Ronnie Atkinsの2ndソロアルバム『Make It Count』が素晴らしい

Ronnie Atkinsの2ndソロアルバム『Make It Count』が素晴らしい

デンマーク出身のハードロック・バンドPretty MaidsのシンガーであるRonnie Atkinsの二枚目のソロアルバムが発表されました。

前作『One Shot』が発表されたのは去年なので、二年連続での新譜リリースとなります。

デビューしたばかりの新進気鋭の新人なら、短いスパンで次から次へとリリースを重ねるのもわかりますが、Ronnie AtkinsがPretty Maidsを結成したのは1981年とのことなので、40年以上の経歴を誇る大ベテランです。大御所といっても差し支えないでしょう。

そんな大ベテランがデビュー直後の若手のような勢いで新譜をリリースするのは、異例中の異例といえるでしょう。

まるで、勝負を急いでいるかのようです。

それもそのはずで、Ronnie Atkinsは現在、ステージ4の肺がんに侵されていて、闘病中なのです。彼がまるでなにかに急き立てられているかのように創作活動に打ち込んでいるのは、そのためです。まるでおのが命を燃やし尽くさんとするかのような楽曲制作に打ち込んでいるのは、そのためです。

アルバムに収録されている楽曲はどれも素晴らしく、鬼気迫るものがあります。

胸が熱くなる勇壮で感動的なサウンド、繋がりが滑らかで親しみやすく耳に引っかかるメロディ、闘病の悪影響など微塵も感じさせない力強い歌声。

前作も充実した傑作でしたが、今作も負けず劣らずの陣容です。

今作では、曲によって様々なギタリストが代わる代わるギターソロを披露しているのですが、どのソロもトーンやサスティーン、フレーズが魅惑的で、楽曲を鮮やかに彩り華を添えていて最高です。

ミックスとマスタリングはH.E.R.O.の3rdアルバム『Alternate Realities』のミックスも手掛けているJacob Hansen。作品のクオリティを底上げする心憎い仕事ぶりです。

病魔と戦いながらも、Ronnie Atkinsの創作意欲は衰えるところを知らないようで、夏頃にはEclipseのErik Martenssonと組んでいるプロジェクトNordic Unionの新作も控えているそうです。

この燃え盛る炎のようなRonnie Atkinsの創作意欲が持続する限り、こちらも傑作に仕上がっているのは想像に難くありません。

Bon JoviのライブDVD『Live At Madison Square Garden』を買った

Bon JoviのライブDVD『Live At Madison Square Garden』を買った

買っちゃいました。タイトルのとおり、Bon JoviのライブDVD『Live At Madison Square Garden』を。しかも輸入盤。約1800円の安さに負けて。

格安輸入DVDは、去年Bon Joviのベストヒットビデオ集『Greatest Hits The Ultimate Video Collection』を買ったら盤面傷だらけ(再生、スキップ、チャプター選択などに影響なかったのでそのまま所持しています)のものが届いて懲りたはずが、また冒険したくなってしまいました。

というのも、そのBon Joviのベストヒットビデオ集ですが、メガヒット曲17曲のMVとそのライブ版の計34曲という冗談みたいな特大ボリュームなんですけど、ライブ集は様々な公演からの寄せ集めだったからです。

寄せ集めの何が悪いって、シームレスに繋がっていないので、一曲終わるごとにブルーレイ再生機から読み込み動作音が鳴り、ぶつ切り感が大きい。これに想像以上に興を削がれてしまうのです。

小さな会場でのしっとりとしたアットホームなアコースティックセットや、巨大なスタジアムやアリーナでのエネルギッシュなフルセットがぶつ切りで混在していて、継ぎ接ぎ感甚だしくて没入感に欠けるため、ライブ版は寄せ集めよりも一夜の公演通しのほうがいいな、としみじみと感じ入ってしまいました。

そこで、ベストヒットライブ集の中でも一際輝いているマディソン・スクエア・ガーデンでのライブDVDを買ってみることにしました。輸入盤しかありませんでしたが、安かったので。

