洋画は字幕に限るとイキっていたおっさんが映画『シング:ネクストステージ』の日本語吹き替え版を観たら泣かされた話
私は普段、洋画は字幕版を観ています。日本語吹き替え版を観ることがあるとしたら、洋画のテレビ放送を観るときくらいでしょうか。
小中高生の頃にテレビでよく観ていた『ダイ・ハード』や『ターミネーター』などは頭の中に日本語吹き替えのイメージが定着しているので観れるのですが、最近の映画は無理ですね。
面白そうな新作映画を映画館で観たいとなったとして、字幕版の上映時間が微妙で日本語吹き替え版の上映時間がドンピシャだったとしたら、観劇を諦めるかもしれません。それくらい私は日本語吹き替え版を避けています。
それがなぜ、今回『シング:ネクストステージ』に限って日本語吹き替え版を観たのかというと、大好きなB’zのシンガーである稲葉浩志さんが伝説のロックシンガー、クレイ・キャロウェイ役で声優に初挑戦しているからです。
予告でセリフを喋っているところを少しだけ見れるのですが、それを見てなお(嘘だろ、ほんとに声優やってるよ…マジかよ…)と半信半疑だったくらい、衝撃的なニュースでした。
もしこのキャスティングがなかったらたぶん観てないですね。スルーしていたと思います。現に前作『シング』はサントラこそ買ったものの、映画は観ていないですしね。
公開初日のレイトショーで観てきたのですが、これが予想を遥かに上回る素晴らしさでした。
泣きました。圧倒的洋画字幕派の涙腺をも緩ませる日本語吹き替え版でした。
さすが、字幕しか認めないという『シング』にあって吹き替え版の権利を勝ち取っただけのことはあります。素晴らしいクオリティでした。
上映中に小さな子供が、たぶんトイレだろうと思うのですが、忍び笑いをもらしながら数回席から出入り口までドタドタと足音を立てて走って往復されて(勘弁してくれよ)と閉口したのですが、上映終了後に胸を満たしていた感動はこれしきのハプニングではゆるぎませんでした。
最愛の妻を失い世捨て人になったものの心の奥底に優しさの残るキャロウェイ、甘やかされて自由奔放に飛び回るポーシャ、引っ込み思案で可憐な乙女心を応援したくなるミーナ、鬼指導から自信を失うもそれを克服するジョニー、みんな素晴らしかったです。
他にも、暴走超特急なムーン、キャロウェイの心を解きほぐしたアッシュ、お調子者だが憎めないグンター、決めのシーンで飛び出せずに一度は役を失うも取り戻すロジータ、ムーンを献身的に支えるミス・クローリーなど、多彩な登場人物は誰も彼もが魅力的です。
キャロウェイの心を動かしたアッシュの弾き語りも素晴らしかったですが、一番感動したのは最後のデュエットでキャロウェイが歌い出した瞬間ですね。
感極まりすぎちゃって、劇中でどんな歌声を披露してくれたんだったか記憶にないんですよね。上映終了直後にはそんなことにも気づいてなくて、しばらく経ってから(あれ、そういえばどんな歌声だったっけ?)と愕然としました。
これが一番のお目当てで吹き替え版を観たのに…。
これから観る人は、この情報過多社会でそれは難しいでしょうけど、誰がどの役を担当しているのかまったく知らないまっさらな状態で、何も身構えずに観てほしいなぁと願いたくなってしまいます。
例えば、予告編でちらっとポーシャの歌声が聞けるんですけど、これを劇場でいきなり聞かされたときの衝撃といったら!ぽっと出に役を奪われて敗北感に打ちのめされるロジータと同じくらいこちらも圧倒されましたからね。あとでインタビューを見たら、普段の話し声とぜんぜん違うので二度びっくりですよ。
ミーナ役も誰か知らずに観ていたので、話し声は異様に可愛らしいし歌は異常に上手いしで(誰だこれ??)と疑問に思いながら観ていました。エンドロールでその正体を知って異常に歌が上手いのには納得しましたが、可愛らしいセリフの喋りも上手すぎる!前作では彼女の吹き替え挑戦が売りだったんでしょうね。
取り上げる曲の選曲がまた憎いんですよね。踊れるポップスからノリのいいロック・ナンバーまで、キャッチーな名曲のオンパレード。
劇中劇のタイトルが、北欧の有名ハードロックバンドの名盤タイトルや、そのハードロックバンドに在籍していたギタリストが新たに立ち上げたバンド名と同じだったのにも、不思議な縁を感じました。
できれば、映画館であと二回観たいですね。字幕版で一度。耐性をつけて、今度こそ冷静に二度目の吹き替え版。他にも観たい新作映画があるので悩ましいですが…。
しかし参りました。まさか『シング』がこんなに素晴らしい映画だったとは。ひょっとして、前作をスルーしていたのはとんでもない悪手だったのでは…。
『シング』をスルーしていたおれのバカ!アホ!間抜け!
自分で自分を罵りながら、前作『シング』のBlu-rayを注文するのでした。
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