劇場で『Bon Jovi From Encore Nights』を観てきた

劇場で『Bon Jovi From Encore Nights』を観てきた

当初は、観に行くの無理だな、と諦めムードでした。Bon Joviのライブ映画『Bon Jovi From Encore Nights』のことです。

というのも、上映される映画館が限られている上に、基本的に上映は6月10日木曜日の一日のみで、しかも上映時間も18時50分からという、定時ダッシュ決められたとしても最寄りでも無理ゲーじゃん、という絶望の状況だったのです。

それでも観に行くのであれば、全国でも数ヶ所しかない一週間上映している映画館まで行くしかない状況でした。名古屋か、富士宮まで。

ライブ映画を観るために、片道2〜3時間かけて映画館まで行くだなんて、ちょっと現実的ではないというか、普通じゃないですよね。

Bon Joviは洋楽ハードロックが好きになったきっかけのバンドで、特別な思い入れのあるバンドのひとつですが、それにしたってこのハードルは高い。それで、まあ見送るしかないかな、と諦めムードだったのです。

それが、岡崎でも一週間上映している、という書き込みを見て(あれ?おかしいな、一週間上映している映画館は、一番近くで名古屋か富士宮だったはずだけど…)と首を傾げながら再度公式サイトで上映期間をチェックしてみたら、日程がいつの間にか変更されていたのか、最寄りの映画館でも一週間上映になっていたので、これなら行ける!とテンション上がって劇場に突撃してきました。

日曜日の夜だからというのもあったのか、劇場は人影もまばらで閑散としていました。

券売機でチケットを買い求めると、上映30分前に一番乗り。ど真ん中よりやや後方のベストポジションをキープし、ひょっとしたら貸し切りかとドキドキしながら時間を待ちました。

さすがに貸し切りではありませんでしたが、自分を入れても観客は四人だったので、ほぼ貸し切りのようなものでしょう。日曜の夜だからガラガラだったのだと、土曜の夜は盛況だったのだと信じたい。

観劇に際して、私にはひとつ懸念事項がありました。

Jonの相棒ともいうべきギタリストRichie Samboraの脱退の影響です。抜群に上手い歌によるコーラスとギタープレイでバンドに華を添えていた存在があまりに大きすぎて、Phil Xを代役に迎えて果たしてその穴を埋められているのだろうか、という心配です。

結論から言えば、その心配は杞憂でありました。正式メンバーとして迎え入れているだけあって、コーラスにギターソロにと想像以上の大活躍。ひと安心するとともに一抹の寂しさもあって、複雑な胸の内もありますけど、懸命にこなしている姿には胸を打つものがありました。

ライブで聴くと、家や車でCD音源を聴いているのとはガラリと受ける印象が変わる曲があるんですけど、今回もありました。最近の曲と、あんまり好きじゃなかった曲です。

観劇前にセットリストをうっかり見てしまったので、最近の曲わりと多めかぁ、と落胆してたんですけど、その最近の曲もけっこう良かったんですよね。『Have A Nice Day』の頃までは好きでアルバム毎回買ってたけどなぁ、という人も、目からウロコ間違いなしの、最近のBon Joviのかっこよさが溢れてます。

特に、”Story Of Love”。もはやプロデューサーというよりも、Bon Joviのシックスマン的な存在感でこのライブにギターで参加していたJohn Shanksが渋いトーンでギターを泣かせていて、沁みました。もともと、『2020』収録曲の中では好きな曲上位でしたけど、さらに好きな曲になりました。

ついで、”Keep The Faith”。正直、この曲はあまり好きではなかったんですけど、何ならこの曲の代わりに”I Believe”か”I Want You”をベストに入れてくれればいいのにとか思ってましたけど、ライブで聴くとベースラインとシャッフルビートが際立って、雰囲気が一変します。実はライブ映えする曲だったのですね。こんなかっこいい曲だったっけ?と驚きました。