リージョンコードについて明記されていなかったのが不安ではありましたが、無事に再生できました。盤面にも擦り傷は皆無だったのでひと安心。当たり外れがあるのかもしれないですね。

この『Live At Madison Square Garden』には、アルバム『Lost Highway』のリリースに伴う2008年のワールドツアーの模様が収められています。

会場はアメリカ、ニューヨークにあるアリーナ、マディソン・スクエア・ガーデン。NBAファンにはニューヨーク・ニックスの本拠地としてもおなじみのあのアリーナです。

360度客席に囲まれた臨場感満点のステージで、Bon Joviが客席からの熱気にも負けない、白熱のステージを繰り広げています。

アルバム『Lost Highway』のツアーであるにも関わらず、アルバムからの曲は少なめでベストヒット的なセットリストになっているところが、嬉しくもあり微妙でもある、ちょっと複雑な点ですね。

往年のメガヒット曲がたくさん聴けるのは嬉しいですが、その反面アルバムの曲があまり聴けないのは残念です。

劇場で『Encore Night』を観たときにも同じことを感じたのですが、”Keep The Faith”はスタジオ版をCDで聴くと正直それほどでもないのが、ライブだとシャッフルビートとベースラインが際立って、途端にノリノリで楽しい曲に変貌するのが面白いですね。いわゆる、ライブ映えする曲だということなのでしょう。

“Always”や”I’ll Be There For You”といったバラード曲では、アドリブジャムセッションのような熱気を帯びたアウトロで、RichieのギターとBryanのキーボードのソロバトルのような競演が聴けて、最高です。

公演まるごと収録ではないというのは残念ですが、映像も音質もクオリティ高く、Bon Joviのパフォーマンスも絶好調なので、1800円はバーゲンプライスです。お買い得にもほどがある。

やっぱり、Bon Joviはかっこいいですね。かっこいい。知ってましたが再確認しました。

ベスト盤『Cross Road』で洋楽ハードロックの世界へと誘い、劇場版ライブ『Encore Night』で最近のアルバムへの再評価を促し、『Greatest Hits The Ultimate Video Collection』でライブDVDへの興味を引き、そのライブDVD『Live At Madison Square Garden』でライブバンドとしてのBon Joviの魅力を見せつける。

私の音楽愛好家歴に楔を打ち続ける。いくつになっても、いつまでもBon Joviはかっこいい。永遠に特別なバンドのひと組です。

The Rasmusにハマったきっかけ

The Rasmusにハマったきっかけ

The Rasmusはフィンランド出身のロックバンドです。陰りのある憂いを帯びたハードなサウンドで、飛び切りキャッチーなロックを聴かせてくれるバンドです。

1996年にデビューアルバムをリリースしているのですが、私が彼らのことを知ったのは、5thアルバムの『Dead Letters』がリリースされた頃です。2003年頃ですね。

どこで知ったかというと、当時輸入盤の個人輸入でよく利用していた、ドイツのメロディック・ロック専門通販CDショップAOR Heaven(残念ながらレーベルと通販業務の終了が発表されています…)に入荷していたのです。

店主の激推しコメントに(ホントかぁ?)と眉唾ながらも、まとめ買いの中の一枚に含めました。

当時は今みたいに何でもかんでもYouTubeで試聴できなかったので、推しコメントやジャケットや誰のプロデュースなのかといった情報から、このバンドは自分の好みなのだろうかと推し量るしかありませんでした。

斜に構えていたのでそれほど期待は大きくなかったのですが、どれどれと聴いてみたら独特の世界観をとても聴きやすいキャッチーなハードロックに落とし込んでいて、一発で惚れました。

すぐさまAOR Heavenをチェックし直すと、その前の4thアルバム『Into』の在庫があったのでそれも取り寄せて聴いてみたら、『Dead Letters』と比べるとやや明るくポップな曲調ではあったものの、同一路線のキャッチーなロックに嬉しくなりました。

