそうな楽曲ばっかりなので。

私が洋楽ロックに入門するにあたり、お世話になったベストアルバム

音楽を聴くようになったきっかけは、親が買ってくれたCDラジカセ

あれはたしか中学二年の頃だったと思うんですけど、私の趣味趣向を決定づける出来事がありました。

親が、CDラジカセを買ってくれたのです。

それまで、音楽を聴くことにはまったく興味がなかったですし、親もレコードプレーヤーを持ってはいたものの音楽を聴いているところは数回しか見た覚えがないですし、当然ねだってもいないのでなんで買ってくれたのか今でも謎なんですけど、わけも分からぬうちに自室にCDラジカセが置かれることになりました。

これがきっかけとなって、せっかくだし音楽CDでも聴いてみるかと、近所のレンタルビデオ店に通うようになりました。

頼りは、ミュージックステーションの週間売上ランキングでしたね。そこで、いいなと感じた邦楽ヒットシングルを借りていました。

B’zやCHAGE & ASKA、WANDS、T-BOLAN、ZARDなどが私の音楽好きの原点です。

画像はPixabayより

洋楽を聴くようになったきっかけは、親が加入してくれたWOWOW

しばらく、邦楽のヒット曲を借りてきては、CDからカセットテープにダビングして擦り切れるまで聴く、という音楽生活を送っていたんですけど、それがなぜ洋楽を聴くようになったかというと、これも親のおかげなんですけど、当時まだ珍しかったBSテレビを買いまして、有料チャンネルであるWOWOWにも加入してくれたのです。

冷静に今振り返ってみると、生き神様ですね、これはもう完全に。息子たちを、思春期のうちにポップカルチャー漬けにしようとしていたとしか、考えられません。ありがたや。

今もあるかわからないですけど、当時はプログラムとプログラムの間に、話題の新曲のビデオを流すことがあって、そこでBon Joviの”Always”やAerosmithの”Amazing”のビデオを見て、「なんてかっこいいんだ!」という衝撃が身体を突き抜けまして、町のCD屋さんにそれぞれのベストアルバムを買い求めに走ったのが、洋楽を聴き始めたきっかけです。

洋楽って、すぐにレンタル屋の店頭に並ばないじゃないですか。それで、コツコツ貯めた小遣いはたいて買ったんですよね。今は、欲しいCD一枚買うのに、なんの躊躇もないですけど、当時はどえらい勇気が要りました。

これ一枚で月の小遣い以上の金額か…(ゴクリ)

Bon Jovi初のベスト『Cross Road』からBon Joviにハマる

思い切って買って実際に聴いてみたら、良い曲満載のとんでもないベストアルバムで、特にBon Joviにハマりまして、Bon Joviだけはオリジナルアルバムも追加で買い揃えました。

そしたら、ベストの選外にも名曲が山程ありまして、「何だこのバンド、とんでもねーな」とさらに深みにハマっていったのでした。

このBon Jovi初のベストアルバム『Cross Road』は、私の記憶が確かならば、全世界で5000万枚以上売れまして、二匹目のドジョウを狙ったというわけでもないのでしょうが、多くの洋楽ロックバンドがベストアルバムを次々に発表する流れが巻き起こりまして、私はそれに乗っかって、好きなバンドの発掘に勤しんだのでありました。

おかげで、ベストから入ったバンド、たくさんあります。Mr. Big、Def Leppard、Van Halen、Roxetteなどなど。友人からは、またそんなベストばっかり買っちゃって、などと冗談半分に諫言を頂いたこともあるんですけど、でもやっぱり便利な面もあるのは間違いないですよ。

入門期なんて特に、右も左もわからず、当時学生だったので予算も限られていましたし。そんなとき、ベストアルバムがあると、売れている人気バンドなのだろうという指標にもなりましたし、一枚で代表曲をまとめてチェックできるので出費面でも助かりましたし。

一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるロックの名盤

先日刊行されました、大好きな漫画である『BLUE GIANT SUPREME』9巻の中に、こんなセリフが出てきます。

「NUMBER FIVE」は、曲を追うごとに熱量が上がります。そこには一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるんです。