Jonの声もよく出ていて調子良さそうで、銀髪になり、シワが目立ち、老いが隠し切れなくとも、Bon JoviはBon Joviで相変わらず途方もなくかっこいいバンドなのだ、ということがこのライブ映画を観てよくわかりました。

生ではなくスクリーン越しというのが悲しかったですが、コロナ禍のせいで来日ライブ開催は壊滅的で新作映画の上映も寂しい現状に、イベントへの参加に飢えていたので、久々に心躍りましたし楽しかったです。

願わくば、Mr. BigやAerosmithといった人気ハードロック・バンドでもこのEncore Nightsが開催されてシーンが盛り上がると嬉しいですね。

Bon Joviのベストアルバムでの”Lay Your Hands On Me”の編集、雑すぎでは?

Bon Joviのベストアルバムでの”Lay Your Hands On Me”の編集、雑すぎでは?

ライブ映画『Bon Jovi From Encore Nights』を観るために最寄りの劇場に向かう道すがら、愛車の中でiPhoneに入れたBon Joviのベストアルバム『Greatest Hits – The Ultimate Collection』を聴いて気分を盛り上げていたんですけど、前々から腑に落ちなかったことがついに消化されました。

まあ、タイトルを見てのとおりです。

Bon Joviのベストアルバムでの”Lay Your Hands On Me”の編集、雑すぎやしませんか?という話です。

10周年ベスト『Cross Road』でも同様の編集がされています。

上に貼り付けた公式MVを観てのとおり、フルバージョンだとイントロも長ければアウトロも長いので、アルバム一枚の中にギリギリまで収めたいベストアルバムに収録となると、ある程度のカットも致し方ないのかもしれません。

イントロはまだわかるんですよ。あまりにも長すぎるので、ばっさりカットもしょうがないでしょう。

しかし、アウトロのフェードアウトはないですよ。ライブエナジーが迸っているあの白熱のアウトロをフェードアウトさせます?アウトロこそがこの曲で一番美味しいところなんじゃないかと思うんですけど。この扱いはちょっとあんまりじゃないですかね。

あのアウトロをフェードアウトさせるんだったら、他に一曲外して…そうですね…例えば、日本に忖度した”Tokyo Road”とか、Jonのソロの”Blaze Of Glory”とかを外してもらって、その代わりに”Lay Your Hands On Me”をフルで入れてくださいよ、といいたくなってしまいます。

CDからiTunesライブラリに音源を取り込む際のビットレートをMP3の192kbpsに決めた理由

CDからiTunesライブラリに音源を取り込む際のビットレートをMP3の192kbpsに決めた理由

あれは何年前でしたかね。二十年は経ってないですよね。十五年前くらいでしょうか。

iPhoneが登場する少し前。

AppleのiPodがWindowsにもついに対応した!と騒然となり、それまでWindows機しか触ったことのなかった自分にも、Appleという何やらすごいコンピューター会社があるらしい、と認知されるようになりました。

たしか、どなたかがiPodを買って使い始めたということをブログかHPで報告していて、それで更に気になって調べてみたら、デザインは可愛らしくて素敵だわ今まででは考えられなかったほど大量の楽曲をコンパクトに持ち歩けるわ、物欲のツボを刺激しまくるとても魅力的な製品で、欲しくて欲しくてしょうがなくなり、ついにiPodを買ってしまったのでした。

iPodで音楽を聴くためには、iTunesという音楽管理ソフトを使用する必要があって、iPodで音楽を聴きたいがために、iTunesを介して手持ちのCD音源をせっせとパソコンに取り込んでいくことになります。

そこで突き当たるのが、CD音源をパソコンに取り込む際のビットレートをどうするのか、という問題です。

ビットレートとは、音質の善し悪しを左右する数値で、数字が小さければ小さいほどデータ量が少なく音質も悪く、大きければ大きいほどデータ量も多くなるが音質も良くなる、その指標となる数値です。