この『Into』と『Dead Letters』を聴いたことが、The Rasmusの音楽に惚れ込んだきっかけです。

惚れ込んだあまり、『Into』と『Dead Letters』と6thアルバム『Hide From The Sun』はそれぞれ3枚ずつ買うことになりました。輸入盤やらボーナストラック追加再発盤やら日本盤やら紙ジャケット再発盤やらで。

一番最初に買った輸入盤は妹にあげたので手元にはありませんが。

The Rasmusは音楽が魅力的なだけじゃなく商売も上手なので、ついつい財布の紐が緩んでしまいます。同じアルバムを二枚買うことはままあっても、三枚となるとなかなかないですからね。さすがに。これが惚れた弱みってやつですかね。

ただ、誤算もありました。初期の彼らの音楽性は、今とは全然別物だったのです。勝手に盛り上がって期待を押し付けて、そこから外れていたのでがっかりしてしまいました。

さらに彼らのバックカタログを欲した私は、1stから3rdアルバムも探して手に入れたのですが、ファンクっぽいというか、ガチャガチャとしたサウンドでやけに陽気なポップロックで、4th以降とは似ても似つかない音楽性だったのでずっこけました。

3rdと4thの間に一体何があったのかと、バンドに聞いてみたくなるほどの音楽性の変化です。

4th以降のアルバムを聴いてThe Rasmusにハマると、必然的に過去作にさかのぼっていくことになると思いますが、私のように似たような音楽性を期待しているとずっこけるので気をつけましょう。

つい先日には、ギタリストのメンバーチェンジという衝撃の一報がありましたが、ヒットソングライターのDesmond Childと組んだ新曲”Jezebel”でEurovision Song Contest 2022へのエントリーも発表されました。

新しいアルバムも近いうちに聴けるでしょう。彼らのますますの活躍が楽しみです。

Queenの二枚組ライブDVD『Live At Wembley Stadium』を買った

Queenの二枚組ライブDVD『Live At Wembley Stadium』を買った

2021年の末、NHKでこの1986年7月に行われたウェンブリー・スタジアムでのQueenのライブがテレビ放送されまして、当初放送を観るつもりだったんですけども(あれ?なんか時間が短くないか?)と気になって調べてみたら、案の定ばっさりカットされてたのでがっかりしまして、それならばとライブDVDを買いました。

ホントはどうせ買うならBlu-rayが欲しかったのですが、DVDしかなかったので妥協しました。1986年7月12日のライブの模様が収録された一枚目と、その前夜のライブの模様に加えてインタビューやリハーサルなどが収められた二枚目の、二枚組。25周年記念完全盤。

映像は正直イマイチですね。

ライブ撮影は、暗かったり照明の明滅が激しかったり演者の動きを追い続けなくてはならなかったりと、難しい条件がそろっているのでそもそもが厳しい、という面もあるんですけど、照明のにじみやノイズによるザラつき、カメラのパンに伴う残像感、輪郭のぼやけや色飛びが気になります。

4KリマスターされたBlu-rayがもし発売されたら、買い直すかもしれません。

ただ、音質は抜群に素晴らしいです。録音状態が良かったのか、ギリギリを攻めたミックスバランスが絶妙なのか。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観たときに抱いた印象ですが、Queenはアルバム制作において音響に並々ならぬこだわりがあったようなので、それがライブ映像作品の制作にも反映されたのかもしれません。

各パートの音がそれぞれしっかり主張しながらも、ぶつかって喧嘩していないので聞きやすく、生々しい迫力があります。

太く重い低音の上で、ピアノやギターや歌声の中高域が、ライブエナジーはち切れんばかりに生き生きと躍動しています。Freddieの歌声も、楽器隊の演奏も絶好調。伝説の名演との呼び声が高いのも納得のパフォーマンスです。