『BLUE GIANT SUPREME』9巻より

主人公・宮本大がヨーロッパで初めて組んだバンド、NUMBER FIVE。そのバンドのデビュー・アルバムの録音に携わったレコーディング・エンジニアから、バンドに対してのある無茶とも言える提案を通すにあたっての、説得材料です。

このセリフは、すっと違和感なく胸に染み込んできました。確かに。

音楽アルバムの中には、聴く人それぞれの好みに左右されて、好きな曲に嫌いな曲、イマイチな曲、なんにも引っかからない曲、大好きな曲と、たとえ大好きなバンドの曲でも色々と出て来ちゃうんですけど、ランダムで聴いてるとスキップしちゃう曲でも、アルバムの曲順通りだと不思議と飛ばす気にならずに聴けちゃったりもするわけで。

アルバムを通してのストーリー性というかドラマ性というか、無視できないそういった流れは確かにあるよなぁ、と腑に落ちました。

いくら好きな曲でも、ランダムで聴いていると、なんとなく気分じゃなかったり、雰囲気にそぐわないなと感じたら、飛ばしちゃうこともありますからね。

ヒット・シングルを網羅したベスト・アルバムは、収録曲ひとつひとつをとってみればとても魅力的なんですけど、野球で例えると四番打者ばっかり並べているナインみたいなもので、繋がりとか流れは希薄ですよね。

ベスト・アルバムにはベスト・アルバムで魅力もありますけど、オリジナル・アルバムにはそこでしか聴けない、なにか特別な魅力があります。

画像はPixabayより

一曲ではとらえられない、何曲かを通してのドラマがあるロック・アルバム

私は普段、洋楽ロックが好きで愛聴しているんですけど、好きなアルバムのことを考えてみると、やっぱりあるんですよね。曲順通りの流れが生み出している起伏が、しっくりと耳に馴染んでくる感覚が。

これが、ストーリー性やドラマってことなんだろうな、と解釈しています。

好きな曲って、ただその一曲を聴くだけでもいいんですけど、アルバムの流れを通して聴くとまたひと味違う感銘があるんですよねぇ。

そんなわけで、私が大好きな洋楽ロックの名盤の中でも、特にストーリー性やドラマを感じるアルバムを挙げていきます。

Fair Warning 『Go!』

ドイツ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Fair Warningの三枚目のアルバム。デビューから二枚立て続けに傑作をリリースしていたんですけど、この三枚目で大化けを果たしました。

アルバムの序盤が特に強烈で、カタパルトに射出されたジェットコースターのようなめくるめくメロディが堪能できます。

再発盤にはボーナス・トラックが山盛り追加されていて、お得っちゃお得なんですけど、思いっきり蛇足になってしまっているので、オリジナル盤で聴きたい。

Harem Scarem 『Mood Swings』

カナダ出身のメロディアス・ハードロック・バンド、Harem Scaremの二枚目のアルバム。デビュー作も原石のような魅力が散りばめられた傑作でしたが、この二枚目で緻密な音作りと彩り豊かな編曲を披露して、度肝を抜きました。

きらびやかでありながら重厚なサウンドは見事ですし、捻りの効いたメロディを畳み掛けてくる展開も強烈ですし、個性豊かな楽曲たちが一枚のアルバムとしてまとまっている構成も素晴らしい。

My Chemical Romance 『The Black Parade』

先日再結成を発表したアメリカ出身のロック・バンド、My Chemical Romanceのメジャー二作目にして、全世界で大ブレイクを果たした傑作。

前作で披露した、狂気と紙一重の激情を残しつつも、より洗練されたサウンドとメロディが素晴らしい。考え抜かれたアルバム構成により、アルバム全13曲で一曲となっているような、絶妙の流れが秀逸。

Elliot Minor 『Elliot Minor』

アメリカ出身のロック・バンド、Elliot Minorのデビュー・アルバム。ゴージャスなサウンドといい分厚いハーモニーといい、これがデビュー作とは信じがたい完成度。