これは、写真や動画の画質データにも関連する悩みです。PC内に保存する画質や音質が良ければそれに越したことはありませんが、かといって画質や音質が良すぎるとデータ量が膨大になることを意味し、HDDやメモリの残量を逼迫しますし、ひとつひとつのデータが重くなるため転送のやり取りや編集にも時間がかかります。スペック次第では、そこにストレスを感じるようになることもあるでしょう。

したがって、CD音源をパソコンに取り込む前に、自分が満足(もしくは我慢)できる音質と、HDDの容量と、パソコンのスペックとを天秤にかけて、ベストバランスを探る必要があります。

iTunes標準だと、iTunes Plusの256kbpsがCD音源取り込みの基準になっています。これだとファイルが特殊で再生機器を選ぶかもしれないことと、データ量も大きいと考えられたため、汎用性の高いMP3での取り込みがベストだろうと考えました。

MP3では128kbpsが標準音質となっていましたが、いくらなんでも128kbpsではCDからの音質劣化が大きすぎて物足りませんでした。

案の定、良音質の160kbpsと高音質の192kbpsと聴き比べてみたら、128kbpsは明らかにスカスカ。160kbpsと192kbpsは若干192kbpsのほうが音の密度というか鮮度が高いように聞こえる。一応もうひとつ上の224kbpsも聴き比べてみましたが192kbpsとの差がよくわからず。で、MP3の192kbpsで取り込んでいくことに決めました。

当時はまだまだHDDの容量も少ない上に高価で、パソコンのスペックも低かったですし。容量を圧迫せず、再生機種も選ばない納得の音質は、MP3の192kbpsだという判断です。

もし今から取り込み始めるとすれば、HDDも大容量化してだいぶ安くなってますし、パソコンのスペックも申し分ないので、MP3の320kbpsか256kbpsに設定していたかもしれません。あの当時は、まさか家でもパソコンからのAirPlayでMP3メインで音楽を聴くようになるとは思っていませんでしたから。

どこを落としどころとするか、これは人によって様々でしょう。MP3の128kbpsでも充分だと感じる人もいれば、ハイレゾでも物足りなく感じる人もいます。有線接続ならまだしもBluetooth接続なんてまっぴらごめんだ、なんて人もいます。

ハイレゾでも物足りない、なんてなっちゃうと大変ですよ。音源の音質そのものの追求はもちろんですが、再生機器へのこだわりも天井知らずになってしまいます。再生機器にお金をかければかけるほど高音質化は見込めますが、果たしてそれが自分の好きな音かというと、決してそうとは限らないのがオーディオの恐ろしいところです。

予算内で、とりあえず満足、納得のいく、自分が好きな音に辿り着けるかどうか。

その意味では、MP3の192kbpsで、家ではパソコンからAirPlayでコンポに音を飛ばし、愛車ではiPhoneからBluetoothでカーオーディオに音を飛ばし、JBLのスピーカーから流れてくる音に満足できている自分は、幸せ者なのかもしれません。

2018年に解散したThe Poodlesのヴォーカリスト、Jakob Samuelのソロアルバム『CoExist』が素晴らしい

2018年に解散したThe Poodlesのヴォーカリスト、Jakob Samuelのソロアルバム『CoExist』が素晴らしい

ドラマーとしてミュージシャンのキャリアをスタートし、様々なバンドを渡り歩く過程でヴォーカリストに転向し、The Poodlesに加入したことでついに安住の地を得た(そのThe Poodlesも2018年に解散してしまったのですが)苦労人、Jakob Samuelの2ndソロアルバム『CoExist』がめちゃくちゃ素晴らしい。

収録内容はとにかくコンパクトです。11曲収録で約37分。短い曲は2分台後半、長い曲でも3分台後半と、4分を超える曲がありません。

バンド用の楽曲ではないため、ステージ進行で各パートのソロや見せ場の差し込みやすさを考えない曲作りをした結果、アレンジが極限まで研ぎ澄まされた楽曲が揃ったのかもしれません。