ウェンブリーを埋め尽くす大観衆を前に、この前年のLive Aidよりもやりたい放題の自由奔放なコール&レスポンスも楽しい。これぞライブの醍醐味ですね。

この『Live At Wembley Stadium』はCD版も持っているのですが、その差異としてはFreddieのソロとクレジットされている”Impromptu”という曲が引っかかりました。

ソロといってもアカペラで歌を歌っているわけではなく、裏声やシャウトで楽器隊とジャムセッションを繰り広げている異色曲です。CDではなぜか流して聴いてしまっていたのが、DVDで映像付きで観るとその特異性が際立ちます。

サービス精神旺盛に、一夜の単独公演で28曲も演ってるのもすごい。

会場の規制や周辺住民からの抗議が今ほどうるさくなかったとか、時代も関係しているのかもしれませんが。

20曲ちょいで二時間ほどにまとめておけば充分でしょ、というおざなりな興行姿勢が透けて見える今どきの人気バンドに「それでいいのか?」と問いかけたくなります。

https://youtu.be/c2_xWTSyCuU
https://youtu.be/5xXny7VDjpY

スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドNestorの三十年越しのデビューアルバムには、タイムカプセルを開けたかのような驚きが詰まっていた

スウェーデンのメロディアス・ハードロック・バンドNestorの三十年越しのデビューアルバムには、タイムカプセルを開けたかのような驚きが詰まっていた

いつからでしょう。

せっかく音楽CDを買っても、ろくにブックレットに目も通さずに、音を聴いただけでそのバンドを知ったような気分になって、あまつさえ満足するようになってしまったのは。

そんなことだから、私は明記されていた情報を見落とし、インタビューや解説を読むまでその事実を知る由もなく、今このときになって驚天動地の驚きを覚えることになりました。

まさか、1989年に結成するも当時はデビューに至らず、三十年以上が経った2021年についに念願のデビューアルバムをリリースしたNestorのヴォーカリストであるTobias Gustavssonが、かつて好きでよく聴いていたMizへの楽曲提供や、作曲兼ギタリスト担当として女性ヴォーカリストと組んだItchycooで活動していたとは。

いやぁ、びっくりしました。青天の霹靂でしたね。

うそ?マジ!?と思わずMizやItchycooのアルバムのブックレットを引っくり返して、クレジットを確認しちゃいましたからね。ここに来て、こんなふうに、好きなアルバムに繋がりが生まれるとは。感無量というか、さわやかな感心や感動の趣がありました。

小学生の頃に埋めたタイムカプセルを掘り返したら、これに近い気分に浸れるんでしょうかね。もしかしたらおイタしていて覚えもない古傷を抉られるのかもしれませんが、幸いTobias Gustavssonは名作に関わっていたので、美しい思い出が呼び起こされました。

Nestorのデビューアルバムである『Kids In A Ghost Town』がまた、80sリバイバルというか、レトロで懐かしい感じのエレクトロニカなサウンドを取り入れた、北欧っぽくもアメリカンぽさもあるキャッチーなメロディアス・ハードロックに仕上がっているものですから、喜びもひとしおです。

この三十年、ソングライターとして様々なプロジェクトに関わってきたTobias Gustavssonが中心となって曲を書いていることもあって、本作に収録されている曲はどれも素晴らしいです。構成も凝っていて、ただ良い曲が並んでいるだけでなくて、ここぞというポイントに差し込まれたイントロやFMラジオ風のSEなど、雰囲気を盛り上げる演出もニクいです。

特に、Samantha Foxをゲストに迎えたデュエット曲”Tomorrow”は出色ですね。当然そんなわけはないんですけど、知っていても(あれ?この曲、映画『ギルド・オブ・エイジズ』で使われてたっけ?)と確認したくなるほど、80年代アメリカン・ハードロックへの憧憬をモノにしています。

三十年以上溜め込んだ想いがついに結実した、その喜びがあふれる強力なアルバムです。

https://note.com/avalon_label/n/n9bcbef899031