おしゃれな音なのに小綺麗にまとまってなくて、ファンクっぽさを感じさせるテンションの高いロックを披露しています。このバランス感覚は凄まじいですね。

激流下りで転覆寸前のスリルに翻弄された、そんな気分が味わえる一枚。

Mae 『The Everglow』

CCMロック・バンド、Maeの二作目。前作とこの次のアルバムからしたら、突然変異としか思えない傑作。バンドに一体何が起こったのでしょうか。

コンセプト・アルバムのようで、プロローグから始まりエピローグで終わる、という構成になっています。美しくもダイナミックなメロディの連続が生み出す豊かな起伏は、山奥の神秘的な渓流のようです。

91 Suite復活!6曲入りEP『Starting All Over』をリリース!

91 Suite復活!

2019年9月上旬、嬉しいニュースがありました。

スペイン出身のメロディアス・ハード・ロック・バンド、91 Suiteの復活です。

2ndアルバム『Times They Change』のリリースから早14年、この間に別プロジェクトからのアルバム発表もありましたが、このまま静かに消えていくのかとばっかり思っていました。

いやぁ、まさかでしたね。

2019年9月6日、バンドは突如として、ひっそりと、6曲入りEP『Starting All Over』をリリースしたのです。

画像はPixabayより

91 Suiteとは

91 Suiteは、スペイン出身のメロディアス・ハード・ロック・バンドです。切なげな歌声と、郷愁を誘うような哀愁のメロディが魅力的なバンドでした。

今回のEPの前に、二枚のフルアルバムを発表していたのですが、いずれも高品質な極上メロディアス・ハードが堪能できる名作で、ファンの心をガッチリと掴んでいたバンドでした。

ディスコグラフィ

  • 『91 Suite』(2001)
  • 『Times They Change』(2005)
  • 『Starting All Over』(2019)←New!

91 Suiteとしては、2005年の『Times They Change』を最後に、長らく音沙汰がなかったことになります。

2014年に、元91 SuiteのヴォーカルとギターのふたりでSecretというユニットを組んで、『The End Of The Road』というアルバムをリリースしていました。

こちらも、91 Suite時代から何ら変わりのない高品質メロディアス・ハード作品で、今後はこのSecretとして活動していくのかと思いきや、なかなか次が出てこなかったので心配していたところでの、まさかの91 Suiteの復活であったのです。

続報に期待

今回のEP『Starting All Over』ですが、デビュー当時から微塵もブレないどころか、ますますパワーアップした彼らならではのメロディアス・ハードが堪能できる作品に仕上がっています。

全6曲どれをとっても素晴らしく、復活後の活動が順調に軌道に乗ることを、願わずにはいられない仕上がりです。

より具体的に言えば、可及的速やかな3rdアルバムの制作ですね。

私個人のわがままを言わせてもらうならば、今回のEPから新アルバムへの収録は多くても半分以下、それでいてこちらの期待を上回るクオリティの新アルバムの発表です。

収録が見送られた楽曲はボーナストラックに。これで完璧。

いささかハードルが高すぎるような気もしますが、これまで名作ばかりをリリースしてきた彼らのこと、このハードルをも越えてくれるに違いないと、期待しています。

最後に

私は、今回の新EPの発表を、TwitterでのTAKEさんのつぶやきで知ったのですが、それからTwitter内を検索してバンドの公式アカウントを見つけたんですけど、バンドの最新のつぶやきが2017年10月29日で、14年ぶりの新曲発表というビッグ・トピックにも関わらず何も更新されていなかったのを見て、もったいないな、と感じました。

YouTubeの公式アカウントでは、新曲の動画が投稿されていたのに、なんでそれを自ら積極的に拡散しようとしないのだろうか、と。

もっと発信しましょうよ、自ら。自分たちの新曲発表にだんまりで、いつTwitterを更新するっていうんですか。

権利が絡んだ大人の事情とか、こちらが知る由もないしがらみのせいでやりたくてもできない、という現状に置かれているのかもしれないですけど、これは大いなる機会の損失ですよ。せっかくの名EPなのに。

あのつぶやきを見逃してたら、このEPの存在を、ずっと知らないままだった可能性が高いわけですからね。

SNSを上手く活用した自分たちの活動の売り込みにも、今後は力を入れてほしいと切に願います。