かといって、楽曲の展開がシンプルすぎたり、アレンジがそっけなかったりなんてことは一切ありません。様々な楽器サウンドのアクセントは随所に効いていますし、重めのAメロBメロから開放的に弾けるようなサビメロにつながったりと、展開にも捻りが効いています。

重く骨太なギターが唸りを上げる曲もあれば、控えめなアコースティックが背後で軽やかに鳴る曲もあり、ファンキーなリズムが跳ねる曲が飛び出してきたかと思えば、ホーン・サウンドがゴージャスで気分がぶち上がる曲が流れてきたりと、一曲一曲の短さからは想像もつかないバラエティ豊かな高品質楽曲群がひしめいています。

Jakob Samuelの歌声がまた魅力的なんですよね。渋さもあれば色気もあり、爽快さもあればときに豪快でもあったりして。

バンド用に楽曲アレンジをすり合わせる必要がなくなり、自分の欲望に忠実な楽曲を練り上げた結果、Jakob Samuelの才能が炸裂し、超キャッチーな歌メロが満載のメロディック・ロック・アルバムに仕上がっています。

Night Travelerが紡ぐ穏やかで優しいメロディが素晴らしい

Night Travelerが紡ぐ穏やかで優しいメロディが素晴らしい

かつて、これほど夜に似合う音楽があっただろうか。

思わずそんな感傷的なことをひとりつぶやいて遠くを見てしまうほど、Night Travelerの音楽は夜にハマります。

これはもう、彼ら自身が確信的に狙っている戦略でしょう。そのことは、バンド名だけでなく、YouTubeでの彼らのアイコンが夜の街を背景にしていたり、EPのアートカバーが夜の路地裏っぽかったり、MVが夜や暗い落ち着いたトーンの中で撮られていることからも、明らかです。

心にそっと優しく寄り添ってくるような、見え透いていないさりげない気遣いに嬉しさを感じるというか、派手さはないんですけどただそこにあるだけでありがたさを覚えるような、生活に疲れた身体に染みてくる音楽です。

YouTubeの概要欄には歌詞が載っているだけで、奏者などのクレジットがないので詳細がわからないんですけど、MVの映像から判断するに、ヴォーカル兼ギターの二人組ユニットにリズム隊がサポートしているか、四人組のバンド形態かのどちらだと思われます。アイコンはふたりのシルエットになっているので、二人組の可能性のほうが高いでしょうね。

そんな彼らの音楽には、わかりやすい派手さこそありませんが、かといってメロディラインが平坦でつまらないなんてことは一切なく、あっさりしつつも芯のあるリズムが、穏やかに語りかけてくるような歌声と、粒立ちが美しいギターのトーンを引き立てています。絶妙。

ヴォーカルはふたりで交互に歌っているようで、どちらも声量や技巧で圧倒するタイプではないですが、音楽性とのマッチングにおいて唯一無二の歌声です。Night Travelerの音楽性が不変である限り、シンガーは彼らにしか務まらないでしょう。

ギターも、ふたりとも実は超絶テクニックを持ち合わせながら、あえて抑えて丁寧に美しいトーンを響かせているプレイなのかな、という印象ですが、極上の余韻に酔いしれます。徹した仕事が心憎すぎる。

彼らの音楽を聴いていると、無性に夜のドライブに繰り出したくなります。遅すぎず早すぎず、ちょうどいい速度で愛車を流しながら彼らの音楽を聴けば、ここではないどこかにワープできるんじゃないか、そんな期待すら抱いてしまいます。

郷愁を誘うリズムが切々と刻まれていて、心に訴えかけてくるんですよね。

人肌恋しくて寂しくて切なくてたまんない深夜にうっかり聴いちゃったら、涙が止まらなくなっちゃうんじゃないでしょうか。

関連記事